ヘリパッド建設強行 県知事揺さぶりの意図も


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 米軍北部訓練場の約半分の返還に伴い、東村高江集落を取り囲むように建設されるヘリパッド(着陸帯)について、政府は週明けにも警視庁などから400~500人規模の機動隊を投入して抗議運動に備え、建設を強行する構えだ。政府は名護市辺野古の埋め立て承認を巡り、早ければ22日にも県を提訴する準備も並行して進める。県は「いろいろなものを同時に仕掛け、県を混乱させるつもりなのか」(幹部)と警戒する。ヘリパッド建設を「容認しない」ものの、明確な反対は示さず、慎重な対応を続けてきた県からも「国の行動は常軌を逸し、冷静さを失っている。激しい混乱は避けられないと分かっているのか」との声が上がる。

 同ヘリパッドでは米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが運用される。オスプレイ配備撤回を求める翁長雄志知事は、現計画での建設を「容認できない」としている。しかし、ヘリパッド建設は在沖米軍基地の整理縮小を定めたSACO(日米特別行動委員会)合意による計画で、北部訓練場の約半分を返還する条件にもなっているため、「反対」とまでは言わず、国に再考を促してきた。

 だが大量の機動隊を投入しての建設強行は、県との“対話”の可能性を打ち消すことを象徴する。参院選で基地負担の大幅軽減を求める民意があらためて鮮明となったが、その直後の建設強行に県民の反発は必至だ。翁長知事は「他の都道府県にこんなことをするのか」と強く批判している。

 県内の市民団体や県政与党などから、翁長知事がヘリパッド建設計画に明確に「反対」するよう求める声も上がっている。

 政府関係者は「反対をしない知事には身内からの批判も上がるのではないか」と述べ、知事の支持勢力を分断する揺さぶりの意図も見える。

 県内部には、政府の強硬姿勢の背景には、米側からの圧力があるとの分析もある。北部訓練場にある既存のヘリパッドは、排気熱が高いオスプレイの運用を前提としていないため、早急にオスプレイ対応型に“改良”する必要性から、日本側に工事をせかしているとの見方だ。

 県幹部は「『早く使いたい』という米側の都合もあるのだろうが、それに応じて県民への圧力を強めれば、混乱は避けられない。日米安保を不安定にするリスクを国は分かっているのか」と話した。(島袋良太)