本書「小飼弾の 「仕組み」進化論 」は、プログラマーという、「純粋な仕組み」を作ることを仕事にしている者が、仕組みというものを一体どう考えているのかを、一般書に落とし込んだ一冊ということになります。
目次 - Amazonより
- まえがき - 仕組みの逆襲
- Part0 仕組み作りが仕事になる
- 仕組み化が進んだ社会
- 仕組みづくりを仕事にするための「新20%ルール」
- Part1 仕組みの仕組み
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- -- 仕組みを作る前に知っておきたいこと
- 仕組みはどんなふうにできているのか
- あらゆる仕組みは、「テコ」と「奴隷」でできている
- 見えないテコ=公式が仕事を効率化する
- 身近にある「テコ」と「奴隷」を使った仕組み
- ディズニーランドのサービスの秘密は、マニュアル=テコにある
- テコの力をコントロールできるFXの仕組み
- Part2 仕組みを作り直す
- -- 目の前の仕事を20%の力でこなす仕組み
- プログラマーに学ぶ「仕組み作り」の基本
- プログラマーの三大美徳「怠慢」「短気」「傲慢」
- 同じ作業の重複を嫌がる「怠慢」
- 先回りして仕組みを作る「短気」
- プロ意識から仕組みのメンテナンスを容易にする「傲慢」
- 日常業務を仕組み化してみよう
- 仕事を定量化する
- 事例1 無駄な繰り返しを減らす仕組みを考える
- 事例2 すべての記録を保存して再利用
- Part3 仕組みを使う
- -- 仕組みのコストとテストを考える
- 仕組みは使ってなんぼ
- 何回使えば元がとれるか
- 残りの80%で遊ばなければならない理由
- 「使わないでなんぼ」な仕組み
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Part4 仕組みを合わせる
-- チームで仕組み合うために
仕組みを合わせる基本ルール
- 仕組みの中のボトルネックを見つける
- 生き残るためには安全性の高い並列的な仕組みに
上手に仕組みを合わせる
- 次の工程を見せて自分の役割を理解させる
- 仕組みの位相・タイミングを合わせる
- 泥縄的なマニュアル=最新のマニュアル
安全に“仕組み合う”ための仕組み
- 非常時に力を発揮するために「緊張しなくてよい」状況を示す
- 保守担当者には、金銭的なモチベーションも必要
- 意識させずに安全性を高める「自動化」と「自働化」
- リーダーの笑顔は義務である
- 問題は自分よりふたつ上のレイヤーで考える
- コミュニケーションコストを減らす「モックアップ」
Part5 仕組みと生物
-- 「新しい仕組み」を作るヒント
生き残りの名人「生物」という仕組みに学ぶ
- どうやって生き残るかを考えるときが来た
- 生き残るコツは、「生物」にあり
- 突然変異を誘発するブレインストーミング
生き残るための仕組みを作る
- レッド・オーシャンの隙間のブルー・オーシャンを狙え
- 隙間を見つけるには、「遠くを見過ぎない」こと
- 仕掛品をたくさん作り、最後の1ピースを待つ
Part6 仕組みの未来
「リソース重視」の仕組み作りが格差をなくす
新しい仕組み作りへリソースを投じよう
- あなたは本当に働いているのか
- 怠け者のアリが社会を豊かにする
- “ending concern”やオープンソース
あとがき 本書ができあがるまでの仕組み
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著者名こそ私の名しかありませんが、私の「言葉」が一冊の「書籍」になったのは、日本実業出版の多根さんと、「弾言」を共著してくれた山路さんのおかげです。本書の原稿はこの三人で作ったといっても過言ではありません。改めてお礼申し上げます。著者名が私のみなのは、瑕疵があったら私のみが責められるべきという「仕組み」とお考えください。
個人的にうれしいのは、ついに一般書において「プログラマーの三大美徳」を紹介できたこと。
これを知らぬギークはもぐりだ、と言い切ってもいいぐらいギークの間では有名なこの三大美徳ですが、しかしそのギークというのは世の中のごく一握りの人を指すに過ぎないというのも厳然たる事実で、これをプログラム以外の実例にあてはめて、一般書の文脈で紹介できたことが実にうれしいのです。
本書は「仕組み本」であると同時に、「反仕組み本」でもあります。仕組みを知らぬ者ほど、仕組みのいい面ばかりを吹聴するというのは、数多の仕組み本でずっと私が感じて来た違和感で、その違和感を形にしたのが本書です。当初はもっと「Yet Another 仕組み本」に近い本として出発した本書の執筆ですが、「ありがたい」ことに世界同時バブル崩壊がやってきて、私が本当に訴えたかったが読まれる余地が大きくなったように感じています。
本書で一番強調したのは、仕組みそのものに善悪はないということ。仕組みはかけ算。良いことだけではなく悪いことだって乗じます。世界同時バブル崩壊とうのは、その顕著な例の一つに過ぎません。
そして本書も、それを紹介している本blogもまた、仕組みです。
本書があなたという仕組みを、あなたの望む方向に乗じることを著者として願いつつ本entryのしめとさせていただきます。よろしければご一読を。
Dan the Coder
http://saoriotsuka.blogspot.com/