一枚の特徴ある間取り図を前に、ああでもない、こうでもないと分析しつつツッコミを入れる『間取り図ナイト』なるイベントがある。年に数回、東京・大阪・名古屋・福岡など大都市を中心にツアーが開催されているが、常にチケット完売の人気だという。その主催者で『間取り図大好き!』(間取り図ナイト編・扶桑社刊)の共著がある森岡友樹氏が「ヘンな間取り」の魅力を語る。
「もともと間取り図ブームに火をつけたのは佐藤和歌子さんの『間取りの手帖』(リトルモア刊)でした。その後人気が高まり、私が管理するネットの『間取り図』コミュニティの会員も今では13万人を超えています。昨年出版した本も好評です」(森岡氏)
森岡氏はどうやって「ヘンな間取り図」を見つけ出すのか。ネット、チラシなど、不動産業者の広告から探すことになるが、漠然と眺めていてもヘンな物件は見つからない。
「間取り図を見る時はまず動線を考えるんです。平面で見るとわかりにくいので、自分が住人になったつもりで図面の上を自分で歩いてみましょう」(森岡氏)
玄関を上がり、廊下を通ってキッチンに向かう。トイレに入って便座に座り、風呂場のバスタブに浸かり、ベランダに出て外の景色を眺めてみる。
「すると明らかにヘンなところが見えてくるんです。なぜここにドアがあるのか、この部屋にどうやって入るのかといった疑問が出てきます」(森岡氏)
ネットで検索する際にはいくつかのキーワードがある。“賃料(価格)”“広さ”“古さ”、これに相場がわかっていると絞り込みやすい。
「例えば京都ならこれぐらいの相場という想定を描いて調べると、広いのに相場より安い物件が出てくる。それには何か理由があるのではないかと目を凝らすと、“アレ……!?”と引っかかってくる点が見つかるのです」(森岡氏)
分譲、賃貸に関係なく、高額物件よりも低額物件の方がヘンな間取り図が見つかりやすい。不動産業者のミスもヘンな間取り図の重要なファクターだ。
「いったい誰が書いて、広告に載るまでなぜ誰も疑問に思わなかったのか。住人がいるならこの部屋をどのように使っているのか。男のひとり暮らしなら気にならないが、彼女を部屋に招いたらどうなるのだろう……などと想像を働かせます。これだけで酒の肴として楽しめます」(森岡氏)
●森岡友樹(もりおか・ともき):全国に登録ユーザーが13万人を超える「間取り図大好き!」コミュニティ管理人。イベントを書籍化した『間取り図大好き!』(扶桑社刊)をメンバーと共著。
※週刊ポスト2014年10月24日号