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アメリカ人の音楽の聴き方に関する最新の調査結果が発表されました。

調査会社Edison ResearchとTriton Digitalが一般のアメリカ人を対象に行った調査「The Infinite Dial Report」では、現代のアメリカ社会がラジオから離れつつあることが分かりました。この調査では、音楽の聴き方のトレンドから、音楽に抱く興味深い価値観を見て取ることが出来ます。調査は2015年1、2月に12歳以上のアメリカ人2,002人を対象に行い、1998年から毎年実施している調査の2015年版です。

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まず音楽の情報収集をするチャネルについて。最も利用するのは「インターネット」と答えたのは44%、逆に「ラジオ」と答えたのは32%で、2010年の数字から減少していることがこのチャートで分かります。アメリカの公式音楽チャートBillboardでは、この1,2年で音楽配信サービスの再生回数をカウントし始めるなどオンラインの視聴を重要視する傾向が強まっています。その流れは消費者の行動からも伺えます。

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オンラインラジオの利用について次のようになりました。利用していると答えた回答者は53%で、年々その数は増加しています。

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12-24歳の若年層ではオンラインラジオの利用が最も高く、回答者の77%が利用すると答えています。若者に認知され、利用されているあたりに、デジタル音楽サービスの普及のヒントになりそうです。

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最も頻繁にオンラインラジオ視聴で利用されるデバイスは、当然かもしれませんがスマートフォン(73%)。逆にデスクトップからの利用は2015年では昨年から減少していることが見えます。

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音楽サービス利用で圧倒的だったのはネットラジオのPandoraで45%。2位のiHeartRadioの17%を大きく引き離しました。

3位はアップルの無料アプリ「iTunes Radio」で16%。4位は定額制音楽ストリーミングサービスの「Spotify」(13%)。

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最も最近(調査の前月)利用した音楽サービスについての質問でも、最も利用が高かったのは「Pandora」でした。しかし12-24歳の若年層のSpotify利用(23%)は、他の音楽サービスを越えてPandoraの次に高い数字となっています。つまり若者の間でSpotifyのユーザーが増えているということが伺えます。

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アメリカ人もYouTubeは大好き。特に若者は音楽PVを見たり音楽を聴いたりするためにYouTubeを使う傾向が特に強くあります。

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また音楽の最新情報にアンテナを貼ることに対して、過半数が「全く重要でない」(51%)と答えています。しかし12-24歳の若年層では「全く重要でない」と答えたのが40%、「非常に重要」と答えたのは27%と一般回答者(16%)よりも多くなっていることから、若者の間では音楽への関心は高いようです。

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アメリカ人がどこから音楽の情報を得るかの質問で、最も多かった回答は「友人/家族」(70%)。僅差で「ラジオ」(69%)。そしてYouTube(61%)、Pandora(51%)、Facebook(40%)とデジタルサービスが続きます。

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しかしこれが12-24歳の若年層の場合、音楽の情報探しで最も利用するのはYouTubeと83%が回答しています。全体では61%だったYouTubeが8割以上に支持される一方でラジオの利用が低下しているところに音楽情報ソースとしての価値観の変化を感じます(日本でも同じ回答かも)。

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これは面白いデータ。「音楽をスマートフォンで聴いている時、通信料は気になりますか」という質問。58%が「気にしない」と答えています。

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音楽発見アプリ「Shazam」または「SoundHound」を知っていると答えたのは、それぞれ40%と16%。

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クルマ社会のアメリカでは車内の音楽体験も重要です。ですがこれまで人気だったラジオを利用すると答えた回答者は昨年から5%減りました。またCDプレーヤーで音楽を聴くと答えた人も大きく減っています。大きく数字を伸ばしたのは「MP3プレーヤー/デジタル音楽再生デバイス」、そして「オンラインラジオ」でした。

この調査ではPandoraとYouTubeの高く認知されていることが分かりますが、Spotifyも若者を中心に認知が広がっています。さらにアメリカではラジオやCDなどの利用が減り、デジタルサービスを利用する人が増えている傾向が顕著に見られます。

もちろんこの数字でアメリカ人全ての行動が理解出来るわけではありません。あくまで参考数値として。さらに言えば、調査を行っているTriton Digitalはオンラインラジオ企業向けのソリューションを提供している会社で、クライアントにはPandoraやiHeartRadio、Spotifyなどが含まれるという関係もあります。

ソース
The Infinite Dial 2015(Edison Research)
The Infinite Dial Report(PDF)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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