世界主要都市で販売されている、価格が優に億を超える「プレミアム住宅」。NY・ロンドンの豪邸を紹介した前回(https://suumo.jp/journal/2015/03/09/79481/)に続き、今回は成長著しいアジアの都市・シンガポールと、我が国の首都・東京を紹介する。
※為替レート: 1シンガポールドル87円で計算
海外バイヤーの投資急増が要因となって、ここ数年不動産価格が高騰。そのため政府は2011年に外国人購入者を対象にした15%の追加的印紙税を導入、過熱する市場を抑制したが、それでも不動産の人気は高い。プレミアム住宅が集まるセントラル地区における100m2換算の平均分譲価格は、223万5730シンガポールドル(約1億9450万円。Property Prices in Singapore)。近年目につくのが、価格を抑えるため新築コンドミニアムの住戸の専有面積を縮小する動き。その一方、プール、屋上庭園、ジム、ラウンジなど共用施設に高い付加価値を付け、魅力を上げる開発手法が登場している。
●Twenty one Angullia Park(トゥエンティ・ワン・アングリアパーク)
物件DATA
2017年完成予定 価格:1m2当たり約4万8000~5万9000シンガポールドル(約417万円~513万円)
専有面積:約108~311m2 間取り:2~4ベッドルーム
「トゥエンティ・ワン・アングリアパーク」は、大型ショッピング施設や有名ブティックなどが並ぶシンガポール随一の大通り、オーチャードロードから一本入った「オーチャードブルーバード」沿いの好ロケーションに建つ。にぎやかな表通りとは一転、街路樹の緑に覆われた閑静な住環境だ。
36階建て、総戸数54戸。土地に限りがあるシンガポールではよく見られるタワーマンションだが、他と異なるのは直方体が集まったようなフォルム。また、建物を貫通するように設けられた2カ所のスカイガーデンも目を引く。庭園やジム、ラウンジが併設され、周囲に眺望を遮る建物がないため、住人はオーチャードロードを眺めながらのエクササイズや、リラックスしたひと時を過ごすことができる。
そしていよいよ我らが東京のプレミアム不動産のマーケットを紹介しよう。東京では、2013年から億単位のマンションが堅調な売れ行きで、人気住宅街の低層物件、タワーマンションなど種類も多様だ。活気づく不動産市場を支えるのが、アベノミクス効果の株価上昇などによって利益を得た人や、円安による国際的に割安な価格、世界トップクラスの充実したインフラと安全性、将来の価格高騰に期待する海外バイヤーのニーズだ。
今後、有明、勝どき、赤坂、虎ノ門、六本木、西新宿、目黒、田町などで再開発が進む予定で、不動産価値のさらなる上昇が見込まれる。プレミアム住宅が多い都心6区(港、渋谷、新宿、千代田、中央、文京)の平均分譲価格は1億782万円だ(不動産経済研究所調べ)。
●番町パークハウス
物件DATA
2007年完成
専有面積:55.92m2~265.79m2 間取り:1LDK~4LDK
例年、東京でトップクラスの地価を示す千代田区番町に建つ番町パークハウス。周囲は大使館、ハイグレードマンションが多く閑静な住環境だが、市ヶ谷、半蔵門、麹町、四谷と4駅7路線が徒歩圏というアクセスの良さが魅力。分譲時の平均価格は1億3000万円を超え、最高価格は約5億円だったことも話題だった。
以前は約3700m2の個人邸があった場所で既存樹を最大限に活用し、敷地の40%を庭園に充てた贅沢な設計だ。ただし、コンセプトは人の手が入っていることをあまり感じさせない自然の原風景。1階にはこの庭園を眺められる共用施設が並ぶ。特に貸し切りパーティーも楽しめる、キッチン、バー付きのダイニングサロンが人気だ。デザイン監修したインテリア・アーキテクトのアシハラヒロコ氏が外壁や共用施設、住戸内のいたるところに採用した特注のハンドメイドタイルも特徴。物件の内外に漂う穏やかな雰囲気の源になっている。
2回に分けて紹介してきた世界のプレミアム住宅。いずれも品質は当然高いが、東京の住宅は他都市に比べて、まだかなり割安なことは注目に値する(下図参照)。東京はNYの3分の2以下、ロンドンと比較すると3分の1以下となる。
グローバル都市の国際比較研究を手がけるJPモルガン証券の穴井宏和氏は、「他の3都市の不動産マーケットは海外からの投資マネーが約50%~約70%を占めるともいわれていますが、東京はまだ購入目的の約9割が実需。不動産価格は上昇傾向にありますが、バブル期ほどの急激な上昇は見られません」と話す。さらに利回りも高い。東京の4.6%に対して、ニューヨークは3.5%、ロンドンは3.3%、シンガポールは2.1%である(公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会調べ)。
東京のプレミアム住宅の不動産価格は、国際的に比較すると歴然として割安であり、なおかつ利回りも高く安定している。となれば、海外投資家が東京の不動産マーケットに関心を寄せているのも当然だろう。海外からの投資マネーの流入は、東京都心の不動産マーケットを活性化させ、住宅の資産価値の維持、向上に大きく貢献する可能性がありそうだ。
取材協力
●シンガポール
コーディネーター/葛西玲子
トゥエンティ・ワン・アングリアパーク/
China Sonangol(http://www.chinasonangol.com/)、Jerry Tan(JTResi)(http://jtresi.com.sg/?member=jerry-tan)、SDCA、Lighting Planners Associates
●東京
番町パークハウス/三菱地所コミュニティ
※本記事は『都心に住む by SUUMO』2015年4月号に掲載した記事を、SUUMOジャーナル用に再構成したものです