Übungsplatz〔練習場〕

福居伸宏 Nobuhiro Fukui https://fknb291.info/

大島哲蔵『SQUAttER スクウォッター 建築×本×アート』所収

「自演されたPassion Play(受難劇)そしてResurrection(復活)─コルビュジエ議論の現況」より

 冒頭に示した近著(1980年代に成った)の段階にいたると,コッターが共著から外れたせいでもないだろうが,もはや都市のロールシャッハ・ゲームは背景に退き,より幅広い「思想の語源学」のなかに近代建築批判を位置づけようと試みている.しかしモダニズムを「千年王国」の約定(Architecture of God! Intentions)と見なす論調は,基本的に変わっていないために,結局その批判が行きつく先は予定調和に陥っている.その枠組みを外すために導入されたはずの最後の2章──“mechanism”と“organism”──も,とどのつまりドイツ精神 vs.フランスのエスプリというおなじみの二項対立に収束し,[略]
 その一方でコルビュジエの空間を論じる際の,ロウの唖然とするような着眼点は影を潜め,事あるごとに持ち出されるコルブの言説も,その「宗派性」が指弾され,あっさりと斥けられる.基本的に状況を有利に運ぶための「媚びを含んだ啖呵」と捉えられるコルブの言動を,思想のプロ(マンハイムやポッパーなど,必ずしも一流のとは言いかねるが)の残したフレーズをダミーにして揺さぶりをかけるロウの評言は,裏返った愛着──軽いサド趣味──を感じさせるが,コルブの思想はもとより言語列よりも空間列のなかに存する.政治性にまみれて活動したコルブと,超然として孤塁を守ったロウは対称的だが,ペンネームが本名にすり変わった人物──エクリチュールのひとり歩きを予言している──が本音を吐露する一幕があるとすれば,言説の迷宮をすり抜け,体制と表現の弁証法に肉薄する追手が現れた時ぐらいか.


モダニズムの攻撃誘発性(ヴァルネラビリティ

 こうした一連のロウの仕事がいかなる結果をもたらしたかは,現役の都市コンサルタントアメリカ都市問題のオピニオン・リーダー,ジョナサン・バーネットを参照することで判明する.彼は最近の著書『破断した都市』(The Factured Metropolis, IconEditions 1995)で以下のように語る。

 ル・コルビュジエやウォルター・グロピウスのような近代建築の創始者らは,都市は新しいイメージによって完遂されるはずだと臆断した.つまり彼らにとって過去は単にセンチメンタルな価値を持っているにすぎなかった.彼らはまた社会的な共同生活は個人的関心よりもはるかに重要だと考えた.この考えは正しくないことが証明された.アルド・ロッシは『都市の建築』のなかで,都市は多くの異なる関心から派生する希求を反映するという刷新された理解を雄弁に記述し,そこで都市は過去の別の都市での体験や中断した都市デザインでさえもがそれぞれの役割を演じるような,一連の個人的な記憶を通して認識されると論じた.
 同時に都市をデザインすることは,絵画や彫刻を制作することではなく,個別の意志や私的な感覚の表現でもない.コーリン・ロウとフレッド・コッターは『コラージュ・シティ』で,デザイナーは既存の都市で,すでにそこにあるものに付け加えたり調整することによって,どんな芸術形式よりもコラージュの手法に似たプロセスで,調整作業を展開すべきだと論じた.

http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN4-7615-2318-2.htm
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http://www.bk1.jp/product/02337868


◇ 海外出版書評|大島哲蔵 - 10+1 web site:Archives
http://tenplusone.inax.co.jp/archives/cat_02022kaigaio.html


◇ 『10+1 No.29 特集=新・東京の地誌学 都市を発見するために』(INAX出版

大島哲蔵追悼
 「工作者」の影 大島哲蔵論にかえて   福田晴虔
 斜視の虎 ダッカの議会堂   大島哲蔵
 タイポロジー アルド・ロッシからドナルド・ジャッドまで   大島哲蔵
 コーディネーター/スクウォッター大島哲蔵   宮島照久

http://www.inax.co.jp/publish/book/detail/d_111.html
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◇ ドナルド・ジャッド 建築 - MILBOOKS -online book seller
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◇ 建築文化 2000年10月号「特集:建築と美術」 - 建築文化シナジー
http://www.kenchikubunka.com/synergy/my_view.php?id=13


◇ 建築文化 /no.648 - JDN
http://www.japandesign.ne.jp/HTM/MAGAZINE/K-BUNKA/648/


>>>曲げられた空間における精神分析│今村創平 - 10+1 web site
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20070925#p6


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『SQUAttER スクウォッター 建築×本×アート』の本文は脱字でしょうか。
「The Factured Metropolis」ではなく、正しくは「The Fractured Metropolis」のようです。

Bluetoothで追跡

Bluetoothで山手線の乗降パターンを追跡してみた , ユビキタス社会の歩き方(6) Bluetoothの「デバイスの公開」「検出可能にする」はオフに - 高木浩光@自宅の日記
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20090301.html#p01


首都高速都心環状線Bluetooth追跡できるか + 続・山手線 - 高木浩光@自宅の日記
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