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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年3月6日 (水)

マンションの「決め打ち買い」が増加中。その背景にあるのは…

写真: Wavebreak Media / thinkstock
写真: Wavebreak Media / thinkstock
【今週の住活トピック】
2012年マンション購入キーワードは「決め打ち買い」/(株)読売広告社都市生活研究所

http://www.yomiko.co.jp/news/item/?p=130219

(株) 読売広告社都市生活研究所が「マンション契約者600人調査2013」を発表した。それによると、マンション購入時の検討物件は3物件以内が過半数で、「決め打ち買い」スタイルが進んでいるという。その理由を探るとともに、検討する物件の見学ノウハウについて考えてみよう。

■検討したのは「購入物件のみ」が20.3%、「2~3物件」が35.3%

調査は、2011年4月~2012年12月に首都圏の新築マンションを契約した600人(男300・女300、30代250・40代250・50代以上100)を対象として、2013年1月にインターネットリサーチしたもの。
マンション購入時の「検討した物件数」を聞いたところ、「購入した物件のみ」が20.3%、「2~3物件」が35.3%で、合わせて55.6%が3物件以下という回答となり、検討した物件数は3年連続で減少傾向にある。この傾向は、「資料請求した物件数」や「モデルルームを見学した物件数」でも同様で、「モデルルーム見学数」は平均で3.5物件だったが、内訳を見ると「2~3物件」が36.7%と最多で、「1物件のみ」が23.2%、「4~5物件」が18.3%、「見ていない」が9.0%と続く。
これらのことから、事前に物件数を絞り込んでから具体的な購入行動へと移行する行動スタイル(決め打ち買い)が進んでいると、同社では分析している。

また、契約した物件の地縁性では、「以前から馴染みのあるエリア」が68.3%、「直前の住まいの近く」64.0%、「直前の住まいと同じ沿線」58.3%と年々高くなっている。同社は「3.11震災に端を発した、人のつながりや「絆」を重視する住まい選び、いわば地縁性の強まりもこうした『決め打ち買い』を促進している」と推察している。

●検討した物件数

●検討した物件数

凡例:2012年購入者(2013年調査)全体(N=600)
出典:(株)読売広告社都市生活研究所「マンション契約者600人調査2013」

■モデルルームは最低でも3物件見学、契約までに最低でも2回は見ておく

さて、(株)リクルートの「首都圏新築マンション契約者動向調査」でも、モデルルーム見学数を調査している。この調査でも、モデルルームの平均見学数は、2009年契約者で7.0物件、2010年契約者で6.5物件、2011年契約者で6.0物件と年々減少傾向にあり、いずれも「2~3物件」が最多となっている。「決め打ち買い」のスタイルがうかがえる結果だ。

その理由は、地縁性の強まりという側面もあるだろう。地域限定で探す場合は、自然と検討物件数が狭められるからだ。2013/3/2号の「週刊東洋経済」で、団塊ジュニアに続く新たな消費層の一つとして、「地元族」を挙げている。「地元族」とは、地元を愛し、仲間や絆を愛する新保守層のことで、博報堂若者生活研究室の原田曜平氏が名づけたという。こうした若者の地元志向の影響も確かにあるだろう。

一方で、インターネットによる情報収集の定着が強く影響していると、筆者は考える。特に新築マンションの場合は、ネット上で物件概要から周辺環境まで相当量の情報を入手できる。写真や動画付きのサイトも多くなり、モデルルームに行かなくても、複数の物件の比較検討がしやすくなっている。その結果、事前に比較検討をして、絞り込んでからモデルルームに行く「決め打ち買い」スタイルが定着してきたと推察している。

とはいえ、ネット上の情報はあくまでスペック情報だ。仕様や性能情報だけでなく、実際に現地にいった印象やモデルルームでの居心地など、五感で感じる好みもマンション購入時の重要なチェックポイントになる。また、同じスペックのようであっても、売り主の不動産会社のモノづくりの考え方で実際の住まいに差があることも多い。後悔しないためには、少なくても3物件は実際に見学してみて、そのうえで比較検討することが大切だ。

複数物件を見に行くことで、新築マンションの仕様・設備の標準レベルや相場感、不動産会社の姿勢の違いなどが分かってくるし、販売員とのコミュニケーションから基礎知識を深めたり、新たな気づきがあったりということもある。見学を重なることでスペックの優先順位が変わることも多いので、スペック情報で決め打ちしてしまうのは、効率的なようでいて、貴重な情報を見逃すリスクもあるのだ。

また、契約までにはモデルルームを2~3回程度訪問するのが一般的。モデルルームを訪れたその場で、契約してしまうというのも避けたい点だ。気に入った物件でも、細かい点で気になることがあるはず。それらをしっかり解消しておくことが大切だ。特に、自分では後から変えられない周辺環境やマンションの構造部分、管理(管理規約や長期修繕計画)などは、しっかり確認したり、詳しい説明を求めたりして、状況をきちんと把握しておきたい。

人生最大の買い物と言われるマイホームだけに、後悔することのないよう冷静で的確な選択をしてほしい。

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連載 今週の住活トピック 住宅ジャーナリストが住まいの最新ニュースを紹介&解説する連載。毎週水曜更新の「今週の住活トピック」。
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