マネーと制度
連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年5月29日 (水)

みずほ銀行が取り扱いを始めるという「リバースモーゲージローン」とは?

写真: iStockphoto / thinkstock\n
写真: iStockphoto / thinkstock
【今週の住活トピック】
「リバースモーゲージローン」の取り扱いを開始予定/みずほ銀行

http://www.mizuhobank.co.jp/company/release/2013/pdf/news130520_1.pdf

みずほ銀行は、持ち家を担保に老後資金を融資する「リバースモーゲージローン」の取り扱いを7月から開始すると発表した。メガバンクとしては初めて取り扱うもので、現在は一部の金融機関でしか取り扱われていない。リバースモーゲージとは何か?どういったメリット・デメリットがあるものなのか?

リバースモーゲージとは、どんなローンか?

リバースモーゲージ(Reverse mortgage)ローンとは、直訳すると逆抵当融資となる。住宅ローンとは逆の金融商品とイメージすればよいだろう。どちらも持ち家を担保にしたローンだが、リバースモーゲージは、一般的に年金のような形で融資を受け続け、死亡時に担保となっている持ち家を売却することで、一括して返済するもの。

収入や現金は少ないが、持ち家という不動産を資産として持っている高齢者は多い。老後の生活資金や住宅の改修資金などを調達しようという場合に、自宅に住み続けながら融資を受けられるという点で、大きなメリットがある。

このリバースモーゲージローンをメガバンクとして初めて、みずほ銀行が取り扱いを開始する。みずほ銀行によると、詳細は現在設計中とのことだが、土地を担保に利用者が亡くなるまで終身で融資し、利子は元本に加算するので借入期間中の返済は不要だという。まずは、東京都内の持ち家を対象に開始し、順次対象地域を拡大していく予定となっている。

リバースモーゲージの仕組みは、取り扱う機関によって内容が異なる。例えば、融資の受け取り方は、毎月や毎年、一時金としてまとめて、それらを組み合わせてなどのタイプがあり、利息を借入期間中に毎月払うもの、利息も死亡時の一括返済に含まれるために借入期間中の返済がないものなどの違いがある。

リバースモーゲージがかかえる3大リスク

リバースモーゲージには、3大リスクといわれるものがある。いずれも担保割れを引き起こす要因となっている。

●担保割れの3大リスク
(1)不動産価格の下落リスク
不動産価格が予想より下落してしまうことで、契約終了前に担保割れが生じるリスク
(2)金利上昇リスク
借入期間中に金利が予想より上昇してしまうことで、利息を含めた借入残高が増えて担保割れが生じるリスク
(3)長生きリスク
利用者が予想より長生きすることで、存命中に担保割れが生じてしまうリスク

このほかに、相続時に担保物件の売却について相続人から異議のないように、リバースモーゲージの利用には、相続人の同意が必要となるといった注意点もある。
また、担保となる持ち家は一戸建てを対象としていることがほとんど(東京スター銀行では地域限定でマンションも対象にしている)で、土地の評価額の50%~70%までが融資限度額となっているケースが多い点も押さえておきたい。

リバースモーゲージの普及には課題も多い

日本におけるリバースモーゲージは、1981年に東京都武蔵野市で導入したのが皮切りとなり、いくつかの公的機関や民間金融機関が取り扱っている。しかし、上記のようなリスクがあること、特に近年は不動産価格下落によるリスクが大きいことなどから、融資基準が厳しくなっていることなどが指摘されている。

利用者となる高齢者(60歳以上の男女)においても、リバースモーゲージの認知度は、20.9%とまだ低い。また、リバースモーゲージを「利用してみたい」割合も7.5%にとどまっている。(内閣府の「平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果」による)

日本では、住宅の建物部分の担保価値が適切に評価されていないこと、土地の価格の高い大都市圏に限定されがちなことといった、担保評価に関する課題がある。また、リスク回避のために融資額が抑えられるため、利用者にとって必ずしも使い勝手のよい商品となっていないといった課題もあり、なかなか普及していかないのが実情だ。

リバースモーゲージの認知度

【図】リバースモーゲージの認知度(出典:内閣府「平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果」より転載)

リバースモーゲージは、高齢者が持ち家を有効活用して、住み慣れた自宅で安定した老後生活をおくれることから、潜在的なニーズは高いと思われる。メガバンクであるみずほ銀行が、リバースモーゲージの取り扱いを開始することで、高齢者の認知度が高まり、それに伴って使い勝手のよいローン商品として改良が進むことを大いに期待したい。

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