2014年を代表するリノベーション物件を選ぶ「リノベーション・オブ・ザ・イヤー 2014」が11月2日に行われました。開催2回目となる今年は、全国に380社あるリノベーション住宅推進協議会に加盟する企業が手がけた物件の中から、グランプリ1作品、部門別最優秀作品賞4作品、特別賞8作品が受賞。バリエーションに富んだ作品が選ばれた背景を見ていくと、リノベーションの大きな可能性や魅力、社会的意義が感じられてきます。その最新傾向を探ってみましょう。
一般的に、リフォームとは老朽化した建物を新築に近い状態に修復することをいい、リノベーションとは、建物の持つ本来の性能を向上させたり、価値を高めたりすることをいいます。
今回、「リノベーション・オブ・ザ・イヤー 2014」にエントリーされた作品は、そうした性能や居心地の良さなど、建物の魅力を存分に高めただけではなく、リノベーションが社会にもたらす意義を体現しているものも多く集まったようです。
どんな点で評価を受けたのか、選考委員の講評を元に見ていきましょう。
●総合グランプリ
『HOWS Renovation Lab.』株式会社リビタ
<選考委員に評価された特徴>
築27年の戸建住宅。既存のスキップフロアを活かし、階段まわりを吹抜けに、浴室・寝室・地下室をガラス張りにして6層の空間をつなげた。
こうした出来映えに加え、セミナーやDIYワークショップ(建物の劣化部分確認や床と壁の塗装など)にユーザーが参加できる現地イベントを企画。住まいのDIYを検討するユーザー向けに情報発信した。
●最優秀作品賞〈500万円未満部門〉
『削ぎ落とす』株式会社錬
<選考委員に評価された特徴>
ブリックタイルで囲われたキッチンや大きなカウンターなど魅力的な内装。この内容を480万円でできるという、コスト面でのインパクトが大きい。
●最優秀作品賞〈800万円未満部門〉
『メルヘン』株式会社しあわせな家
<選考委員に評価された特徴>
築44年の団地を再生。団地特有の細かく区切られた構造を「色・構造・縦空間」で活用し、明るい色調のモチーフでデザイン統一。この事例が呼び水となり、小さな子どものいるファミリー層に注目されることで、”団地高齢化”の解決手法を示す可能性を示している。
●最優秀作品賞〈800万円以上部門〉
『カリフォルニアスタイルのフラットハウス』有限会社中川正人商店(ASTER)
<選考委員に評価された特徴>
築35年の木造平屋。和風建築の印象をがらっと変える仕上がりに。広さが限られるために建て替えられたり見捨てられがちな古い平屋に、新しい価値を生んでいる。
●最優秀作品賞〈無差別級〉
『築48年のオフィスビルを住宅へコンバージョン』9株式会社
<選考委員に評価された特徴>
屋内に日の差し込まない1フロア約20坪の4階建てオフィスビルを明るく開放的な住居に変更。古くて小さいビルなど、価値が低くなったと思われているものに新たな魅力を吹き込むことで、高価値物件にしていくことは、正にリノベーションの一番の醍醐味といえる。
グランプリ、部門別最優秀作品賞のほかに、特別賞7部門で8作品が受賞しています。
受賞作品をそれぞれ見ていくと、建物の仕上がりの良さだけでなく、リノベーションが社会にもたらす意義や、ユーザーの意識を変革する取り組みによって、高い評価を受けている事例が多いことも分かります。
意義が高いと感じられる今年の注目すべき特徴は、次の4点が挙げられるでしょう。
(1)情報公開・ユーザー参加型という新しい流れ
住まいづくりを検討するユーザー向けに情報を発信し、建築工程をイベント化してユーザーが参加できるようにした新しい販売スタイルが注目されました。
こうした形で”住まいを引き継ぐ”ことは、住む人の知識や、住みこなしの力を高めることに結びついています。
(2)古い「平屋」「団地」「ビル」に新たな価値を生む
マンションが多かった以前に比べて、今年は戸建てやビルのリノベーションも増え、対象が多様化しています。特に、価値が低いと世間から見られがちな古い平屋や団地、小さなオフィス・商業ビルなどは、魅力的な仕上げによって高い価値をもたらすことで、新しい住まい手を引きつける物件になります。
リノベーションが、今までは見捨てられたり解体されていたような建物を活かす再生社会の原動力となっているのです。
(3)個性的空間造形でユーザーのニーズを満たす
「こんな暮らしがしたい」「こんな理想の空間にしたい」という住む人の希望を形にするのは、リノベーションの大きな役割。そんな意味でも、今回は個性的にカスタマイズされた建物に注目が集まりました。工夫ある仕上げで、住まい手の暮らしに満足感を与えています。
(4)地方にリノベーションが広がる
以前は東京の事例が多かったのですが、今回は受賞した13作品のうち7作品が東京以外の事例でした。
リノベーションで建物に新たな価値を持たせる取り組みが地理的に広がることで、リノベーションが質的にもレベルアップして多様化する一因となっています。
今回の授賞式で印象的だったのが、「世の中から価値の低いものと考えられているものにまったく違う価値をもたらす。それがリノベーションの一番の醍醐味」という選考委員の方の言葉です。それに表されるように、古くて見捨てられがちな建物を希望の住まいに変えてしまうリノベーションの魅力が、各作品からあふれていました。
さらに、「建て替えが難しく放棄されがちな建物を活かす」「団地高齢化対策」といった社会的な課題にも、リノベーションの力が大きく役立ちそうであることを実感したコンテスト結果となりました。