高校野球の予選大会には、甲子園大会よりも番狂わせが起きやすいと言われる。たとえば沖縄県大会の2000年決勝、ノーシードの進学校・那覇が創立90年目で初めての甲子園への切符を手にするべく挑んだ相手は、名将・栽弘義監督率いる沖縄水産。
那覇は3点リードで迎えた9回裏、沖縄水産に追いつかれる。流れは一気に沖縄水産かと思われたが、那覇は延長10回表、2死ランナー1、2塁で3番・長嶺勇也のタイムリーが飛び出し、決勝点を挙げた。
この長嶺は珍しい「左投げ捕手」。入学時はレフトを守っていたが、志願して捕手に転向した。また、準決勝で故障者が続出したために、決勝はベンチ入りの14人全員が出場する総力戦。サードは途中から左投げの金城佳晃が守った。こちらも通常なら考えられないこと。また、那覇は個性的な打撃フォームの選手も多い。野球の常識に抗ったサウスポーたちと、池村英樹監督の自由な発想で掴んだ優勝だった。
※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号