NEXT21は大阪ガスが1993年に建設した実験集合住宅。大阪ガスの社員とその家族が実際に居住しながらさまざまな住環境や住宅設備を検証していく施設だ。築後20年を経て、新たな居住プランが誕生したというので現地をチェックしてきた。
大阪市の中心部、地下鉄谷町六丁目駅から徒歩数分のところにNEXT21はある。現地を訪れると、非常に特徴的な外観デザインと、テラスや屋上から空へそびえるように緑が延びる姿に驚かされる。思わず映画で観た天空の城を思い起こしてしまった。
1993年に誕生したNEXT21は環境共生住宅、長期優良住宅の実証モデルとして、スケルトン・インフィル(※)方式で建設された住宅だ。これまでにも外壁の移動をともなう大規模なリフォーム実験や、提案型プランの居住実験などの住まい方、自然との共生や都市コミュニティなどの観点からいくつもの実験が行われてきた。現在は第4フェーズとして、少子高齢化社会に対応した住宅の居住実験や次世代エネルギーシステムの実証実験がスタートしている。
※スケルトン・インフィル
建物の骨組みをつくる構造躯体と住戸を分離することにより、住戸の設計の自由度を確保し、長期耐久性を持つ躯体を傷つけずに住戸が改修可能
NEXT21では、設計パートナー・コンペティション「2020年の住まい」の最優秀作2プランの住戸が完成し、ちょうど見学会が開催されているところだ(11月28日まで)。このコンペは分譲マンションデベロッパーが対象とされ、リアリティ高く時代のニーズをくみ取ったプラン提案が求められたもの。今後、分譲マンションにも普及していく可能性を秘めたプランだと考えても良いだろう。早速2つのプランを見ていこう。
404号室は大京が提案した「4G HOUSE」。「祖母、母、私、娘」という4世代(Generation)、4人の女性(Girls)の暮らしを想定したことからこの名前が付けられた住まいだ。少子高齢化、離婚率の増加などで2020年には単身やふたり世帯が増え経済的基盤も弱くなることが考えられている。しかし、そのことをネガティブに捉えるのではなく、離れていた家族が再び寄り添う暮らし方や、世帯や世代の枠を超えていきいきと永く暮らしていける、未来型の住まいの姿が提案されている。
501号室は近鉄不動産が提案する「プラスワンの家」。このプランは「1つの空間をシェアする1.5世帯の新しいマンション暮らし」がコンセプト。50~60代の夫婦を中心にして、両親と娘、夫婦と老親、場合によっては賃貸人など、ともに暮らす誰か「プラスワン」を想定した集合住宅の新しいカタチが提案されている。
プランのポイントとなる「プラスワンルーム」には水まわりも設置され、集合住宅のなかの「離れ」のように住まうことができる。このプランでは「プラスワン」が誰であっても、また将来変化をしたとしても受け入れられる可変性、多様性を持つことが重要になるが、その課題をうまく解決しているのがメイン住戸とプラスワンルームを緩やかにつなぐ「土間スペース」だ。
今回の2つのプランにも大阪ガスの社員から居住者を募り、来年から約4年間にわたる実居住実験がスタートする。両住戸には高効率な燃料電池エネファームがビルトインされており、先進的なエネルギーシステムの実験も行われる。この2つの住戸では11月28日まで、事前予約制で見学会が行われているので、家を建てたい人、リフォームを考えている人、既存の間取りには飽き足りないという人は、今のうちに自分の目で確かめておくといいだろう。きっとヒントが見つかるはずだ。