『火花』発表後、一躍次回作が待たれる作家となったピースの又吉直樹(34才)。そんな又吉の文才が評価されるきっかけともなったエッセイ集があった。又吉自身も「特に思い入れがある」と語るそのエッセイ集。
『火花』の好評価に沸くなか、そのエッセイの中で描かれたワンシーンを思い出すと語るのは、下北沢の名物書店『B&B』スタッフで書評家の木村綾子さんだ。
木村さんは、作家の太宰治が縁で又吉と親しくなった。友達となった今も「最後は必ず太宰の話になる」という。
「又吉さんが毎年開く“太宰ナイト”というイベントが初対面でした。私の著書の“ダザイはお笑い芸人だった!”という一節がきっかけで、ゲストに指名されました。私の学問としての解説に、又吉さんは芸人としての絶妙な例え話を加え、お客さんとの間をつなげるんです。又吉さんはテレビの印象と違って饒舌で、太宰への思いを伝えようと懸命でした」
『火花』には、又吉らしさが溢れているという。
「気持ちがグッと入ったシーンは“、”が少なくなるなど、一文の長さやテンポが彼の話し方に近いなと感じました。又吉さんは五大文芸誌を愛読しているので、作者として『文學界』への掲載が決まった時も、こんなに騒ぎになっていることも、ただただ怖いと言っていました。
彼のエッセイ集『第2図書係補佐』の中で、占い師に35才で何か衝撃的なことが起こると示唆される様子が書かれているのですが、今年の6月で35才。その翌月の7月に芥川賞の発表があるので、私はひそかに期待しています」
※女性セブン2015年4月23日号