犬のトレーニングといえば、教えたい行動をとったときにフードを提供するのが定番だが、毎回与え続けるより、途中からランダムに与えたほうが行動が定着するという。Can! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導する西川文二氏が、犬のトレーニングで有効と言われるランダムにいいことを起こす方法と、ギャンブルとの共通性について解説する。
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この夏休み、海外旅行に出かける方も少なくないんでしょうな。中にはカジノなんかいって、ギャンブルに興じようなんてご貴兄もおられるかも。
最初は当たって当たって、そのうち当たらなくなって、気がついたら、やめられなくなっちゃって……なんて話はよくある。百億円以上をつぎ込んだ、どこぞの御曹司なんてのが世を賑わわせたこともある。
結果的にいいことが起きた行動の頻度を、動物は高め、定着させてく。さて、いいことは毎回起きる方がいいのか、それとも時々の方が効果的なのか。もちろん、こうしたことも研究されてる。
頻度を高めたい行動に対して毎回いいことを起こす、これ連続強化スケジュールっていう。強化とは行動の頻度が高まること。で、時々いいことを起こす方法もある。こちらは部分強化スケジュール。
動物実験などをもとにわかってるのは、連続強化スケジュールから、ランダムにいいことを起こすっちゅう部分強化スケジュールへ移行させていく流れ。このパターンが、行動を定着させていくのに、いちばん効率的ってこと。
ギャンブルにはめられちゃう、はまっちゃう人の多くは、意図的であれ、偶然であれ、このパターンにやられてる。
犬のトレーニングは、ギャンブルとは違うけどね、教えたい行動を効率よく定着させたいのなら、理屈は同じ。最初は、いいこと、すなわちフードを毎回提供する。その行動を犬がそこそことるようになってきたら、言葉でほめ、フードは時々あげるように変えてく。
するとですね、教えたい行動を効率よく定着させられるんですね。なるほどね、ってうなずかれたご貴兄、もしカジノに出かけてゲーム開始早々連続して勝てたら……喜んでばかりもいられないかも、ってことですよ。
※週刊ポスト2014年8月8日号