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大森 広司
2012年12月19日 (水)

安倍政権誕生で、これからの住宅事情はどう変わる?

安倍政権誕生で、これからの住宅事情はどう変わる?
Photo: Digital Vision / thinkstock

衆院選で自民党が圧勝し、安倍政権の誕生が確実となったが、家を買おうとしている人にとって気になるのはこの先の住宅事情だ。地価や住宅価格、はたまた住宅ローン金利は上がるのか、下がるのか。家は買いやすくなるのだろうか。

財政出動による景気回復で住宅市場も活性化する!?

自民党は新政権発足後に大型補正予算を組むことを公約としており、新政権の基本的なスタンスは積極的な財政出動による景気回復とみられている。そのため、公共事業の増強によって不動産業界が潤うと期待する見方が多い。不動産業界が活気づけば住宅供給も回復する可能性は高いし、現状で下げ止まりつつある地価が反転上昇することになれば「地価が高くならないうちに買っておこう」と住宅に対する需要が高まることも容易に想像がつく。不動産・住宅市況の活性化と景気回復との相乗効果が現れれば、さらに住宅の売買が活発になるという好循環も期待できるだろう。

気になるのが住宅税制だ。消費税については選挙前に安倍総裁が「景気動向を見て判断する」と、税率引き上げに慎重な姿勢ともとれる発言をして注目されたが、その後は「増税は決めていること」と軌道修正しており、税率アップの可能性は低くないとみられる。一方、年明けにズレ込む見通しの2013年度の税制改正大綱では、住宅ローン控除の拡大が盛り込まれるかどうかが焦点となる。国土交通省は衆院解散前の税制調査会で「2013年は最大控除額を2012年と同じ300万円に、2014年から5年間は500万円に拡大」という要望案を示したが、その後は議論が進んでいない。国交省の案が大綱に盛り込まれ、さらに消費税増税の実現性が高まれば、駆け込み需要で一時的にも住宅市場が活況を呈すことも大いにあり得る。

大胆な金融緩和によるローン金利低下は一時的か!?

では住宅ローン金利はどうか。安倍総裁は選挙前から“大胆な金融緩和”を繰り返し日銀に訴えており、自民党の選挙公約にも金融緩和により「物価目標2%」を目指すことが明記されている。次期政権による金融緩和の強化を見越して、金融マーケットではすでに長期金利の低下が進んでおり、住宅ローンの固定金利も低下基調だ。実際に金融緩和が進めばさらに金利が低下する可能性もあるが、現状ではすでに新発10年国債の利回りが0.7%台と、9年前に記録した過去最低の0.43%に近づいており、下落の余地は限られそうだ。住宅ローン変動金利の基準となる短期金利は実質ゼロ金利となっており、マイナス金利などの“超金融緩和策”でも繰り出さない限り下がる余地はほとんどない。

逆に積極的な公共事業の推進などが財政規律の緩みにつながり、国債の増発から相場が下落して金利上昇につながるのではないかとの見方も根強い。国債暴落といった極端な事態には至らなくても、選挙前から進みつつある円安・株高の勢いが増せば、債券市場から資金が移動することで長期金利が上昇に転じる可能性は十分にあるだろう。ただし金利が上昇に転じることは消費税の引き上げと同様、住宅需要の一時的な増加につながると考えられる。

こうしてみると、財政出動による景気回復も、消費増税による駆け込み需要も、あるいは金融緩和による金利低下やその逆の金利上昇も、どのシナリオでも住宅市場にとってはプラス材料になり得る。少なくとも地価や金利の大幅な上昇リスクが発生しないうちは、住宅を買うのに悪くない環境が続くと見てよさそうだ。

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