住まいの雑学
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冨成 マサキ
2013年2月22日 (金)

大気汚染物質PM2.5は、どんどん家の中にも入ってきている!

大気汚染物質PM2.5って家の中に入ってくるの? (写真: iStockphoto / thinkstock)
Photo: iStockphoto / thinkstock

花粉症の季節も、もうすぐ本番。今年は花粉だけでなく中国から飛んでくる大気汚染物質PM2.5が、さらに深刻な健康被害を与えるのではないかと心配されている。このPM2.5、家の中には、いったいどれくらい入ってくるものなのか。入ってしまったPM2.5を取り除く方法はあるのか。入らないようにするにはどうしたらいいのか。前橋工科大学で建築環境工学を研究している三田村輝章准教授にお話を聞いた。

■直径が小さい物質ほど肺の奥へ届くので健康被害が心配

PM2.5は粒子の直径が2.5マイクロメートル以下の微小粒子で、成分はいろいろあるが人の健康に被害をもたらすのは石炭や石油など化石燃料の燃焼から生まれたものだといわれている。ぜん息の原因となるハウスダストの直径がおおよそ10マイクロメートル、花粉症の原因のひとつであるスギ花粉は直径20マイクロメートル以上あるから、それとくらべると、いかにPM2.5が小さいかが分かる。粒子の直径が小さいほど肺の奥までとどくので健康への影響も大きいと考えられている。

■自分の住んでいる地域の汚染状況は「そらまめ君」でチェック

あなたの住んでいるエリアの大気がPM2.5でどれくらい汚染されているかは、「そらまめ君」でチェックしよう。
独立行政法人国立環境研究所が運用するこの「そらまめ君」では、24時間自動運転している各地の大気汚染常時監視測定局のデータを速報値として見ることが可能だ。図は2月12日午後2時の九州地方のPM2.5濃度。赤い点は濃度の高い観測点を示す。
このところPM2.5が話題を呼んで、そらまめ君にはアクセスしにくくなっている。

そらまめ君

2月12日午後2時の「そらまめ君」の映像。九州地方ではPM2.5の濃度がかなり高くなっていた

■窓を閉め切っていてもPM2.5は室内にどんどん入ってきている

では空気中を漂っているPM2.5は、どのくらい家の中に入ってくるものなのか。三田村准教授に聞いてみた。

「PM2.5は花粉などの粒子とくらべて非常に小さく軽いため、空気中を長時間漂っています。ですから屋外の空気が室内に侵入すれば,そのまま汚染物質も入ってくるものと考えられます。昨年出版した『ぜん息とアトピーが治る家』(幻冬舎ルネッサンス新書・共著)に微粒子濃度の計測結果を掲載していますが,気密性に配慮していない一般的な住宅では,直径2マイクロメートル程度の粒子の濃度は,室内と屋外でそれほど大きく変わらないという結果がでています」

一般の住宅は、たとえサッシやドアを閉めきっても、自然に外気が流入する。PM2.5ほど微少な粒子になるとこうした外気の流入(自然換気)によって、そのまま室内に入ってくるのだ。大気汚染のひどいときは屋外に出ないほうがよいと思われているが、PM2.5の場合、長時間汚染が続けば室内にいても屋外にいてもさほど変わらないわけで、これはちょっとコワい。

■電子フィルター+全館空調システム+高気密住宅の組み合わせが理想

室内に入ってきてしまったPM2.5には、どう対処すればいいのか。
「理想的なのは、気密性の高い住宅で全館空調システムと組み合わせた電子フィルターを動かし、室内に入ったPM2.5粒子を除去してやることですね。電子フィルターは、半導体の製造工場などでもつかわれているもので、空気中の微小な粒子をイオン化し、電極に吸着させる仕組みです。これをつかえば1マイクロメーター以下の微粒子さえ90%以上除去することができます」(三田村氏)

とはいえ、このシステムを既存の家にすぐに設置するのは難しい。では一般家庭ではどうすればいいのか?

「いますぐ実行に移せる対策としては、空気清浄機の利用が最も望ましいのではないでしょうかポイントは、選択肢はあまり多くないが前出の電子フィルターに似た仕組みの「電子式」「電気集塵式」といった表示のある空気清浄機を選ぶことです。多くの空気清浄機は不織布でできたフィルターで粒子を濾し取る仕組みです。このタイプのフィルターでは高性能なものでもPM2.5は50%ぐらいしか除去できません。また、フィルターが目詰まりを起こして風量が低下しやすいのが難点です」(三田村氏)

まとめると、
なるべく窓は開放しない。洗濯物は外に干さない。空気清浄機のフィルターの掃除は早めに行う。また空気清浄機のフィルターの掃除や、掃除機のゴミ捨ての際は、マスクや防塵めがねをして屋外で行い、作業をしたら水でよく手を洗うことも大切とのこと。

中国の大気汚染は深刻で、しかも簡単に解消するとは思えない。PM2.5問題は、もう「対岸の火事」ではない。常に身近にあるものと考え、健康被害を少しでも少なくすることが大事だ。

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