住まいの雑学
連載江戸の知恵に学ぶ街と暮らし
やまくみさん正方形
山本 久美子
2012年4月12日 (木)

落語「長屋の花見」に見る、今に続く桜の名所

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連載【落語に学ぶ住まいと街(1)】
落語好きの住宅ジャーナリストが、落語に出てくる江戸の暮らしを参考に、これからの住まい選びのヒントを見つけようと徒然に語る連載を始めます。

落語「長屋の花見」とは…

さて、落語の有名な噺(はなし)に「長屋の花見」がある。貧乏長屋の大家が、長屋の連中を花見に誘う。酒と肴(さかな)は用意してあると言うが、酒ならぬお茶け、カマボコと卵焼きは大根とタクアン。ちっとも盛り上がらない花見の宴会。酒柱が立って縁起がいいなどと大騒ぎ…。と毎度お馴染みの馬鹿馬鹿しい噺だ。上方(関西)にも、同様の噺「貧乏長屋」がある。ただ、こちらには大家は出てこないそうだ。長屋の連中が発案して花見に繰り出すという趣向らしい。

上野・桜ノ宮は今も桜の名所

桜の花見は、昔から行われていたもののようだが、庶民の娯楽として花見が行われるようになったのは、江戸時代といわれている。そのためか、花見をテーマにした落語は「花見の仇討」「崇徳院(すとくいん)」「花見小僧」「あたま山」などほかにもたくさんある。
さて、この長屋の連中が花見に訪れたのは、江戸では上野の山(王子の飛鳥山とする場合も多い)、上方では桜の宮といわれている。今でいえば東京の上野恩賜公園(上野公園)と大阪のJR桜ノ宮駅周辺の大川沿いにあたり、変わらずに桜の名所となっているところだ。実は、もともと江戸に桜はなかったとか。今の上野公園は江戸時代の寛永寺の敷地跡にあり、三代将軍徳川家光が吉野の桜を寛永寺に移植させたことに始まって、桜の名所にまでなったということだ。

桜の名所に近いと資産価値は高い?

落語に登場する長屋の連中は、歩いて花見に出かけている。住んでいた場所は定かでないが、いったいどのあたりにすんでいたのだろう?
ところで、ここまで有名ではないまでも、それぞれの地に桜の名所は数多くある。美しい桜並木が近所にあるとなれば、毎年この季節に気軽に花見が楽しめるわけなので、住まいとして付加価値が上がるはず。当然、住宅の価格にも多少は影響するだろう。不動産広告でもアピールしたいポイントになるので、桜並木から何メートルなどと記載されることが多い。SUUMOのキーワード検索で、「桜並木」などと入力して探してみてはいかが?

お後がよろしいようで…

参考資料
「落語で読み解く『お江戸』の事情」中込重明監修/青春出版社
「江戸散歩・東京散歩」成美堂出版
「落語ハンドブック改訂版」三省堂

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連載 江戸の知恵に学ぶ街と暮らし 落語・歌舞伎好きの住宅ジャーナリストが、江戸時代の知恵を参考に、現代の街や暮らしについて考えようという連載です。
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