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若者も増えている 移住生活
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SUUMOジャーナル 編集部
2014年11月18日 (火)

移住希望者必見! Iターンする前に心得ておきたい4つのこと

石川県穴水町での移住者インタビューを通して分かった4つのこと(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)
写真撮影:SUUMOジャーナル編集部

前回は石川県穴水町に移住した中川さんのライフスタイルと仕事について紹介をしました(https://suumo.jp/journal/2014/11/17/73547/)。今回は移住を考えている筆者(編集部K)が今回の取材を通して分かったこと・感じたことについてお伝えしたいと思います。

その1 移住の決め手はその土地の人との縁

今回筆者は中川さんを含め、数名の移住者の方にお話しを聞きました。「移住の決め手は?」と質問したところ、なんとみなさんが「ここで出会った人との縁」と答えました。

移住先を探して全国の田舎を中心にバックパッカー旅をした中川さん夫婦の場合は「毎日いろんな人と出会って、どこもよさがあって、移住先が決められませんでした。最終的に候補にあがったのは穴水の他に長崎の五島列島や北海道の洞爺湖。悩んでいるときに、穴水で出会った方が仕事やプライベート関係なくいろいろなことに誘ってくれました。そこでよくよく考えて “一番繋がっているのは穴水なんじゃないか?”と思ったこと」が決め手でした。

他のみなさんもそれぞれに同じような“縁”にまつわるエピソードがありました。

実は、穴水に行く前にお話を伺った、ふるさと回帰支援センターの相談員 宗像さんも「大事なのは現地の人との縁」とおっしゃっていて、この取材を通して移住に一番必要なのは現地の方との“縁”なんだなと確信しました。

「みんなが人口減少の危機感をもっているから、受け入れてくれやすい土地」(中川さんの妻 結花子さん)とはいうものの、「やっぱり突然やってきた“よそ者”が地域に受け入れてもらうのは難しいと思います」(中川さん)「人のサポートがないと不安で田舎で暮らせません。現地の方を通して紹介してもらうとスムーズにいくことが多い」(結花子さん)そうです。

“縁”そのものがあることもとても大事で、逆にその土地のキーパーソンとなる方との縁がないと、地域に溶け込むのが難しいという側面もあるようです。

その2 都会の生活を持ち込むのではなく“この土地だからこそできる暮らしを見つける”ことが大事

もうひとつ、印象的だったのは「田舎暮らしに都会の生活を持ち込んではいけない」ということ。

穴水町生まれ穴水町育ちの役場の男性(25)に町を案内してもらっている際に「ここは僕たちの年代の若者が飲みに行く居酒屋も少なく、遊ぶ場所もありません。そのかわり、休みの日はみんなで食材とお酒を持ち寄ってよくバーベキューをしていますね」と話していたのですが、今回の滞在で一番はっとしたのは当たり前に聞こえるこの何気ない発言でした。

“居酒屋に飲みに行く”という東京の生活を基準にすると、(失礼ですが)穴水には多くはありません。しかし“バーベキューをしてみんなで飲む”という穴水の生活を基準にしてみると、穴水湾や畑でとれる新鮮な食材はもちろん、おいしい地酒、バーベキューをする場所まで、なんでもあるんだということに気付きました。

また、中川さん夫妻も「収入はフリーランスなので会社員時代より稼いだこともありますが、基本は下がりましたね」だそうですが

「例えば、東京で60万円稼いでいて、それなりの生活をしていた人が、こっちに来たら10万円しか稼げなかったとします。それをいかに60万円にあげるのかではなくて、その10万円でここでどう素晴らしい生活をするか。理想の暮らしに当てはめるのではなくて、いかに理想をつくっていくかだと思います」(結花子さん)
「わざわざ都会に基準をあわせる必要はなくて、仕事も含め、都会の固定観念を忘れたほうがいいです。“自分たちで見つけるような暮らし”をする。それが田舎暮らしではないでしょうか」(中川さん)
とご夫婦で口をそろえておっしゃっていました。

その3 いまの生活の基準を変えるのは思っていたよりも簡単ではない

そんなお話を聞いて「なるほどな、そうだよな」と思いながらも、今の生活基準を持ち込まないというのはそう簡単なことではないと実際に現地に行ってみて感じました。

滞在中、穴水町にある移住体験施設に宿泊したのですが、一晩過ごすだけなのに“近所にコンビニがない、しかも知らない土地”。何かあったらどうしよう…と、それだけでとても不安になりました。
穴水に行く前は「いまは東京に住んでいるけど、自分もそこそこ田舎出身で、実家のまわりは畑と田んぼだし一回行ってみたらすぐにでも馴染んで移住できてしまうんじゃないか」と思っていました。完全に甘かったです。

コンビニひとつとっても、しかも一晩だけでもそうなので、完全に東京の“なんでもある生活”に慣れきってしまっている筆者は、正直いきなり田舎に移住するのは難しいかもしれないなと思ってしまいました。

ただ、穴水町に移住すると考えた場合はその気持ちはかなり変わります。今回の滞在中に運よくできた縁があるので、この縁があることによって「コンビニがなくても、あの人がいるから大丈夫かな」と思えました。やはり、縁なのですね。

その4 移住者に対してのおトクな制度は活用すべし

今回さまざまな方に取材をさせていただいた穴水町は、北陸で唯一、他の行政区からの転入者に対して「土地の無償分譲」を行っています。移住希望者にとっては希望している行政区の制度は気になるところではないでしょうか。

無償分譲を行っているのは穴水駅から車で2分、能登空港から車で15分のところにある「穴水ニュータウン」。全8区画のうち、空いているのは4区画で(11月12日現在)、敷地面積は約228㎡。対象者の条件は「夫婦共に、概ね20歳以上40歳以下」などいくつかあるのですが、大前提は「穴水町に永住することを希望している」ということです。

【画像1】穴水町ニュータウンの様子(画像提供:穴水町役場)

【画像1】穴水町ニュータウンの様子(画像提供:穴水町役場)

この制度を利用された下野淳一さん(35)、妻の佳那子さん(37)、娘さん(5)、息子さん(3)ご家族にお話を伺ったところ「増税もあって、夢だったマイホームをそろそろ建てようと思ったときにこの制度を知りました。ぜひ!と役場の方にお話しして、いろいろ調整いただいて、思い立ってから約8カ月で入居することができました」(下野さん)と、満足されている様子でした。

反対に、通常の注文住宅を建てるのと比べるとプロセスが異なるので、その部分で大変だったことも。

「“自分で買った土地に家を建てる”というのが一般的な注文住宅ですが、この制度を利用すると“まず町の所有する土地を借りて、自分の家を建てる。そのあとに土地を譲渡する”という流れになるので少し複雑です。そのため住宅ローンの審査に手間がかかりました」(佳那子さん)

とはいいつつも、役場の方がフォローをしてくれて無事にクリアすることができたようです。

【画像2】制度を利用しておトクにマイホームを購入(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】制度を利用しておトクにマイホームを購入(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

今回、記事内では紹介できなかった方も含め、たくさんのひとのお話を聞いて、東京での生活基準を持ち込まないことと、完璧をもとめない余裕、あとはここでやっていくぞ!という気持ち。そして現地のひととの縁。それがあれば、誰でも希望のライフスタイルは叶えられるんじゃないかと感じました。

最近は東京への一極集中、自治体消滅など、“都会と地方の在り方”について多くの課題があります。

少し大きな話になりますが、今後移住がもう少し注目されて、それぞれが自分のライフスタイルについて考え、都会でなくてもできる暮らしがあることに気付き、実際に移住をして、都会で得たスキルを活かしながら地域で働き、それによって地域が活性化する…といったようないいサイクルができれば、個人も地域も自然と元気になっていけるのかなと、そうなったらとてもすてきだな。ということまで考えてしまいました。

移住者の方は、「じぶんのしたい暮らしを叶える」という目的があって、その結果が「移住をすること」になったのだと思います。移住なんて考えたことがない、という方も、一度「じぶんのしたい暮らし」を思い描いてみてはいかがでしょうか。

●穴水町「穴水ニュータウン 申し込み案内」
HP:http://www.town.anamizu.ishikawa.jp/anamizu/anamizu_gyosei/kikaku/takuchimusyoubunzyou_2.jsp
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/3c791b3f9cce17f7ea0b421f63323f3f.jpg
若者も増えている 移住生活 若い世代に広がりつつある移住。理想のライフスタイルについて考えてみませんか? 各地でもさまざまな取り組みがあります。
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