高級な床材や石を用いているとか、いろんな要素がたいていは絡んでいるのだが、もっと根源的なものからくる、部屋全体に漂う空気が醸し出す安定感とでも言ったらよいだろうか。
原因を探ってみると、シンメトリー(左右対称)効果がその主たる要素である場合が少なくない。窓や照明、家具も含めたレイアウトが対になっている空間では、部屋中に整然とした落ち着いた雰囲気が満ちあふれ、居る者に安心感を与えてくれる。とりわけ重要だと思うのが、部屋の形である。整形であることはもちろん、タテヨコの長さが極端に違っていたり、梁の下がり方がアンバランスでは難しい。
記事中の図面は「番町パークハウス」130Aタイプの間取り。ダイナミックな40.3畳のリビングダイニングキッチンやベッドルームは、見事なまでに整った空間。収納や空調設備の配置もできるだけ左右対称を心がけたようだ。じつはこの建物、それ自体が左右対称に設計されている。外観、平面図、そして専有部。すべてにおいて貫かれたコンセプトなのである。
もちろん、生活者の目線も十分考慮されている。例えば、シューズインクローゼットの動線は、玄関から冷蔵庫までを最短距離で結ぶ。コンロの配置は、気持ち良いほど大胆でまるで舞台のようである。ベッドルームから入るドレッシングルームや書斎も使い勝手が良さそうだ。扉も要所に引き戸を取り入れ、その軌道が人の邪魔にならないよう配慮されている。
開放的で対話しながら料理を楽しむキッチン