2013年8月8日公開記事を、編集・修正して再掲載します。

多くの仕事をこなしたにも拘わらず、目の前にはまだ片付けていない仕事が山積み状態。どうすればよいか? 「深夜まで働き、週末も返上して仕事をすればよい」と考えたとしたら、それは間違っています。逆にさらに問題が生じるだけです

一番最近関わっていたスタートアップ企業では、7日間で120時間も仕事をすることがありました。しかし、今思えば、あのとき誰かに「ちょっと休め」と言ってもらいたかった。なので、今回は「この仕事をすぐに片付けなければならないんだ」と言うのが口癖になっている方々のために、私の経験から学んだことをお伝えします。

多くの仕事をこなしたにも拘わらず、目の前にはまだ片付けていない仕事が山積み状態。どうすればよいか? 「深夜まで働き、週末も返上して仕事をすればよい」と考えたとしたら、それは間違っています。逆にさらに問題が生じるだけです

一番最近関わっていたスタートアップ企業では、7日間で120時間も仕事をすることがありました。しかし、今思えば、あのとき誰かに「ちょっと休め」と言ってもらいたかった。なので、今回は「この仕事をすぐに片付けなければならないんだ」と言うのが口癖になっている方々のために、私の経験から学んだことをお伝えします。

「会社の英雄」になることの危険性

重要な締め切りの直前、プロジェクトの立ち上げ時、緊急のトラブル対応。初めての深夜残業や週末労働には、こうした理由があったことでしょう。自分がやらねばならない、という思いに突き動かされて仕事をし、目的を達成したときに得るものは「自分は会社の英雄だ」という満足感です。

しかし、自分が「会社の英雄」だと一度感じてしまうと、自分の働き方に大きな期待を抱くようになります。つまり、過去に成し遂げた仕事量を基準にして、仕事をするようになるのです。自分自身に対する期待に応えようとするあまり、頻繁に長時間の残業や週末労働をするようになります。

「会社の英雄」が増えると、子どものいるスタッフが働きづらくなる

こうした「会社の英雄」的な存在が社内に増えると、ある問題が生じるようになります。子育てなどの事情で残業ができない、週末も働けない人に対して「怠けている」「一生懸命ではない」と感じるようになるのです。

「会社の英雄」を作り上げてしまうと、子育てなどの理由で全時間を仕事に投入できないスタッフが働きにくくなります。社内政治が生まれ、スタッフの不満や意見の相違が吹き出すようになるでしょう。

残業が当然になり、燃え尽きるスタッフが出てくる

残業が日常化すると、ある仕事を達成するのに必要な日数を考える際に、当然のように残業を計画に組み込んで見積もってしまうようになります。1日あたりに成し遂げられる仕事量の見積もりが多くなり、実際にそれを実行すると、仕事量が多すぎて、チームメンバーが燃え尽きてしまうのです。

深夜にこなす仕事の質は低く、その副作用の方が大きい

深夜まで集中して仕事をしていると、なんとなく自分が深夜に「すばらしい仕事」をしていると感じてしまうことがあります。しかし、実際にはその仕事の質は低いことが多いです。

深夜まで熱中してプログラムを書き、翌朝げっそりした顔で職場に行って、メンバーと昨晩書いたプログラムを共有する。そこで発覚するのが、コードのエラーです。深夜1人での作業は、周囲に自分の仕事をチェックする人がいないため、ミスが起こりやすいのです。

私自身も経験があります。新しい機能を追加するために、深夜に数時間かけてプログラムを書いたにも関わらず、その後チームメンバーが何日もかけて、バグを修正したり、検証をするはめになりました。深夜の残業は、バグの修正やチームに与える混乱といった副作用の方が大きいのです。副作用を考えれば、残業などせずに家で読書をしたりテレビを観ていた方がずっとマシだったというわけです。

週末の仕事が慢性化する事態はおかしい

自分が「会社の英雄」だと思いながら仕事をしていると、いつか必ず、チームメンバーにも同様に週末を返上して仕事をしてほしいと期待する時がきます。「月曜の締め切りまでに間に合わせないといけないから!」などと理由をつけて。

これは非常にモラルに反している事態です。チームメンバーが対応できるレベルにも限界があることを遅かれ早かれ悟ることになるでしょう。メンバーに週末労働を課すことが多くなるような状況は、明らかに何かがおかしい状態です。このような状態が続けば、多くのメンバーが職場を去ることになるでしょう。どうしても週末の仕事が必要であれば、週末対応のスタッフを雇うなどすべきです。

緊急の呼び出しが増えるとスタッフは燃え尽きる

ソフトウェア開発者は過労によってではなく、自分の作品が世に出ないことによって燃え尽きてしまうと、よく言われます。しかし、精神面にとってさらに最悪なのは、緊急の仕事によって、予定をキャンセルしなければならない事態が連続することです。誕生日パーティーごとに、会社から緊急の呼び出しがかかるような事態です。

私自身、過去にそうした状況を経験し、私生活への妨害と緊急呼び出しの多い、長時間労働が根付いた会社文化に対する、懸念が強まりました。私生活に悪影響が出れば、あなた自身、そして会社に対しても悪影響が及ぶのです。

社員の模範となるべく、早く帰宅する

長時間労働がもたらす負の影響を断ち切るために、数カ月前に始めたことがあります。それは、5時半に会社を出ることです。「社員の模範となるべく、早く帰宅する」のです。CEO・設立者・管理職がとる行動は、会社の社内文化を形づくります。

これは効果てきめんでした。思考が明晰になり、会社の方向性についてより戦略的に考えることができるようになりました。全てを自分でこなす必要がなくなり、集中力はより高まり、生産的になりました。そして周囲のメンバーに対しては、より強い責任感を持つように言いました。家族との時間はより安定しました。社内でうまくいっていないことがあるのではないかという不安感からも解放されたのです。

本業以外のことに取り組める時間を残しておく

私は常に、何か新しいことを試したり、面白いものをいじってみたり、興味のあるものについて調べてみるといったことをしています。同じように、仕事に関係のある領域で、取り組んでみたいものがある人は多いでしょう。

本業の仕事ではなくとも、内容が興味深く、思考が刺激されるようなことは、ぜひやってみるべきです。

そうした本業以外のことをする場合には、ルールの設定が重要です。今の仕事内容の中核に近い領域のことであれば、チーム作業に影響を及ぼさない時間帯や、仕事中にやってみるのも良いでしょう。直接、仕事とは関係がないけれども、実験的な試みや仕事にプラスになりそうなことは週末に取り組んでみるのが良いかもしれません。

人ができる仕事量には限界がある

チーム全体の生産性を高めるには、悪い習慣を止めることです。負の影響を生んでいる習慣を探して、それを正す方法を見つけてください。たとえば、長時間労働の問題に気付き、それを止めることもその1つです。

また、人間らしい働き方で到達可能なレベルというのを受け入れることも大切です。「できる仕事の量はできる仕事の量だけ」というのが私のモットーです。人が一定の時間内にできることには限りがあります。私はその事実を受け入れたことで、よりリラックスできる、クリエイティブになれる、インスピレーションを多く得られる環境を築くことができました。

その結果、私と私のチームは、時間の使い方について賢くなり、個人の時間という決して無駄遣いすべきではない時間を大切にするようになりました。

追い込んで仕事をすることは大切です。しかし、現実的になってください。仕事の流れとプロセス、共同作業に基づいて社内文化を築いてください。決して「会社の英雄」に頼るのではなく。

What Gets Done is What Gets Done | Medium

Stef Lewandowski(原文/訳:佐藤 ゆき)