2015年も「うちの本棚」をよろしくお願いいたします。

 今回は、倉多江美の『ジョジョの詩』を取り上げます。ファンタジーというよりは童話といった方がしっくり来る、倉多ワールドを代表するシリーズです。

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倉田江美/ジョジョの詩

 倉多江美の最初の単行本…のはず。初出に関しては各作品最終ページに記載されているデータに拠ったが、当時「ちゃお」は「少コミ」の増刊枠で発行されていたようだ。

 シニカルで乾いた笑いが倉多江美の特徴といっていいと思うのだが、この「ジョジョとカーキー姫」のシリーズはそんな倉多江美の本領が発揮された作品だとも言えるだろう。
 小学館の「フラワーコミックス」から出された単行本には「第一巻」の表記があるものの、2巻は刊行されることなく、後にサンリオからシリーズ全作品を収録した『倉多江美傑作集/ジョジョとカーキー姫(1978年6月30日初版発行)』が刊行されている。こちらには小学館版で未収録だった『大地の林檎』『フラッパー・ボーイ』『展覧会の絵』『G線上のアリア』に描き下ろし作品『太ったカイブツ』が収められ、シリーズ全作品を読むことができる。

「ジョジョとカーキー姫」のシリーズはファンタジーというよりは童話といった方が近いような気がする。だいたい第一作で、主人公のジョジョが水や空に絵を描いてしまうのだからこれは童話でしょう。その後、SF的なアイデアやシュールなイメージが強まっていく。2作目では時空間のパラドックスを扱い、9作目では宇宙人まで登場してしまう。わかっているとニヤリとしてしまうようなアイデアやエピソードを散りばめつつ、わかっていなくても楽しく読めるというところは倉多江美の漫画家としての才能なのだろう。

 個人的に倉多江美は好きな作家の一人である。とはいえ、ビジュアル的には上手いといえる漫画家ではなかった。特に初期は。この「ジョジョとカーキー姫」のシリーズも回を重ねる毎に絵が上達していくのがわかる。漫画において絵が上手くなるというのは表現の巾が広がるということでもあるので、小さな町の話だったシリーズが、宇宙にまで広がっていったのも頷けるところだ。

『エスの解放』や『かくの如き!!』といったシリアスな作品に惹かれてファンになったのではあるが、改めて「ジョジョとカーキー姫」シリーズを読んでみて、このシリーズが倉多江美の代表作のひとつであることを確信した。というのも倉多のコメディ作品とシリアス作品のいいところをこのシリーズは内包しているように思えるからだ。
 すでに第1作が発表されてから40年が経ってしまった。若い読者には馴染のない作品になってしまっているだろうが、機会があればぜひ読んでいただきたい。けして古くさい作品ではありませんから。

初出:黄楊(つげ)の木/小学館「別冊少女コミック」昭和50年10月号、パコの家/小学館「別冊少女コミック」昭和51年2月号、ルー/小学館「別冊少女コミック」昭和51年7月号、秋の入り日/小学館「別冊少女コミック」昭和51年9月号、カーキー姫の午後/小学館「別冊少女コミック」昭和51年12月号、新青春/小学館「週刊少女コミック」昭和50年6月12日号増刊「ちゃお」、最高の一日/小学館「別冊少女コミック」昭和50年8月号増刊「ちゃお」、Fくんについて/小学館「別冊少女コミック昭和51年増刊「ちゃお」

書 名/ジョジョの詩
著者名/倉多江美
出版元/小学館
判 型/新書判
定 価/320円
シリーズ名/フラワーコミックス
初版発行日/昭和52年3月5日
収録作品/黄楊(つげ)の木、パコの家、ルー、秋の入り日、カーキー姫の午後、新青春、最高の一日、Fくんについて

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/