ここでは開花促進のため、夏~秋に冷蔵処理する栽培方法を説明します。過去の栽培経験と海外の研究論文(※)などを参考に試行錯誤した、原則“自己流”です。
普通の栽培レポート(昨シーズンまで)は、こちら。↓
http://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_r_detail&target_report_id=3039
【栽培環境】
基本的には、風通しのよい日なた(秋~春)。夏は、初夏~葉が枯れるまでは半日陰。枯れたら雨のあたらない涼しい日陰。掘りあげた球根を8月中旬に植え直したあと、11月までは冷蔵庫(4℃)へ。(冷蔵庫の中では光はほぼ当たりません)
11月に冷蔵庫から出して鉢へ植え替えてから開花するまでは、昼20℃/夜10℃程度になる室内の窓辺に置いて、よく日光に当てます。
【水やり】
やや乾き気味の水やりが基本。鉢土の表面が乾いてから、たっぷり与えます。初夏に葉が枯れたら、水やりはストップします。
【肥料】
元肥として緩効性化成肥料。葉がよく茂ってきたら、規定の2倍に希釈した薄い液肥(NPK=6.5-6-19など)を水やり代わりに。
【病気と害虫】
球根の休眠中や植え付けて芽が出てすぐの気温が高い頃に、水をやりすぎたせいか株元から腐って枯れたことが過去2度あります。気温30℃を超える時期の水やりは特に注意。
休眠中や幼苗時は球根の真上を避け、鉢の周囲から少しずつ水を与えます。また、葉が黄変したり葉柄が折れるなど様子がおかしいときは、株元へ「花き用」の殺菌スプレー剤を散布すると、持ち直したことがあります。
【用土と鉢】
土は市販の「東洋蘭の土」(「山野草の土」より粒が大きく軽石が多め)をそのまま使用。関西は高温多湿で球根が腐りやすいので、水はけと通気性を重視します。ちなみに(冷蔵処理しない普通の栽培で)試しに市販の普通の「山野草の土」に植えたら、9月に芽が出たのにそのあとの30℃を超える残暑で球根が腐って枯れたことがあります。
鉢は、8月の植え付け時は、3.5号スリットポットに1球植えとします(秋まで冷蔵庫へ入れられるサイズで)。冷蔵処理後の11月からは、深さ20cm程度ある7号深型スリット鉢に植え替えます。
【主な作業】
・冷蔵処理(植え付け&植え替え)
植え付けは、前年に育てた球根の掘りあげをかねて8月に行います。粒の粗い「東洋蘭の土」(上記)を湿らせて3.5号のスリットポットに1球植えとし、ビニール袋に包んで(密封しない)、冷蔵庫へ保存します。
もやしのような芽が出てきても11月まではそのままにしておきます。時々は冷蔵庫で別途冷やしておいた水を与え、乾きすぎないようにします。
冷蔵開始から約14週後の、11月中下旬になったら冷蔵庫から出して、できるだけ根鉢を崩さないようにして7号深型スリット鉢へ植え替えます。以後は昼20℃/夜10℃前後の室内で、よく日の当たる窓辺に置いて管理します。
・葉組み
窓辺で葉が徒長ぎみになってきたら、シクラメンの葉組み作業の要領で葉柄の長い大きな葉を下へ、葉柄の短い小さい葉を上へと組んで、株の中心部まで日が当たるようにします(自己流)。シクラメンの管理同様に、やや太めの針金を輪っかにして株の中心に載せておくのも手です。
・球根の掘りあげ
初夏になって葉が枯れ始めたら水やりをストップし、鉢のまま雨の当たらない涼しい日陰に置いて保存しておきます。球根の掘りあげは、8月中旬の植え付け(&冷蔵処理)の際に行い、球根が殖えていたら1球ずつに分球します。
(※)参考文献:
Armitage, A M. Copeland L., Gross, P. and Green, M. 1996. Cold Storage and Moisture Regime Influence Flowering of Oxalis adenophylla and Ipheion uniflorum. HORT SCIENCE 31(7):1154–1155.
昨シーズンは結局咲かなかったオキザリス・アデノフィラ。高山性のオキザリスなので暑さに弱く、関西で毎年開花させるのはそう簡単ではないようです。
インターネットで海外の研究論文などを調べると、チューリップのように球根の冷蔵処理を行うことで開花を促すことができるようなので、実験してみました。
夏から秋まで冷蔵庫に入れることで夏越しが簡単になるのは良いですが、果たして本当に咲くかな…?