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稲川淳二ロングインタビュー 伝説『生き人形』までをも引き寄せた映画?!『劇場版 稲川怪談 かたりべ』が公開に

2014.09.19 by

この記事は1年以上前に掲載されたものです。

IMG_7526s2014年9月20日、稲川淳二主演映画『劇場版 稲川怪談 かたりべ』(以下『かたりべ』)がついに公開となる。

本作は、稲川氏の怪談をモチーフにしたパチンコ用映像の撮影現場が舞台となっている劇場映画だ。再現ドラマの撮影中に起きた事故のために“お蔵入り”になった映像やメイキング映像を元に構築された作品となっている。

新作映画公開に先立ち、ガジェット通信による稲川氏への単独インタビューが今回実現した。撮影当時の現場の様子や、あの“伝説”と言われる怪談との不可解な関係性について語っていただいた。
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撮影中は「憑かれていた」

―映画『かたりべ』を観ると稲川さんの体調が非常に心配になりました。お体の調子は大丈夫ですか?

稲川さん:いやあ、ボロボロですね……、本当に。(映画のチラシを指して)この中に写っている自分の顔あるじゃないですか、この顔。(写真では鼻の横のところになにか出来ているのを指しつつ)こんなのこんなホクロ、無いんですよ、本当は。ほら。
パンフ

―わわ。本当ですね。

撮影中にできたんですよ。

―えー……。

どういう撮影だったか、っていうと、撮影の間、ワタシ、一日に一食しか食べなかったんですよ。食べれなくって。

夜中のいい時間に終わってホテルに帰るけれども、寝ないと次の日、早くからまた撮影が有りますからね。でももうホテルなんか食事とれる時間じゃないじゃないですか。

―確かに。

でどうなるかというと、コンビニ寄って、そこで(毎回)冷やし中華。冷えてるからほら、温める必要ないから。でもいくら冷やし中華好きでもね……(笑)。

でも、すごく楽しい、いい現場だったんですよ。あの、芝居だとか歌でもそうなんだけど、絶対にテンポってあるじゃないですか。

―はい。

いい芝居って、たとえばゆっくり演っててもやっぱりテンポがあるんですよね、トントントントントントントントントントントントン……同じテンポなんですよ。遅いのでも、早くやっても。

ところが疲れる映画って撮ってる時に解るのが、トントントンが途中でドツン、ドツン、になったりすると、「これ疲れる撮り方してるなー」とかある。だけど、(今回は)あれほど撮ってるのに、そういった疲れが無かったです。

でもやっぱ、祟られてたんだろうな、きっと。体、相当重かったですよ。終わった瞬間は楽ーになりましたもん。

―それこそ「憑き物が落ちたか」のように。

落ちた落ちた、本当に。

記憶が無い写真

―映像の中で、僕が観ていて思ったのは、終盤に向かっていけばいくほど、稲川さんの表情が、どんどんどんどんものすごい鬼気の迫り方になっていて……「アレ?人が変わってる?」っていうような感じになってまして。

あああー……。だからね、自分でよく言うんですよね、話している途中で変わる、って。自分じゃあんまり怪談喋ってても意識無いんですよね、多分きっと憑りついてるんです、多分ね。そんな感じですよね。

―稲川さん以外のモノが、何かが……。

あったかもしれないですね。たまに思うときありますもの、そんなことが(笑)。

肌にね腫れ物が出来たり、肌荒れ起こしましたもんね。それで最後の方ではこんな痩せこけてね……でね、いまここに写ってる写真……(チラシの表紙の写真を見ながら)コレ撮った時、「撮りますよ」って言われた覚えがないんですよ、コレ。
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―えええ!

多分、どっかのシーンで撮り終ってカットかかったかなんかしたときに撮ったんでしょうね。気が付いてないんですよ、正面から撮ったのに。

―うわぁぁ……。

「稲川さん、撮りますからいいですか?ハイ」っつって、そうやってる感じじゃないでしょ?カメラ向けて撮ったって感じじゃないでしょ?

次元の違う作品『かたりべ』

―確かに、ちょっとこう……虚ろな感じです。あの“教室”のシーン、観ていてヤバかったですからね……。稲川さんがおかしいくらいに鬼気迫っている。

でしょー。自分で、変でしたよ、あそこんとき。おかしかったもん(笑)。ねえ。
だからもしかすると全く今までにない何かね、味わいというか、さっきも私申し上げたけど、次元、かつて経験しない次元の映像ですよ。

今になってこうやってお話してると、もしかしたら大畑監督はすごいところを突いていたのかもしれないですね。
大畑監督の持っている世界ってのはすごい世界かもしれないですよ、もしかしたら。そんな気がしますもん、最近(笑)。

で、これ(『かたりべ』)は、初めからこれ作る予定とか無かったんですよ。ていうのは、たまたまね、パチンコ機(※)が出るんですよね、ワタシの。
※『怪談ぱちんこCR稲川淳二』

そのパチンコ機の中で(素材として)恐怖のシーンなんかを撮るじゃないですか。それを撮りに行く会社が大畑監督とか(プロデュースの)清水(崇)監督との付き合いがあるわけですよ。

怪奇現象ばかりの撮影現場

―『かたりべ』が、いろんな人を呼び寄せちゃったんですかね。変わったこととかは特にありませんでしたか。

あぁ、あの、いくつもありましたよ。ワタシ迷惑かけたくないんで「わかんないように休もうかな」と思ってね、(今回の撮影は)学校の教室使ってますから真っ暗な教室行って休んでるじゃないですか。でもすごい人の気配しているし、物音してましたもん。
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―えー……!

一回なんか、ずーっと使ってない教室だったんだけど、電気は点くんですが、点けた覚えなんかないのに、パカッパカッパカッパカッってなったりして、ねえ。
で、人がスーッって出入りするし。「あれ、呼びに来たのかな」と思って「ハイーッ!」って返事しても誰も居ないの。「稲川さん、出番ですよー」って来たのかなって思ってもそうじゃないしねえ。何度かありましたよ。

それから体育館の撮影では、中に入って「ハッ」とおもったら上の通路んところ人が立ってるから「あれ、スタッフあんなところに居んのかな」と思って。
「絶対見えるよなあ」と思って、ほかのスタッフにふっと見させたら、ホント黒い影がフューって動いてるの。
「居る居る!居る!」ってみんな騒いで、うん、ありましたよね。もちろん人、居ないんですよ。

ええ。そういうのいくつもありましたよね。だんだんだんだんだんだん……なんか憑りついたんだろうね。

引退?

―作中、稲川さんの“引退”までほのめかしている箇所がありました

あれはね、ワタシがなんかでもってふざけてね「いやー、やめちゃうかもしれないからねー」って言ったのをね。それをセリフにしてるんですよ。どうもそれ聞いてたのがね、清水監督(本作のディレクター)らしいんですよ。
まあ、やめる気は毛頭ないし、やりますけども、でもそればっかりはわからない。

なぜかってワタシ、12年前にテレビやめちゃった人間ですからね。ただ怪談があるんで、いやらしいけど夏はやってますし、呼ばれてますけど、でも、そういう人間だからわからないですよ。

ですから、“本当にやめちゃう”ってことに関しても、ハッキリ「それは違います」とも言えないんですよね。本当に自分でもってやめようと思ったら、やめてしまう“かも”しれないし。

終わったはずの伝説の怪談『生き人形』が動いた

―「意思を持った生き物のような怪談」という表現が作中にありました。僕、それ聞いて思わず『生き人形』の話を思い出したんですけれども……。

……実はね……、今年、ワタシ、生き人形の話をするんですよ。これ……ホントおかしいんだけど、映画とパチンコとワタシの(状況)がリンクしちゃって面白い状況なんだけれども。

っていうのはね、大概ツアーが始まる前に話はいつも何話か、出来てるんですよ、大体。

で、だんだんだんだんと練れてくるんだけれども、ところが始まる直前に何か出来事があったりねえ……新しい情報が有ったりして、全く別の
話が来ると、大概それがヒットするの、一番の今年の目玉になるんですよ。

そしたら今年なんですがね、人形の関係の人から電話が来たんです。連絡が来たんですよ。この人、35年前に亡くなっている前野さんという人形使いの、『生き人形』のあの前野さんの舞台をいっしょに共演している人なんですよ。

―前野さんの関連の方!

当時ですからね彼女はまだ女子大生だったのが、54歳になってましたよ。
あの人、人形やってるんですよ。ワタシは『生き人形』は生きてて、これ一体しかないと思ったら、この人のところには別の人形があったんですよ。それが見つかってて、「実は不思議なことがあったんで聞いてほしい、会ってもらえないだろうか」って。

で、会ったんですよ。これがね、気持ち悪ーい話なんですよ。
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それに付随して、妙なことがあったんですよ。ですからね、今回はその話が、その一連の話からこの話と、もうひとつ別話の、死んだ時の前野さんの話と、関係したのがあるんですよ。

―それはツアーで聞ける感じなんですか?

ええ。何しろ、その前野さんね、ツアーでも申し上げてるけど前野さん亡くなった時には不思議なことがあったんだな。なにしろテレビ局がさ取材していてですよ「本物ですから危険なんでスイマセン、中止してください」ってそりゃ、珍しいでしょ。

『生き人形』当時から『かたりべ』までの系譜

で、テレビ東京が言ってきて、日テレが事故っちゃって、フジがやっぱ事故っちゃって、てのは放送中にありえないことしちゃったもんですからね。でそれをABC朝日放送が「生の番組で!」ってのを断ったら「どうにかできないか」と。「それ一本で看板でやりたいから」っていうんで『プラスアルファ』って番組でやったらほら、パニくっちゃってすごいことになったじゃないですか。

で、そのあと、その帰りに沼津の方のところ行こうよ、って連れてってあげて。んでワタシの仲間が居て。行ったら人形がこんな顔(ものすごい形相)してて。

―「人(人形?)が変わったような表情だった」って。

みんなが、泣いて飛び出しちゃって。怖がっちゃって。(人形の)顔変わっちゃってるんで。みんな震えちゃって寝られなくなって。

その秋には前野さんがこの人形使ってやる予定の芝居が、怖くてほかの人形を使って行方不明になって半年たって。自分の記憶がなくなって。ところがその後、前野さん、亡くなったじゃないですか……。

―はい。

あの時に、不思議な事、一個、起きてるんですよ。
っていうのはね、前野さんから夜中に電話が来たんですよ。でワタシ出たらさ、前野さんで「チェコに行く」って。「えー!チェコ?」って言ったら、チェコは人形盛んなところで招待受けてるから、明日成田から発つから、お土産何がいい?って言う。

「いやー、お土産なんかいいから。で、人形どうするの?」って聞いたんですよ。

人形ってのは『生き人形』の事ですね。あの人たくさん持ってるから。ワタシが「人形」って言ったら「あの“人形”はちゃんと預けてきたから大丈夫」「ああー、じゃあ良かったね」って言って。で電話切って。

こんな夜中に電話くれるってことは、前野さん興奮して眠れないんだ、と思ったんですよ。

ところが次の日、仕事終わって夜帰ったら、うちの女房のやつが「前野さん死んだ」って言うから「何言ってんだよ。今頃、飛行機で空の上だよ」って言ったら、「もう、ニュースにも新聞にも載ってるし、テレビでもやった」って。

「え?」って。

「なんで死んだ?」って聞いたら「火事だ」って言うから「火事だって、いつだよ」って聞いたら「夜中だ」って。「おい、ちょっと!夜中(前野さんと)電話してるぞ!」って。
で出火時刻調べたら、どうやらワタシと前野さんが話してる時にはすでにもう家は炎に包まれてたんだ。ってことは、話した相手は、もうすでに死んでたんですよね。

それに付随した話なんだ、この人の話って。「人形がもう一個」。
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―うわあーー……(絶句)。

それがね、連絡があったの4月なんですよ。で、会ったのはその後なんですよ。すんごい重なってるんですよ。……不思議ですよねえ。

目撃された稲川さんが連れていたモノ

―本当ですね。『生き人形』では、「人形が居なくなっちゃった」って話もあったりとか。

実はね、つい先日なんだけれど、ワタシが関係しているね、設計している親友の店なんだけれども。焼肉の店があるんですよ。

―ええ!存じてます。

で、そこで加藤和也さん、美空ひばりさんの息子さんとお会いしたんです。そうしたら加藤さんが「実はね、稲川さん、とってもね気になることがあった」って言うんですよ。

って言うのはね、ワタシの姉って言うのはね小田急線の○○○○ってところに住んでたんですよ。亡くなっちゃいましたがね。

で、(加藤さんが)「実は小田急線でうちの女房が、稲川さんを見かけたことがあるっていうんです。お声をかけたくてしょうがなかった、って言うんですよ、ファンだから。でも、その時に、稲川さんの両脇に、着物の女性の方が居たんで『ああ、これはちょっと、お声かけちゃいけないのかな』と思った、って言うんですね。でも、なんだかうちの女房は、その人が生きてるような人に見えなかった、って言うんですよ……」

ワタシが着物の女性を連れて歩いたなんてことは、一回も無い。そんなこと。

―うわー。

で、その時に前後してこの間、北野誠さんとワタシ親しいんだけど、なんかの時に誠っちゃんが、ワタシの話したらしいんですよ。それをうちのセガレ(俳優の稲川貴洋さん)が、たまたま聞いてたらしいんですね。

「いやあ、稲川さんが○○○に来たときに見かけたんだけど、連れが居たんだけれども、……それね、どう見ても人形なんだよね」って言ったっつんですよ。

―同じ時期に別の場所で“人形”を連れた稲川さんが目撃されている。

二人が言うとさ、ちょっと信憑性があるじゃない? そこへもってきて、ワタシが言ってるこの死んだと思った“人形”――どっか行った“人形”と、もう一つ“人形”がある、っていきさつがあるし、……なんかなあ、……と思ってねえ。

すべてが呼び寄せられた作品

―何か因果なものを感じますね。

うん。おまけにこの『かたりべ』の撮影中に、ホントにね、ワタシが真っ暗な部屋に行って休もうと思ってると、ライトがチカンチカンチカンチカンしたり(ドアを)コンコンやってるんですから。

部屋でのノックは(マネージャーさんを指して)この人も知ってるんですよ。ワタシと一緒の時に「コンコンコン!」ってノックされた。

(マネージャーさんが)「え?!」って言ったから「いや、壁に当たったんだよ」ってワタシが言ったら「いや、あれ、ノックですよ」って言うの。
「えー。壁だよ!」って言ったら、ホントに「コンコンコン!」てね、ドア、ノックされて。

それで、この人自分の部屋に帰って、それでまたワタシ部屋に行ったらさ、「コンコンコン!」ってなるから「ん?」と思ってボンッってドア開けても誰も居ないの……。
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だからコレが不思議と、なんかね、だいたいこういう話(映画)が、持ち上がったこと自体がおかしいし、ハナから(企画自体)無かったんですから。ねえ。

だからパチンコから始まってコレ(『かたりべ』)があって、で、急きょ15年前に封印したその“人形”の話が。

不思議ですよね……今年はなんか……変な感じですよ。

―……いやあ……すごいですね。一度に全部動き出した感じですよね。

うん、一度に。まさかね35年前に一緒に舞台やった人で、一回も連絡してない人が突然連絡をしてきて、そしたらアレってのは珍しいんですよね。

それが4月ですからちょうどコレ(『かたりべ』)と重なる頃ですよ。だから撮影が始まったころにその人の登場があって、一連ずっとそうなんですよ。今年。

ファンの皆さんに向けて

―なんか、すごい話がたくさんで、今日は本当感無量です……
ガジェット通信とかホラー通信て、世代的にもジャンル的にも、稲川さんのファンもたくさん居るんです。最後に、そんなファンの人たちに向けて、ちょっとなにか、メッセージ戴けたらと思うのですが。

今回ね、この『かたりべ』という映画にワタシが関わらせていただいて、これ、ワタシにとってね、初めてというかな……自分でも怖いヤツは10本くらい監督してるんだけれども、『かたりべ』は全くテイストというか味わいが違って異次元世界ですよ、これ本当に。うん。

新たな次元に入り込む、そんなね、きっかけになる映画だと思いますよ。ええ、是非観に来てください。今日は本当ありがとうございます!

―ありがとうございました!

劇場版 稲川怪談 かたりべ 公式サイト
http://inagawa-kaidan.jp/

「稲川怪談かたりべ」60秒予告

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