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世界でユーザー数最大のラジオ型音楽ストリーミングサービス「Pandora」が、身売りを検討していると米メディアが報じており、将来性を不安視する声が高まってきました。

ニューヨーク・タイムズによると、Pandoraはモルガン・スタンレーと共に見込みがある買い手と接触している模様で、関係者によれば議論は初期段階にあり、契約が成立しない可能性も残していると言います。また、ロイターに対して米ウェドブッシュ証券のアナリストであるマイケル・パクター(Michael Pachter)は、米ヤフー、Hulu、AmazonがPandoraの買収を検討している買い手候補かもしれないと、推測を伝えています。

Pandoraといえば、アメリカでいち早くリスナーの音楽視聴の傾向を分析して好みにあった曲を自動でレコメンドする、無料のラジオ型音楽ストリーミングで成功した企業として有名です。2005年から開始した音楽サービスでは、「ミュージック・ゲノム」(Music Genome)という独自の音楽解析技術をプラットフォームに導入して、リスナーが記録する「Thumb Up/down」(Pandora版いいね)や視聴履歴を解析しながら、音楽をストリーミング再生します。

Pandoraの経営幹部は同サービスを米国、オーストラリア、ニュージーランド以外の国へ拡大させたい願望があり、Pandoraをラジオ型からオンデマンド型音楽ストリーミングサービスにシフトすることを目指しています。

オンデマンド型の音楽サービスは、リスナーが好きな音楽や作品を検索したりプレイリストを選びながら、好きな時間に好きな場所で聴けるサービス。この分野ではSpotify、Apple Music、Deezer、日本のAWAやLINE MUSICが競争を続けています。

昨年Pandoraは、破産を申請した定額制音楽ストリーミングのRdioから資産を7500万ドルで買収しました。このことからPandoraが定額制のオンデマンド型音楽ストリーミングに関心を強めていることに狙いを定めたと音楽業界やウォール・ストリートは騒ぎ始めました。

さらにPandoraは4億5000万ドルでオンラインチケット販売のスタートアップ「Ticketfly」を買収、音楽ストリーミング以外での付加価値の提供そして収益拡大に注力し始めています。

現在Pandoraの収益源は80%以上が広告収入です。Spotifyとは違い基本的には無料ユーザーのため、有料課金での収益化はこれまで成功しているとはいえませんでした。Pandoraの月額5ドルの有料プラン(広告が削除できる)を使うユーザーは390万人です。

他社サービスとの比較で、Pandoraは圧倒的な登録ユーザー数(2億5000万人)を誇ります。一方、アクティブユーザーは2014年末の8150万人でピークを迎え、以降は伸び悩んでおり2015年Q3は7800万人に終止しています。

現在のPandoraの市場価値は18億ドル、10月から株価は60%下落しています。

PandoraのCEOブライアン・マックアンドリュース(Brian McAndrews)は買収の噂についてのコメントを拒否しています。

ソース
Pandora Is Said to Have Held Talks About Selling Itself(The New York Times)

Pandora in talks to sell itself: New York Times(Reuters)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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