2018年1月12日金曜日

女70 泡

j.mp/tacw70d Woman 70 - bubble
折角、明朝体を導入したのに、なぜかは、ぶっきら棒。
兎角色恋となると身構えて素直になれない、というのはこじつけの冗談で、このフォントは未だ試験運用中。
いつの日にか角が取れ、繊細な線描と墨溜まりで統一され、総てが凛として且つ柔らかな、なよ竹のような印象に変ることでしょう。
Koujirou Tomatsu as elpoeptac Gallery Lounge: 女70 泡
鉛筆 紙 + GIMP 2015-12-25
Pencil on paper + GIMP (hand drawing + retouch).
#art #painting
泡 : bubble
Flickr URL : http://j.mp/tacw70d
日本語タイトルは、”泡”。
英語タイトルは、”bubble”
溺れて、口と鼻から気泡が湧き出す女。
髪は逆巻き、仰け反って口を大きく開き、
最期の空気が出ていくのを、朦朧として見送る。
本来冒頭には、この前回の説明的な予告文を膨らませるか、影響されたアリアの歌詞(後述)を掲載すべきだが、今回は、新たに採用した日本語ウェブフォントにおける、些細な不備を面白がる方が勝った。採用したフォントは、現在は試験運用ということで、一部の漢字が明朝体になっていない。

この投稿の為に改めて振り返ると、今回の作品は、制作当時の心境と現在のそれに幾分齟齬があって、深刻に描いた自分が、二年後の今はやや気恥ずかしく、照れ隠しに、まずはお気楽な話題を取り上げた次第。フォント制作者には、揚げ足を取るようで申し訳ないが。
唯、今は一部の無骨な文字も、いつか横棒が細くなり、墨だまりが出来て、知らぬ間に柔らかい印象に変わり、冒頭の文章は意味不明になるだろう。勿論、そうなる前に、スクリーンショットを撮っておくつもり。


そもそもこの絵を描く以前から、文学や映像など他の分野の表現においても、突発的に水中を泳いだり、溺れたりする場面に妙に惹きつけられていた。
正規の装備をした潜水や水泳ではなく。
元より、加虐趣味などは無い。

私淑する作家、泉鏡花の描くヒロインは、しばしば溺死する。
しかし、脳内で映画を上映するような、秀でた描写力を持ちながら、彼はその様を具体的には描かない。
自然主義的なリアリズムなら、実際の水死体の悲惨さを無粋に描くのだろう。
彼が記す水死とは、息が出来ず、圧し掛かる重圧を必死に押し退ける、人の世の苦しみの象徴だ。


もう一人の私淑する作家アレクサンドル・デュマ・ペールの「モンテ・クリスト伯」においても、忘れがたい同様の場面がある。
主人公エドモン・ダンテスが、14年間囚われた牢獄シャトーディフを脱獄する件は、何度読んだか解らない。
脱出する断崖の下に待ち受ける、シャトーディフの墓場 は、 なのだ。
錘を付けられたダンテスは、海中深く沈んでゆく。

この絵に添えるテキストの第一候補は、構想からラフスケッチまでの段階では、その場面か、あるいはそこに至る前、暗牢で出会った 狂える囚人ことファリア司祭との交情だった。
唯、ダンテスは男性で、しかも、この時は髪も髭も伸び放題なので、多少の違和感は残り、結局採用は見送った。

岩波文庫版の、1巻から2巻の冒頭にかけては、自分にとっては特に大切な部分なので、下記の引用は、いつか相応しい絵が描けたら、より大きな文字で冒頭に掲げたいと思う。
「あなたは、わしの息子なのだ!」と、老人は叫んだ。「あなたは、わしの囚われていたあいだの息子なのだ。わしの身分は、わしを独身のままにさせた。主はあなたをわしに遣わされて、父親になれない男、自由になれない囚人、この二つを同時に慰めてやろうとなさったのだ。」
ファリア司祭は、こう言いながら、いま自分に残っている片方の腕を青年のほうへ差し出した。青年は、老人の首に飛びつくなり、涙にくれた。


そんなところへある日、
プッチーニ作曲:オペラ「ジャンニ・スキッキ」の中のラウレッタのアリア
"O mio babbino caro" : "私のお父さん" の歌詞の意味を知った。

オペラの上演とは別に、単独で歌われることも多い有名な曲だから、以前からメロディは知っていたが、ラウレッタが父親ジャンニ・スキッキに、自分の恋愛を認めるように懇願するこの歌は、自分が思い描いた光景に相応しいものに思えた。
そして、その曲調と共に、歌詞の中の
アルノ川に身を投げるわ!
という一節は、全体図を描く大きな推進力になった。
(歌詞の原文と対訳は本稿末尾を参照)

全体のストーリーを知ったのは完成後だ。
果たしてそれは、曲調から想像したものとは大きく異なるものだった。
この曲が無ければ、このオペラ作品自体は、泡と消えるソープオペラだ。
結局ラウレッタは身を投げない。
お話は、かなり荒唐無稽な喜劇で、かのセリフは、深刻そうに見せて、実は本気ではなく、自分の恋愛を認めさせる為の、父親に対する大げさなハッタリに過ぎない。
父親同様、物の見事に自分もカマサレタわけだ。
正確に言えば、自分をその気にさせたのは、ラウレッタではなくて、台本作家とこの曲だが。 
ペットの悪戯のように、曲が良ければ総てが許される。曲の良し悪しに比べれば、オペラの筋はおろか、歌詞すら添え物に過ぎない。

かくして、悲劇的に描いた自分の思い入れは、肩透かしを喰らい、予告文を膨らませるのを控え、バツの悪い歌詞の掲載も裏表紙に追いやることになった。
自分の想像力は頗る単純で、そそっかしい。

唯、負け惜しみながら、こうも思う。
このアリアが一人歩きしたように、自分の作る作品も、結果だけが一人歩きして、見る人に、制作の動機や経緯を度外視できる程の、特別な感慨を与えたいものだ、と。
いつかこの歌も、悲劇的な台本が、新たな添え物になればいい。
brush水の動揺が水中にもたらす波紋は、主にきもののよろけ縞を参考にした。
他にも、向かい合った波状の流線が繰り返す立湧文たてわくもん、水紋、雨縞、雨絣、網目文等にも影響を受けた。
よろけ縞やこれらの紋が、大胆に総柄になった着物や浴衣は、とても魅力的だ。
自作の 女62 柳 でも触れた、曲線の繰り返しが生むリズムの効果。
泡もまた総柄なら、とても美しいだろう。
唯、今回の作品の泡の表現は、あまり上出来とは言えない。ハイライトの輝度が不足していて、メリハリが利いていない。また体の手前に、大きく泡を描いて、遠近感を出してもよかった。今回は作業日誌が内容に乏しいので、油彩として描く際の覚書として記しておきたい。
そもそも、描画ソフトにおいて、人物の描かれたレイヤーに、波のレイヤーを重ね、透明度やレイヤーのモードを調整すれば、興味深い効果が手軽に見られるだろう。同様にソフトウェアの力を借り、上記の半透明の青色が、偶然にも、水中の雰囲気を醸し出している。
今後の構想として、水面の漣の反映が、顔に映る絵柄も面白いかもしれない。

因みに、portrait style (縦型)は、元画像をrotate(回転)しただけだが、改めて見返すと、観察用の一つの視点を提供はするものの、切迫感が弱まって、余計な措置だったと今は思う。ブログにおいてhoverすると、任意にrotateするようにすべきだった。
また後付けながら、髪の部分を始め全体の陰影は、ハリー・クラークの From " The Rime Of The Ancient Mariner " 「"老水夫の歌"から」の影響を受けたかもしれない。


●作業工程ログ(作業日誌)
Evernote :
Evernote 共有ノートブック :
WomanMosaic8 (64 - 72)


●次作予告

Woman 71 - Halo : 太陽

頭の中に太陽が沈む。
顔はすべて影の中。

既に完成、公開して久しいが、目糞鼻糞ながら、殊に閲覧数が低い。投稿の作成を機にその理由も考えてみたい。
ところで、今回を機に投稿記事本文の日本語部分以外、総てのフォントを変更した。下記表参照。

利用したのは、総て HTML の<head>にて<link>を行うウェブフォント。
文字サイズの大きな Poem × Picture の日本語は、
から さわらび明朝 を選んだ。
前述のように試験運用の段階なので、サイト全体の選択肢も限られ、質も完璧ではないが、今後の発展を期待して。
今回、実験的に大きなサイズで表示してみたところ、とても気に入った。
個人の見解だが、そもそも明朝体は、小さい場合は、俯瞰した際の連なりの印象も散漫に映り、読む気も褪せてくる。小さくなるほど曲線が目減りし、その分、滑らかさが擦れる為だと思う。
よって本文の、相対的にサイズの小さな日本語フォントは、現在採用しているメイリオを変えるつもりは今のところない。

font-family: 'Encode Sans Expanded', sans-serif, メイリオ, Meiryo, Verdana, 'MS Pゴシック', 'MS ゴシック', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', 'ヒラギノ角ゴ Pro W3', Osaka, Osaka-等幅 !important;
唯、日本語以外を担う Meiryo は横幅が狭く感じるので、更に、本文、Poem × Picture 共に、日本語以外のフォントも変更した。(アルファベットと数字等)
利用したのは、本家の
選らんだポイントは、日本語とのバランスだが、新たなフォントに気が移れば、躊躇なく乗り換えるつもりなので、ここで具体名に言及はしない。
サイト自体、とても気が利いていて、豊富な選択肢からフォント選びが効率よく、かつ楽しく出来る。今後の変更の可能性は無くは無い。

又、例外的に、言葉の通じない Cat 専用の、手書き風外国語フォントと、Jan van Eyck 等先達向けの、時代掛かった外国語フォントを導入。

尚、フォント選びの為に、同サイトの動画を作成、公開した。決して上出来ではないが、高画質で見れば、一応役には立つ。下記参照。
BeforeAfter
1234567890123456789012345678901234567890
​‌A​‌B​‌C​‌Č​‌Ć​‌D​‌Đ​‌E​‌F​‌G​‌H​‌I​‌J​‌K​‌L​‌M​‌N​‌O​‌P​‌Q​‌R​‌S​‌Š​‌T​‌U​‌V​‌W​‌X​‌Y​‌Z​‌Ž​‌a​‌b​‌c​‌č​‌ć​‌d​‌đ​‌e​‌f​‌g​‌h​‌i​‌j​‌k​‌l​‌m​‌n​‌o​‌p​‌q​‌r​‌s​‌š​‌t​‌u​‌v​‌w​‌x​‌y​‌z​‌ž​‌Ă​‌Â​‌Ê​‌Ô​‌Ơ​‌Ư​‌ă​‌â​‌ê​‌ô​‌ơ​‌ư​‌1​‌2​‌3​‌4​‌5​‌6​‌7​‌8​‌9​‌0​‌‘​‌?​‌’​‌“​‌!​‌”​‌(​‌%​‌)​‌[​‌#​‌]​‌{​‌@​‌}​‌/​‌&​‌\​‌<​‌-​‌+​‌÷​‌×​‌=​‌>​‌®​‌©​‌$​‌€​‌£​‌¥​‌¢​‌:​‌;​‌,​‌.​‌*​‌A​‌B​‌C​‌Č​‌Ć​‌D​‌Đ​‌E​‌F​‌G​‌H​‌I​‌J​‌K​‌L​‌M​‌N​‌O​‌P​‌Q​‌R​‌S​‌Š​‌T​‌U​‌V​‌W​‌X​‌Y​‌Z​‌Ž​‌a​‌b​‌c​‌č​‌ć​‌d​‌đ​‌e​‌f​‌g​‌h​‌i​‌j​‌k​‌l​‌m​‌n​‌o​‌p​‌q​‌r​‌s​‌š​‌t​‌u​‌v​‌w​‌x​‌y​‌z​‌ž​‌Ă​‌Â​‌Ê​‌Ô​‌Ơ​‌Ư​‌ă​‌â​‌ê​‌ô​‌ơ​‌ư​‌1​‌2​‌3​‌4​‌5​‌6​‌7​‌8​‌9​‌0​‌‘​‌?​‌’​‌“​‌!​‌”​‌(​‌%​‌)​‌[​‌#​‌]​‌{​‌@​‌}​‌/​‌&​‌\​‌<​‌-​‌+​‌÷​‌×​‌=​‌>​‌®​‌©​‌$​‌€​‌£​‌¥​‌¢​‌:​‌;​‌,​‌.​‌*
​‌折角、明朝体を導入したのに、なぜかは、ぶっきら棒。折角、明朝体を導入したのに、なぜかは、ぶっきら棒。

















Music × Picture

Maria Callas - O Mio Babbino Caro

Puccini
O mio babbino caro,ねえ、優しい優しいお父様、
mi piace,è bello.私が好きなあの人は美男子なの。
Vo'andare in Porta Rossa私はポルタ・ロッサへ
a comperar l'anello!指輪を買いに行きたいの!
Sì, sì, ci voglio andare!そう、どうしても行きたいの!
E se l'amassi indarno.もしこの愛が無駄だったら、
andrei sul Ponte Vecchio,私はヴェッキオ橋に行って
ma per buttarmi in Arno!アルノ川に身を投げるわ!
Mi struggo e mi tormento!私は焦がれ、苦しんでいるの!
O Dio, vorrei morir!ああ、神様、死んでしまいたいくらいに!
Babbo, pietà, pietà!ああ、お父さん、お願い、お願いです!
















Music × Picture

Love in Vain

Rolling Stones

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