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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2012年7月10日 (火)

2012年分の路線価が公表される。路線価は上がったほうがお得なの?

【今週の住活トピック】
2012年分の路線価を公表/国税庁 

http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2012/rosenka/index.htm

国税庁が2012年分(1月1日現在)の路線価を公表した。全都道府県で前年より4年連続で下落したものの、大都市圏では下げ止まり気味で底打ち感が強まっている。今年の路線価の動きとその影響について、確認していこう。

■全国的に下落が続くが、大都市圏では底打ち感が強まる

2012年分の標準宅地の路線価は、全国平均で2.8%下落し、4年連続の下落となった。しかし、その下げ幅は前年より0.3ポイント縮小している。特に大都市圏では2%未満の下落にとどまっており、東京都で▲1.2%(前年▲2.0%)、愛知県で▲0.5%(前年▲0.8%)、大阪府で▲1.7%(前年▲3.4%)と下げ止まりの兆しが見られ、底を打ったと見られている。一方で、まだ下落幅が拡大をしている県も多数見られ、地方ではまだ地価の低迷が続いていることが分かった。

地価はきわめて地域性が高い。トピックスを拾ってみると、東京都では東京スカイツリー景気に沸く墨田区の曳舟駅周辺や、大学のキャンパス移転でにぎわいが増す足立区の北千住駅周辺などで路線価の上昇が見られた。大阪府でも昨年開業した大型商業施設「あべのマーケットパーク キューズモール」周辺で上昇が見られたほか、高層ビル建設ラッシュを控えた名古屋駅周辺や全線開業した九州新幹線沿線で上昇地点が見られるなど、活気のあるエリアで路線価の上昇が目立つようになった。

また、大震災で激しい被害を受けた岩手、宮城、福島の3県などでは下落率が拡大した。特に福島県では▲6.7%(前年▲3.3%)と下落幅が大きくなっている。原発事故の警戒区域や計画的避難地域に指定されていた地域は、評価額が0で前年同様に非課税扱いとなるが、前年に設定された、被害実態に合わせて路線価を引き下げる「調整率」が適用されなかったエリアでは、前年より上昇する事態にもなった。

■路線価って何?上がるとどうなる?

さて、「路線価」が何に使われるかご存じだろうか? 路線価は、相続税や贈与税を計算するにあたって、宅地(土地)の課税価格を評価するための基準となる価額だ。宅地の価額がおおむね同一と認められる路線(道路)ごとに、毎年1月1日を基準日として、地価公示価格、売買実例価額、鑑定評価額、精通者意見価格などを参考として、それぞれの路線の価額が国税庁から公表される。今回は全国約35.8万地点の「標準宅地」を継続評価し、7月2日に公表した。

一方、国土交通省が毎年3月下旬ごろ公表するのが、土地価格の指標となる「地価公示価格」だ。これは、土地鑑定委員会が、2人以上の不動産鑑定士が行った鑑定評価に基づき、その結果を審査して必要な調整を行って評価するもの。標準地は全国で約2.6万地点しかないので、相続税や贈与税を計算するにあたっては、より広域な路線価を国税庁で評定しているわけだ。

したがって、路線価は地価公示価格と同様に、土地価格の指標となる。実際に、路線価は地価公示価格の8割程度となるように評価されている。路線価は上がったほうが、土地が高く売れて良いように思えるだろうが、相続税などの税金が増えるデメリットもある。逆に、路線価が下がっているときは、土地の取引価格にも相関性があるので、買い手にとっては買いやすく、相続税を払う人には税負担が少ないというメリットもある。特に相続税については、現政府で課税強化も検討されているので、路線価は単に上がれば良いというわけではないことを押さえておこう。

路線価を閲覧できる国税庁のホームページ
HP:http://www.rosenka.nta.go.jp/
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
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