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島田 美那子
2016年2月9日 (火)

“新築の賃貸”なのに「DIY」ができる!住み心地は?

“新築の賃貸”“なのに「DIY」ができる!住み心地は?
画像提供/大阪市住まい公社
壁に釘をうったりペンキを塗ったりしたいが、賃貸住まいの場合は原状回復義務があるという理由で、なかなかチャレンジできずにいる人も少なくありません。原状回復義務を有さず「改装可能」な賃貸物件は、今のところ築古のものが一般的。そんななか、新築なのに改装(DIY)が可能な壁をもつ住戸が、大阪市西区に誕生しました。

賃貸でもDIYを取り入れることで、暮らしに愛着を持てる

DIY可能な住戸プランがある新築賃貸「S_noie(エスノイエ)」を手掛けた大阪市住まい公社の企画部企画事業課、川幡さんと谷岡さんにお話を伺いました。

―――新築賃貸なのにDIYができるというのは非常に珍しい物件ですね

公社の賃貸にはリノベーション物件もあり、「所有にはこだわらないけれど、住空間を自分好みに仕立てたい」というカスタマーが増えているように感じていました。そこで、リノベーション物件だけでなく、新築でも壁に釘をうったりペンキを塗ったり自由にできるプランをつくろうということになり、「S_noie」では「カスタマイズできる壁(カスタマイズウォール)」をもつプランを用意しました。

また、コンセプト・デザインは、多くのリノベーション物件にたずさわり、「東京R不動産」を主宰するOpenAに依頼しました。カスタマイズウォール以外に、アイランドキッチンの採用、教室やサロンを開きやすい間取りなど、多様な住まい方に応じた工夫をしています。これらの工夫は賃貸住宅でも自分らしい暮らしを実現してほしいという想いからです。

【画像1】カスタマイズウォールをもつタイプの間取り。玄関付近にあるこの壁が好きにDIYできるゾーン。いずれのタイプも土間が特徴的。左:約35㎡、月額家賃6万7200円~ 右:約55㎡、月額家賃9万3200円~(画像提供/大阪市住まい公社)

【画像1】カスタマイズウォールをもつタイプの間取り。玄関付近にあるこの壁が好きにDIYできるゾーン。いずれのタイプも土間が特徴的。左:約35m2、月額家賃6万7200円~ 右:約55m2、月額家賃9万3200円~(画像提供/大阪市住まい公社)

―――2つのプランは「土間」と「カスタマイズウォール」が特徴的ですね

カスタマイズウォールのDIYについては原状回復義務がないので、棚を設置したり、壁をペイントしたりしても原状に復する費用が発生しないため、退去時のことをあれこれ気にせずに、カスタマイズを楽しんでください。また、玄関土間は広さがあり、仕上げは掃除もしやすい土間風のビニルシートを使用し、コンセントもあるので、DIYの作業スペースとしても最適です。

カスタマイズウォールと土間がある玄関の雰囲気は、一見男性的な印象ですが、ペイントをしたり、ラグを敷いたり、アレンジは無限大なので、可愛らしい雰囲気にすることもできるんですよ。

【画像2】自転車移動が便利な立地の同物件。趣味の自転車をディスプレイする場所として玄関スペースを活用することもできる(画像提供/大阪市住まい公社)

【画像2】自転車移動が便利な立地の同物件。趣味の自転車をディスプレイする場所として玄関スペースを活用することもできる(画像提供/大阪市住まい公社)

―――DIYをしたことがない人でも、素敵にカスタマイズすることはできるものですか?

「自分のものではない」という気楽さがある賃貸だからこそ、初心者の方も気軽にDIYを楽しんでもらえると思います。「DIY」というと高度なスキルが必要、材料調達も大変というイメージがあり身構えてしまうかもしれませんが、今は使いやすい工具もあり材料調達もネットで簡単にできますので、気軽にトライしてほしいです。また、公社ではDIY未経験の方も取り組みやすいように、定期的にワークショップを開催していく予定です。賃貸の場合、コミュニティが希薄になりがちですが、ワークショップが、住人同士緩やかにつながるきっかけになるといいですね。

【画像3】Aタイプの一室をカスタマイズするワークショップには9名が参加。カスタマイズウォールの塗装や足場板の貼り付け、シェルフの組立から100均雑貨を使ったプチDIYと盛りだくさんの内容(画像提供/大阪市住まい公社)

【画像3】Aタイプの一室をカスタマイズするワークショップには9名が参加。カスタマイズウォールの塗装や足場板の貼り付け、シェルフの組立から100均雑貨を使ったプチDIYと盛りだくさんの内容(画像提供/大阪市住まい公社)

【画像4】ワークショップで完成したモデルルーム。土間スペースをシェルフで区切り、プライベートな空間を創出。白地に木目調の壁の雰囲気が温もりを感じさせる、女性らしいテイストの部屋に(画像提供/大阪市住まい公社)

【画像4】ワークショップで完成したモデルルーム。土間スペースをシェルフで区切り、プライベートな空間を創出。白地に木目調の壁の雰囲気が温もりを感じさせる、女性らしいテイストの部屋に(画像提供/大阪市住まい公社)

夫妻の希望を両方叶える理想の物件で新婚生活をスタート

「S_noie」は2015年10月から入居がスタートしているということで、すでにお住まいのMさん(30代夫妻・夫)にも、物件の魅力を伺いました。

―――「S_noie」を選んだ決め手は、どんな点ですか

結婚のタイミングで新居となる賃貸物件を探していました。「S_noie」はインターネットで「DIY」というキーワードで賃貸物件を検索していたときに、R不動産のサイトからたどり着いたんです。私自身DIYの経験はないものの、新居を自分の手でカスタマイズできたらいいなと思っていたのですが、妻の絶対に譲れない条件は「新築」。「新築」と「DIY」という相容れない条件が叶う物件が、偶然見つかったときは、「まさに自分たちのための物件だ!」と思いました(笑)。

―――土間がバルコニーまで続く個性的な間取りですが、住み心地はどうですか

土間といっても、玄関マットを敷いて玄関スペースと生活スペースは区切り、靴を脱いで生活しているので、違和感はありません。フローリングのような感覚ですね。玄関スペースにはカスタマイズウォールがあるので、靴が好きな妻のために、シュークローゼットをつくって設置してみたいなと思っています。

【画像5】土間に直接ダイニングテーブルをおいて、リビングダイニングとして使用。居室部分は引き戸になっているので、空間を広く使うこともできる(撮影/島田美那子)

【画像5】土間に直接ダイニングテーブルをおいて、リビングダイニングとして使用。居室部分は引き戸になっているので、空間を広く使うこともできる(撮影/島田美那子)

―――今後ほかに、どのようにカスタマイズしていく予定ですか

キッチン周りの収納がまだ整っていないので、電子レンジを置く棚をつくったり、収納の工夫をしたりしていきたいと思っています。また、キッチン横にもDIY可能なスペースがあるのですが、ここはお酒を楽しめるスペースにカスタマイズしていきたいですね。お酒が大好きで、自分で料理もするので、今はワインセラーを置いているだけですが、ゆくゆくは友人を呼んで、テーブルをはさんでちょっと飲むこともできるような居酒屋スペースにできたらいいですね。

【画像6】現在ワインセラーが置いてある、玄関とキッチンの間のスペースは今後DIYでカスタマイズ予定。プチ居酒屋スペースとして、友人たちのキープボトルが並ぶ日も近いかも(撮影/島田美那子)

【画像6】現在ワインセラーが置いてある、玄関とキッチンの間のスペースは今後DIYでカスタマイズ予定。プチ居酒屋スペースとして、友人たちのキープボトルが並ぶ日も近いかも(撮影/島田美那子)

「既製のものではなく、自分で色を塗ったり、つくったりしたもののほうが味があっていいじゃないですか」というMさんの言葉が印象的でした。

新築のきれいなマンションで、気軽にDIYに挑戦できる「S_noie」は、最新の機能性も、自分らしさも諦めない、そんな欲張りなカスタマーニーズに応える、住まいの新しいかたちかもしれません。

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