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大森 広司
2015年1月29日 (木)

2015年住宅市場を占う~都心マンション市場を中心に予測する

2015年住宅市場を占う~都心マンション市場を中心に予測する(写真:iStock / thinkstock)
写真:iStock / thinkstock

2015年以降の住宅市場はどのような展開になるのか。東京都心のマンションマーケットを中心に、データに基づいて予測してみよう。

東京オリンピック特需で物件価格の上昇が続きそう

不動産市場ではこのところ、物件価格が上昇気味となっている。背景には都心を中心に地価が上昇に転じていることと、建築コストの上昇がある。円安による輸入部材の価格上昇に加え、東日本大震災の復興事業や景気対策による公共事業、さらに都心ではオリンピック関連の建築需要が重なり、人手不足から人件費が高騰しているのだ。

【図1】都心6区の基準地価平均価格(住宅地)の変動率

【図1】都心6区の基準地価平均価格(住宅地)の変動率

一部にオリンピック後の市況の落ち込みを懸念する声もあるが、選手村を中心とする8km圏内に競技会場の多くが集中し、需要が強いエリアが中心となるため、インフラ整備が息の長い発展を支える基盤になりそうだ。

また都心では品川駅周辺や八重洲・日本橋エリア、湾岸エリア、渋谷駅周辺などでも大規模な開発が進んでいる。そのいずれも、完成時期は2020年より先の計画だ。2020年以降も、都心の利便性向上が続き、不動産価値が上昇していくとの見方は少なくない。

さらに今後は海外からの需要も、都心の不動産市場を下支えすると予測される。東京の不動産はアジア諸国からみても割安感があり、円安が進んだこともあってシンガポールや香港、台湾などの投資家にとって魅力が高まっている。10年、20年先を考えても、東京都心の不動産価値は高まっていくことがイメージできそうだ。

都心の物件価格はまだ割安感がある

首都圏の新築マンション市場は全般的に低迷気味となっているが、こと都心に関しては月間の契約率が好調の目安とされる7割を超えて8割前後で推移しており、売れ行きが活発な状態が続いている。

「最近の株高を受けて富裕層が購入に動いていることや、円安の影響で海外からの投資ニーズが増えていることが好調の要因でしょう。2015年も引き続き都心ではマンション需要の高まりが期待されます」と、不動産経済研究所 企画調査部の松田忠司氏は分析する。

下のグラフで都心6区のマンションの平均m2単価をみると、直近の価格はリーマンショック前より30万円ほど低くなっており、まだ割安感がある。東京23区や首都圏の平均がすでにリーマンショック前の水準を上回っているのと比べると対照的だ。

都心6区のなかでは中央区はすでに直近のピークを超えているが、港区や新宿区、渋谷区は特に割安な水準となっている。それだけ価格上昇の余地が残っていると考えられるだろう。だが、都心でもm2単価は上昇してきており、今後は上昇のペースが速まるとの見方が少なくない。

【図2】新築マンション平均m2単価の推移

【図2】新築マンション平均m2単価の推移

2015年は価格上昇が本格化する可能性も

マンション価格の上昇は、用地価格と建築コストがともに上昇していることによるものだ。前述のように地価は都心部でより大きく上昇してきており、資材や人件費の高騰で建築コストも上昇が続いている。それでも都心でマンションのm2単価が抑えられてきたのは、地価が割安な時期にデベロッパーが多くの用地を取得したためだ。

だが、そうした状況も2015年は変化せざるを得ない、と前述の松田氏は話す。
「リーマンショック後の底値で用地を取得した案件はほぼ出尽くしました。今後は地価上昇後に仕入れた物件が供給されるため、価格は従来よりも高くなるでしょう」

また、中央区では価格の上昇度合いが高いなど、エリアによっては大きな価格の動きも出ている。価格の上昇が続くと、バブルを懸念する声も聞こえそうだが、今はまだ低金利が続いているので、その心配は少ないとの見方も。逆に金利が上がりだすと住宅価格の上昇度合いが強まることも考えられるので、マンションを買うならその前までに決めるのが賢明かもしれない。

都心6区の物件供給は安定している

都心6区の供給は2013年に直近のピークとなったが、2014年は減少している。戸数の減少は消費税増税に伴う駆け込み需要の反動を受け、デベロッパーが供給を抑えている面が大きいが、職人・用地の不足や資材価格の高騰の影響もある。ただしリーマンショック直後に比べると都心6区の供給戸数は多くなっている。「都心部は人気が極端に変わらないため、2015年以降は年間6000戸前後で安定する」と松田氏は予測している。

【図3】新築マンション供給戸数の推移

【図3】新築マンション供給戸数の推移

そんななかでも中央区は湾岸エリアを中心に供給がコンスタントに続いており、2014年1~9月時点での東京23区における戸数シェアはこの10年間でもっとも高く1割強となっている。今後はオリンピック関連で交通インフラの整備が進み、選手村の住戸が市場に供給される予定となっているなど、注目されるエリアだ。

湾岸エリア以外で2015年に注目されるマンション供給の動きとしては、西新宿や目黒駅前のタワーマンションが大規模物件として挙げられる。一方、港区など内陸部では物件が出れば人気が高まる状況だが、「デベロッパーは以前ほど大規模用地を取得できていないため、供給は限られそう」(松田氏)とのことだ。

供給が豊富なエリアでは間取りや仕様の選択肢が広がるので、満足度の高い物件を買いやすくなるだろう。

※本記事は『都心に住む by SUUMO』2015年2月号に掲載した記事を、SUUMOジャーナル用に再構成したものです

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