<社説>参院選 伊波氏が大勝 民意の厚みの表れだ 新基地建設は許されない


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 安倍政権の強行姿勢にも、沖縄はひるまない。将来を見据えた県民の不退転の決意の表れだ。

 参院選沖縄選挙区で、無所属新人で元宜野湾市長の伊波洋一氏が初当選した。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設反対を掲げての圧勝である。
 「オール沖縄」勢力はこれで非改選を含む参院沖縄選挙区で2議席、衆院沖縄選挙区で4議席の計6議席を独占した。
 新基地建設に反対する民意はかつてないほど厚みを増した。安倍政権が民意を無視し、新基地建設を強行することは許されない。

 1票に込めた誓い

 伊波氏は、3期目を目指した沖縄担当相の島尻安伊子氏に11万票近い大差をつけた。辺野古新基地を拒否する民意は揺るがないことの証しである。「沖縄のことは沖縄が決める」との自己決定権の実現を目指すことを、政府に改めて宣言した意義は大きい。
 米軍基地あるが故に起きた米軍属女性暴行殺人事件を受け、基地被害を断ち切らねばならないという県民の誓いも、選挙結果には込められている。
 伊波氏は選挙戦で「辺野古への新基地建設は沖縄の負担軽減にならない」と新基地建設に反対した。移設によって「沖縄が未来永劫(えいごう)基地の島になる」とも訴えた。沖縄への理不尽な基地押し付けの本質を射た訴えであり、幅広い県民の共感の大きさが得票数に表れた。
 新基地建設は過重な負担を今後も沖縄だけに強いる、危険性のたらい回しにほかならない。それが県民の共通認識であることを、安倍政権に改めて突き付けた。
 島尻氏は「あらゆる選択肢を排除せず、全力かつ現実的に取り組む」とした。だが、安倍政権は「あらゆる選択肢」を排除し、辺野古移設に固執している。島尻氏は「普天間問題の原点は危険性除去や基地負担軽減にある」ともしたが、新基地建設までの期間を考えれば、10年以上も危険を放置することになる。県民の支持が広がらなかったのは当然だ。
 6年前の参院選で県民と約束した「県外移設」の公約を撤回したことで、島尻氏は安倍政権の代弁者と化した。県民が求めるのは沖縄の民意の代弁者である。その認識の有無が結果に大きく影響したと言えよう。
 安倍政権は、辺野古新基地建設が県民から拒否された事実から目を背けてはならない。現職閣僚の大敗には、米軍人・軍属が引き起こす事件に有効な防止策を打ち出せないことへの強い抗議が込められていることも知るべきだ。

 原点に立ち返れ

 普天間飛行場移設問題を巡る主要選挙では、2014年1月の名護市長選、11月の知事選、12月の衆院選全沖縄選挙区のいずれも新基地を拒否する候補が当選した。
 ことし1月の宜野湾市長選は安倍政権の推す現職が勝利したが、選挙戦では辺野古移設の賛否を明言しておらず、新基地建設を市民が選択したことにはならない。6月の県議選では翁長県政与党が圧勝している。
 衆参両院の沖縄選挙区は全て「オール沖縄」勢力が独占したことからも、新基地建設を県民が受け入れる余地は一切ないことは明らかだ。
 にもかかわらず安倍晋三首相は伊波氏当選を受けても、辺野古移設を推進する考えを表明した。新基地建設の強行は民主主義の破壊にほかならない。正当性は沖縄にある。大きな不利益を受ける側の意向は尊重されてしかるべきだ。
 翁長雄志知事は一連の選挙結果を踏まえ、伊波氏の当選を「民意の総決算」と評した。新基地建設の是非が争点になる選挙は、これで終わりにしたい。
 それは難しいことではない。県民が「負担軽減にならない」と拒否している辺野古への新基地建設を、安倍政権がやめれば済むことだ。民主主義の原点に立ち返れば、当然のことである。

英文へ→Editorial: Iha wins Upper House election, giving new weight to base opposition