天然ガスへの転換相次ぐ 沖縄県内の企業 インフラ整備課題


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 液化天然ガス(LNG)やLNG由来とする都市ガスが県内で急速に普及している。LNGは化石燃料の中でも石油や石炭と比べて二酸化炭素(CO2)の排出量が少なく、世界的に注目を浴びるエネルギーの一つだ。県内では、今年に入って、伊藤園が沖縄名護工場の燃料を天然ガスに切り替えるなど、県内企業でも天然ガスへの転換が着実に進んでいる。

 天然ガスの受け入れ・出荷基地を持つ県内唯一の天然ガス供給事業者の沖縄電力は、昨年5月のイオンモール沖縄ライカムへのガス供給を皮切りに中部徳洲会病院、沖縄ハム、沖縄ガスへのガス供給を展開している。沖縄ガスは沖電からのLNG買い取りにより、昨年8~9月にかけて販売する都市ガスの原料をLPガス(液化石油ガス)からLNGに転換した。同社によると、LNG由来の都市ガスはLPガス由来に比べ、CO2の排出量が3割程度抑えられるほか、空気より軽いため安全性も飛躍的に向上する。

 LNGは輸入価格が安定している利点もある。重油が中東など産出国の政情不安や供給量により、価格の変動が激しい一方、LNGは産出国が世界に点在しているため、紛争などで供給が不安定になる恐れも小さいとされ、価格も石油などに比べて1割程度安い。日本へは、低温で液体にした液化天然ガスの形で輸入され、火力発電所では石油や石炭に次ぐ主力燃料にもなっている。

 一般的に天然ガスや都市ガスは、地下の導管を通じて、各工場や家庭などに供給される。県外では、40年前から天然ガス(都市ガス)の供給が始まっているが、沖縄は米軍統治下時代が続いたことに加え、LNGの受け入れ基地がなかったことで導管の整備が遅れ、今でも那覇市や浦添市などの一部(約5万6千世帯)に限られ、多くの家庭や企業がLPガスを使用している。

 2013年度の1人当たりの導管延長は全国平均が1・99メートルだが、沖縄は0・45メートルと5分の1しかない。導管延長距離に占める県内の割合は0・25%にすぎない。電線の地中化と違って、導管の整備は国の補助がないため、今後も整備拡大の望みは薄い。

 県内では西海岸を中心にホテルの建設ラッシュに沸き、天然ガスの需要も高まりを見せている。導管がない所に天然ガスを供給する場合、タンクローリーで運んだLNGを貯蔵し、各施設にエネルギーを供給する「サテライト施設」の整備が必要となるが、事業者の初期投資の負担が大きいことが課題となっていた。だが、5千万円を上限に設置費用の半額を県が補助する「観光施設等の総合的エコ化促進事業補助金」が本年度に創設されており、今後、天然ガスのさらなる普及に期待が懸かる。