「県民ぐるみで闘いを」 故亀次郎さんの言葉訴え


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由美子ちゃん事件を伝える1955年の琉球新報

 米軍属女性死体遺棄事件で容疑者が女性暴行と殺害を供述し、県民にとって1955年に6歳の少女が米兵に乱暴され殺害、遺棄された「由美子ちゃん事件」を想起させる事態となった。米統治下の弾圧に抵抗した政治家、瀬長亀次郎さんの次女で民衆資料館「不屈館」館長の内村千尋さん(70)は、瀬長さんが事件に関連し「団結をかためよう。三度叫ぶ。一切の利己心を棄てよ!」などと不条理を正すために団結を呼び掛けた日記を示し、沖縄の状況が今も変わっていないことを指摘する。「女性の死を無駄にしてはならない。基地をなくすため、県民大会などを開いて団結を示すべきだ」と訴えた。

由美子ちゃん事件に関連し「一切の利己心を棄てよ!」と県民の団結を求める記述がある、瀬長亀次郎の日記

 瀬長さんは当時、人民党事件で投獄中。新聞報道などで事件を知り「八十万県民の腹わたをにえくりかえさせた」「県民総ぐるみの闘いを組む以外に県民を解放することは出来ない」などと日記に書いている。

 内村さんは「由美子ちゃんは草を握りしめ、唇をかみしめたまま亡くなっていたそうだ。遺体が損傷し、顔をなでることもできなかったであろう親の気持ちを考えると、苦しくてたまらない」と語る。

瀬長亀次郎の日記から由美子ちゃん事件について書かれた部分を示し「女性の死を無駄にしてはならない」と語る内村千尋さん=21日、那覇市の「不屈館」

 住民のすぐそばに基地がある状況について「人を殺す訓練を受けた人が自由に基地の外で行動できる。同世代の孫がいるが、『夜は一切外に出るな』とも言えない。身の危険を感じざるを得ない状況がおかしい」と語る。

 瀬長さんが50年に「人民が声をそろえて叫んだならば、太平洋を越えてワシントン政府を動かすことが出来る」と演説したことを挙げ、「権力は弱いところにくさびを打ち、分断する。亀次郎は民主主義を勝ち取るため、団結することを常に考えていた」と語る。

 その上で「暴行されたが訴え出られず、自殺した女性もいた。事件は氷山の一角だ。基地がなければ今回の容疑者も沖縄に来ることはなかっただろう。基地あるが故の問題だと、県民が団結して訴えることが大事だ」と強調した。