夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回は寄せられたのは、ご主人(65歳)が精密機器メーカーOBの奥様(61歳)。ご主人は何事もネガティブに考える性格のようです。
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息子が高校生の頃、よくこんな説教をしていました。
「いいか? いつもプラス思考で喋るんだ。そうすると夢が叶う。口(しゃべる)に+(プラス)と書いて、叶うという字になるだろ? 逆に、叶うことなのにマイナス思考だと叶に-(マイナス)で吐く。愚痴を吐く人間になってしまうんだ」
でも実はそういう主人自身が「超」が付くほどのマイナス思考。そんな性格は60歳を過ぎても直らなくて、息子夫婦が送ってくる敬老の日のプレゼントにまでケチをつけます。
時計を送ってきた時は「時間を気にしろってことか。前にオレが待ち合わせに遅れたのを、息子たちは根に持ってるんだな」。低反発枕の時は「そういえば、子供の頃からオレに反発してたもんなぁ」で、旅行にも持って行けるようにパジャマ・スリッパ・歯磨きセットが送られてくると、「オレに入院しろってことか」。
花が送られてくると「いよいよ棺桶に入ってくれって意味だな」。私が「菊じゃなくてバラよ」というと、「イエロードットのバラの花言葉は“君を忘れない”。オレはもう故人扱いなんだよ」。
息子に「パパがネガティブにならないプレゼントにして欲しいの」と電話すると「気分転換になる盆栽はどうかな?」「いいわね」。ところが主人は送られてきた盆栽を見て「オレが凡人で才能がないから盆栽を送ってきたんだな」。才能? あるわよ! 何にでもネガティブになれる才能が!
※週刊ポスト2014年10月3日号