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「実家」どうしますか?
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佐藤 由紀子
2015年4月7日 (火)

“実家どうする?” リノベーション活用で実家問題を先取り解決!

実家をどうする?リノベーションを使って実家問題を先取り解決!(画像提供/株式会社エコラ)

2014年の「リノベーション・DIYに関する意識調査」によると、リノベーションの認知度は95.0%、関心度は47.6%とここ数年急上昇している(※)。そんな中、関心度の伸び率全国一の仙台市で、リノベーションを活用して“実家どうする?”問題を解決した事例があるので紹介しよう。※(株)リクルート住まいカンパニー調べ

一戸建ての実家を売却。「中古マンション+リノベーション」で便利な街ナカライフを実現

Sさん夫妻(60代)は仙台市郊外に30年以上前に建てた家を売却して、都心の中古マンションを買ってリノベーションした。「子育て時代は住みやすかった家や環境も、子どもたち世代が巣立ち、買い物施設が減り不便になりました。また、年を重ねると雪かきや庭の手入れが大変になる」というのがきっかけだ。

物件を選ぶ際は立地にこだわり、ケヤキ並木が続く仙台市のメインストリート沿い、大型公園やデパートが徒歩圏内にあり、兄弟や友人らも気軽に立ち寄れる、得がたい立地で新耐震基準施行後の物件を見つけた。そして、デザイナーの長男の提案や設計を信頼して、親子共同で新たな家づくりに取り組んだ。

「年を重ねた両親が、真新しい住まいに移ってガラリと生活が変わるのは大変です。間取りや家具、素材など、両親に合ったものをつくることができるのは、リノベーションならではだと思います」と長男は話す。

●主なリノベーションの内容(リノベーション費用は約600万円)
・床を厚い無垢材に張り変え、床暖房を導入
・システムキッチンを取り払い、キッチンと背面カウンター(収納兼用)をオーダーメイド
・南面にあった和室をなくしてリビング・ダイニングを広げ、3LDKを2LDKに
・リビング・ダイニングの南側の床の一部をグリーン置き場、サンルーム的空間としてコンクリートタイル敷きに
・和室をリビングに(長男夫婦が帰ったときの寝室用にブラインドで仕切れる)。押入れはクローゼットとミニ神棚に変更
・洋室はカーペットを外し、躯体をむき出し状態に。壁は画鋲などが刺せるようウッドチップボードに
・内装は壁・天井のクロスを張り替え、リビングドアを変更しトータルコーディネート
・ユニットバスを新しくした

【画像1】南向きの角住戸。日当たりのよい南面スパンいっぱいの開放的なリビング・ダイニングが実現した(画像提供:エコラ)

【画像1】南向きの角住戸。日当たりのよい南面スパンいっぱいの開放的なリビング・ダイニングが実現した(画像提供:エコラ)

【画像2】以前の家と同じ高さで造作したキッチン。圧迫感がある吊り収納はやめて、収納や作業に便利なカウンターを設けた(画像提供:エコラ)

【画像2】以前の家と同じ高さで造作したキッチン。圧迫感がある吊り収納はやめて、収納や作業に便利なカウンターを設けた(画像提供:エコラ)

【画像3】洋室を長男の書斎に。機能性を重視しつつ、最小限の工事でラフな雰囲気を演出(画像提供:エコラ)

【画像3】洋室を長男の書斎に。機能性を重視しつつ、最小限の工事でラフな雰囲気を演出(画像提供:エコラ)

一戸建てからマンションへの住み替えでは、収納スペースが多くても物の整理が必要になる。「捨てるのは淋しかったが、いらない物を整理するきっかけになりました」と話すご夫妻。新築マンションの購入費より安く、自分たちの暮らしや好みに合う、新築と見違えるような住まいを手に入れたご夫妻は、新鮮な気持ちで街ナカのマンションライフを満喫し、長男は「いつでも家に帰れる」と安心している。

広い実家を二世帯住宅にリノベーション。長男家族との同居を開始

仙台でのリノベーション事業に力を入れているエコラが手掛けた、実家を活用した例をもうひとつ紹介しよう。名取市のSさん家族(30代夫婦と子ども2人)は新築住宅を検討していたが、6LDK+S(納戸)の広い実家が近くにあり「いつか実家に戻るなら、この機会に同居しよう」と決めた。実家は古いが基礎がしっかりしていたので、リノベーションで上下階分離型の二世帯住宅につくり変えた。

●主なリノベーションの内容(リノベーション費用は約1000万円)
・1階/三世代が一緒にくつろげるようリビングの一部を増築し、畳コーナーを設置。2間続きの和室は親世帯の居室としてそのまま活用
・内装/床とクロスを張り替え、建具を入れ替え
・水まわり/壁付けキッチンを対面キッチンに、在来工法のお風呂をユニットバスに。2階にあったS(納戸)をユーティリティー(洗面所と洗濯機置き場)に変更
・2階/子世帯の居住スペース。スケルトン状態にし、洋室1室をリビングに、洋室2室を洋室3室(夫婦用の主寝室と子ども2人の部屋)と収納スペースに変更

【画像4】二世帯でくつろぐ1階のリビングと畳コーナーは窓が多く、明るい印象(画像提供:エコラ)

【画像4】二世帯でくつろぐ1階のリビングと畳コーナーは窓が多く、明るい印象(画像提供:エコラ)

【画像5】外壁を塗り直して屋根瓦を葺き替えた外観は、新築住宅と変わらないたたずまい(画像提供:エコラ)

【画像5】外壁を塗り直して屋根瓦を葺き替えた外観は、新築住宅と変わらないたたずまい(画像提供:エコラ)

仙台市でリノベ人気が急上昇したのは、新築市場の高騰と認知度の高まり

近年、仙台市でリノベーションへの関心や事例が急激に増えた理由はなぜか今回の2事例を手がけたエコラの岩本忠健課長に話を聞いた。

【画像6】エコラの建築・不動産事業部課長で、一般社団法人リノベーション住宅推進協議会東北部会事務局長の岩本忠健さん(画像提供:エコラ)

【画像6】エコラの建築・不動産事業部課長で、一般社団法人リノベーション住宅推進協議会東北部会事務局長の岩本忠健さん(画像提供:エコラ)

「2014年は新築マンションの供給数が例年の半分位に減り、しかも2013年の平均坪単価154万円が、2014年には170万円と高騰しました。都市部のいい立地に新築物件が分譲されても、価格が高く一部の人以外は手が届きにくくなりました。2014年は東日本大震災があった2011年同様、新築の供給戸数より中古物件の取引件数が多い、逆転現象が起きました。土地も少なく、建売住宅も希望する場所にはなかなか出ません。2015年もその傾向は続くと思います」

「そんな仙台市の状況もあって、中古に目を向け始める人が増加したのでは」と岩本さんは分析。「同時に、テレビや雑誌などでリノベーションという言葉に触れる機会も増えました。この1,2年、仙台市には中古マンションを買い取り、リノベーションを行い再販する会社が急激に増えて、リノベーションを積極的にPRしていますし、賃貸リノベ物件やカスタマイズ型賃貸物件も増えています」

イベントでの露出も増えた。一般社団法人リノベーション住宅推進協議会東北部会では、2012年に初めてリノベーションエキスポを開催し、2013年には大きな会場で開催した。2014年には「リノベーション体感フェア」を2回開催したが、1回目に比べて2回目は来場者数が倍以上になり、認知度が高まったことが分かる。

リノベーションで自分らしい住まいづくりを実現する

「市場の問題と認知がうまくからみあい、今や、新築が買えないというネガティブな思考ではなく、中古という選択肢があり、リノベーションで自分らしい住まいを実現するという可能性を感じているようです。リノベーションには自分が箱を決めてつくりかえることができ、自分の暮らしに合わせて部屋づくりができるというメリットがあります」。岩本さんの説明にあった「古着を買ってリメイクを楽しむのと同じ感覚」というのも、非常に分かりやすい。

震災を機に、いざというときに家族が心配だから近くにいたい、家を建てるにも土地がないという理由で、親と同居する人が増えているように思う。そこで、実家のリノベーションが検討されるようになったのではないか。また、震災を経験して、「新しさ」より本当に大切なものが見えてきたことも要因の一つではないかと筆者は考える。

いつかは両親が高齢になり、実家問題に直面する時がくる。先々のために、親が元気なうちに、実家をどうするか考えておきたい。空き家にしておくことは、メンテナンスや防犯上の問題、税負担も見逃せない。売る、貸す、解体するという選択肢もあるが、売却したお金をもとに市街地に中古住宅を購入したり、実家を二世帯住宅や減築して平屋にするなど、リノベーションを活用するのは、親、家、家族、そして地球環境にとってもやさしくハッピーな方法ではないかと思う。

●株式会社エコラ
HP:http://www.ecola.co.jp/
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/0101021cb4cb2fdfd9faeb094defd645.jpg
「実家」どうしますか? 最近よく聞くようになった「実家」というキーワード。親が元気なうちに一度話し合ってみませんか?
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