名字研究の第一人者・森岡浩氏と考える日本人の名字。漢字1文字の場合は、「東」「西」「南」がいずれも全国順位200位前後。しかし「北」だけは順位も800位以下に下がる。
「これは本家から分家した際に、どちら側に新居を構えたかという名字。つまり“東の分家”が、やがて『東』になった。日当たりの悪い、本家の北側に家を構えることは少なかったのです」(森岡氏)
また東西南北のような方位由来の名字は一文字よりも、何か別の文字、特に地形や地名を組み合わせたものが多い(西山、北村など)。こちらは「西」で始まるものが最も多く、ついで「北」。「東」と「南」は少ないが、これにも理由がある。
「戦国以前の領主たちは防衛上、平野の真ん中ではなく一方向しか開いていない谷間に好んで居を構えました。しかも稲作に適した日当たりのよい、東側か南側が開いた谷を選んだ。領主がそこに住むので、結果、領民たちは谷間の奥側である、西側か北側に住むことになるのです」(同前)
※週刊ポスト2014年1月17日号