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井村幸治
2014年11月12日 (水)

学生のアイデアが現実となる賃貸リフォームコンペが京都で着々と進行中!

最優秀賞を受賞した池田さんのプレゼンテーション(写真撮影:井村幸治)
写真撮影:井村幸治

賃貸マンションのリフォームプランを学生たちがコンペ形式で提案、優れたアイデアは実際の賃貸物件として市場に供給されるというプロジェクトが京都で進行中だ。気になる入賞作を紹介しよう。

入賞作品が決定し、2つのプランが施工の段階へ進むことに!

京都造形芸術大学と不動産管理会社・長栄の管理部門ベルヴィとのコラボレーションによる「StamP!」(Students try apartment making PROJECT)は第8回を数える産学協同プロジェクト。環境デザイン学科の学生が、自分が住みたいと思うような部屋のリフォームプランを提案、コンペティション形式でアイデアを競うというもので、優秀作品は実際に工事が行われ賃貸マンションとして市場に供給されるのだ。

学生たちは約4カ月間かけてプランを作成、企画段階から教授の指導を受けるとともに、中間&最終と2回のプレゼンテーションを経て最優秀作品が決定される。プレゼンには不動産管理会社はもちろん、リフォームの施工を受け持つ工務店の担当者も出席し、集客面、コスト面、施工難易度、強度や安全性などの観点から議論を重ねてアイデアをブラッシュアップさせていくという流れだ。

プロジェクトでの活動は単位認定されるので、参加する学生たちも真剣そのもの。学生にとっては、プロとの議論を通じて非常に実践的な指導を受けられるというメリットがある一方、不動産管理会社にとっても、学生ならではの斬新なアイデアを得ることで、市場価値の高い賃貸物件を提供できるというメリットがあるそう。

筆者も7月の中間プレゼンと9月の最終プレゼンに参加したが、8作品の提案は上級生になるほど提案内容も濃くワクワクするようなプランが数多くあった。審査を経て10月には入賞作品が決定し、最優秀賞は池田泰宏さんの「Accent Wall Shelf」、優秀賞は松沢和幸さんの「fishing Life」が獲得。この2作品が施工へと進むことになった。

【画像1】池田さんの作品は壁面収納と照明を一体化させたクールな作品。壁面を覆う金属製オリジナル建具の試作品を交えてのプレゼンテーションとなった(写真撮影:井村幸治)

【画像1】池田さんの作品は壁面収納と照明を一体化させたクールな作品。壁面を覆う金属製オリジナル建具の試作品を交えてのプレゼンテーションとなった(写真撮影:井村幸治)

【画像2】松沢さん作品は「釣り師」にターゲットを絞りきった意欲的な提案。壁面には釣り竿収納やデコレーション用の棚を設置。模型をつくってのプレゼンテーションを行った(写真撮影:井村幸治)

【画像2】松沢さん作品は「釣り師」にターゲットを絞りきった意欲的な提案。壁面には釣り竿収納やデコレーション用の棚を設置。模型をつくってのプレゼンテーションを行った(写真撮影:井村幸治)

すでに第8回目、学生たちの提案は人気の賃貸物件に!

このプロジェクトはすでに8回目を迎えているが、これまでの作品は市場に供給されて人気も高いという。株式会社長栄 管理部マネージャーの奧野雅裕さんに、プロジェクトの背景や市場での反応を伺った。

「ご存じのように京都は学生の街ですが、新築物件の増加や賃料節約志向が強まることで賃貸マンションの入居率は下がる傾向にあります。その課題を解決する方法として、住み手でもある学生自身の優れたアイデアとのコラボレーションを考えました。
万人受けするプランでなくてもいい、10人にひとりでも住みたいと思ってくれる部屋をつくりたいと思って始めましたが、予想以上に斬新なアイデアが登場し、我々も気付きや刺激を与えてもらっています。実際に契約率も高いのでマンションオーナーさんにも理解が広がっています」と話す。

第8回のコンペでも優秀賞「Fishing Life」はそのネーミングの通り、釣り師のための部屋だ。釣り竿やリール、ルアーなどを見せながら収納できる仕掛けで、もちろん万人受けはしないが、釣り好きにはたまらない部屋になりそう。

【画像3】この春には輸入壁紙専門会社WALPAとコラボした壁紙デザインコンペや、壁紙貼りのワークショップも開催された(写真提供:長栄)

【画像3】この春には輸入壁紙専門会社WALPAとコラボした壁紙デザインコンペや、壁紙貼りのワークショップも開催された(写真提供:長栄)

【画像4】前回コンペの最優秀作も池田さんの作品「MANA BORD」。多機能コルクボードが特徴で、すでに施工が行われて社会人の女性が入居しているそうだ(写真提供:長栄)

【画像4】前回コンペの最優秀作も池田さんの作品「MANA BORD」。多機能コルクボードが特徴で、すでに施工が行われて社会人の女性が入居しているそうだ(写真提供:長栄)

予算も決まっているからシビアな提案が求められる!

このコンペではコスト計算がしっかりと行われている点も重要なポイント。家賃を通常よりも3000円程度アップさせることを前提として、4年間入居するという想定のもと3000円×48カ月=14万4000円をリフォーム予算として設定、プランはこの予算に沿って立案することがルールだ。「隣の部屋よりも少し家賃が高いけれど、絶対ここに住みたい!」と思わせるプランでないと入賞ができないということなのだ。

「StamP!」は、学生にとって自分たちが暮らしたい部屋をつくることができ、ものづくりの楽しさを味わえるチャンスでもあり、シビアなビジネスの一端を垣間見ることができる貴重な体験になることだろう。次回第9回のコンペもすでにスタートし、多くの参加希望者が集まっている。また、「カスタマイズ賃貸」の1つのスタイルとしても注目できそうだ。

次回は施工、完成披露編もレポートする予定なので、お楽しみに。

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