実際に管理組合の理事は、どんな心構え・思いで理事会運営に当たっているのだろうか。前編で説明したように、イニシア千住曙町では理事は2年間の任期で、毎年半数が改選される。2年目の任期を終えた理事の方に話しを聞いた。
YKさん(65歳)は、副理事長として防災・防犯委員会の委員長を務めた。第7期には約半年をかけて全58ページに及ぶ管理組合独自の「防災マニュアル」を作成したという。マンションの防災について、管理組合法人側が主管することになり、規約に定められた防災マニュアルを制定することが求められたためだ。
YKさんは「数年前に定年退職してこのマンションに入居しました。これまでの会社勤めで防火管理者の資格をもっていたこともあり、このマンションの防火管理者を務め、その流れでこのお役目を担いました」と語る。マンションの構造など設計上の要件を読み解くなどして、このマンションに最適化したマニュアルづくりを心がけたという。
理事長の滝井さんは「昨年、病気で2度ほど入院され、どうなることかと気を揉みましたが、しっかりとマニュアルを作成してもらいました。今年1月の臨時総会で認められ、防災面の備えができたことは心強いです」と、YKさんの苦労をねぎらう。
また、やはり2年の任期を終えた佐藤大輔さん(37歳)は「私は、輪番制で理事の役目が回ってきました。若手でもあり、就任して最初は様子見でしたが、しばらくすると積極的に活動に関わるようになりました。第7期には、副理事長にと薦められ、その役割を無事に果たすことができました。理事の仕事の引き継ぎマニュアルが整備されていたのは助かりました」と打ち明ける。
佐藤さんはIT企業にお勤めだそうだが「仕事とは別のフィールドである自分の住まいのマンション管理組合での人付き合いや、その業務をこなすことは、視野を広げ気分転換にもなります」とその活動を前向きに捉えたという。
副理事長の應田さんは「お祭りなどのイベント時が、新しい人材を発掘するよい機会です。子どもたちにふるまうカレーの大鍋を一緒にかき混ぜながら、理事会に参加しませんかと誘うと成功します」と笑う。「女性の参加も大切です。男性だけでは気づくことができない視点で助けてもらえます。また、中小企業の社長さんは、人の采配に長けていて、理事長に向いています」と理事長の滝井さんに目配せをする。
ジュエリー会社の代表で、第7・8期の理事長を務める滝井さんは「うちの理事は、たいへん仕事ができる人たちが多くて助かっています。それぞれの得意分野を活かして、適材適所で活躍してもらっています。また、理事会の後には持ち寄りで飲み会をやることにしており、引き続きほかの話題も楽しんでいます」と語る。
月一度の理事会には9割以上という極めて高い出席率であり、理事会後の“飲みニケーション”も円滑な理事会運営に役だっているようだ。
「イニシア千住曙町に住んでいる同士が仲良く、建物や周辺の維持管理も適切に行って日本一のマンションにしたいですね」と滝井さんは締めくくってくれた。