Tasos Katopodis/Getty Images
- アメリカでは、187の企業の経営トップが6月10日付けのニューヨーク・タイムズに掲載された全面広告に署名した。この広告は、複数の州で中絶を禁止する動きが相次いでいることを批判するものだ。
- 銀行、テック企業、ファッション・ブランド、エンターテインメント企業などが、職場における平等は「現代における最も重要なビジネス課題の1つだ」とする公開書簡に署名した。
- ブルームバーグ(Bloomberg)、ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry's)、スラック(Slack)、イェルプ(Yelp)、ティンダー(Tinder)も署名している。
- 公開書簡には、中絶を含む生殖に関するサービスを規制することは、「わたしたちの従業員と顧客の健康、独立、経済的安定を脅かす」もので、「ビジネスに悪影響を及ぼす」と書かれている。
- 公開書簡はどこの州とは名指ししていないが、オハイオ州、ミシシッピ州、ルイジアナ州、ジョージア州、ミズーリ州、アラバマ州では最近、議会が中絶を厳しく禁止する法案を可決させている。
アメリカでは、複数の州で中絶や生殖に関する医療を規制する動きが相次いでいることを受け、187の企業がこうした法律は「ビジネスに悪影響を及ぼす」もので、企業が従業員を守ることを難しくするものだと批判した。
銀行、テック企業、メディア、ファッション・ブランドなどが6月10日付けのニューヨーク・タイムズに共同で全面広告を打った。広告には「職場における平等は、現代における最も重要なビジネス課題の1つだ」と書かれている。
公開書簡の形をとった「Don't Ban Equality(平等を禁止するな)」と題されたこの広告には、金融サービスのブルームバーグやアイスクリームのベン&ジェリーズ、フードデリバリーのポストメイツ(Postmates)、アパレルのH&M、クチコミサイトのイェルプ、エンターテインメントのアトランティック・レコードおよびワーナー・メディア・グループ(Atlantic Records & Warner Media Group)、マッチングアプリのティンダー、ビジネス向けチャットのスラックなどが署名している。
合わせて10万8000人を超える労働者を雇用しているというこれらの企業は、「中絶を含む生殖に関する総合的な医療へのアクセスを制限することは、わたしたちの従業員と顧客の健康、独立、経済的安定を脅かす」と指摘している。
公開書簡は「端的に言って、わたしたちの価値に反するものであり、ビジネスに悪影響を及ぼすものだ」とした上で、「わたしたちの多様性を高め、インクルーシブな労働力の供給を可能にし、国中からトップの才能を採用し、わたしたちのビジネスを日々盛り立て続けてくれている全ての人々の健康を守る力を損なうものだ」と主張する。
化粧品のMACや、クラウドを使ったセキュリティーサービスを提供するオクタ(Okta)、バスアイテムやスキンケア製品で知られるラッシュ(Lush)、アマルガメイテッド銀行といった企業もこの全面広告に名を連ねている。ツイッター(Twitter)のCEOジャック・ドーシー氏も、モバイル決済のスクエア(Square)のトップとしてこの公開書簡に署名している。
ニューヨーク・タイムズに掲載されたこの公開書簡の全文は、中絶へのアクセスを規制する新たな法律に関する情報などと合わせて「Don't Ban Equality」のウェブサイトにも載っていて、追加の署名も受け付けている。
アメリカでは最近、中絶を禁止する動きが広まっている。複数の州で議会がより厳しい法律を導入し、反発を招いている。今回の全面広告は、特定の州を名指ししてはいない。
4月から5月にかけて、オハイオ州、ミシシッピ州、ルイジアナ州、ジョージア州、ミズーリ州、アラバマ州が国内でも最も厳しく中絶を禁止する法案を可決させているが、いずれも訴訟に発展、まだ発効していない。
中でも最も厳しいのがアラバマ州で、中絶を完全に禁止し、手術をした医師には禁固刑を科すとしている。その他の州では、「心臓の鼓動」をもとに妊娠5~6週以降の中絶を禁止するとしている。
ミズーリ州のセントルイスで行われた、中絶禁止に反対するデモ(2019年5月30日)。
AP Photo/Jeff Roberson
ニューヨーク・タイムズに掲載された全面広告には、「平等の未来は危機に瀕している。わたしたちの家族、コミュニティー、ビジネス、そして経済をリスクにさらしている」と書かれている。
今回の企業による署名キャンペーンは、非営利団体のPlanned Parenthood Federation of AmericaやNARAL Pro-Choice America、アメリカ自由人権協会(ACLU)、Center for Reproductive Rightsがリードした。
これらの団体は、「(我々は)生殖に関する医療を守るべく、企業や企業トップに機会を提供し、ともに協力していく」としている。
アラバマの中絶禁止法案に反対する人々。
Chris Aluka Berry/Reuters
中絶禁止法をめぐっては、ディズニー(Disney)やネットフリックス(Netflix)、AMCといったエンターテインメント企業も、ジョージア州で医師が心臓の鼓動を確認したあとの中絶を禁止する法律が発効すれば、同州における映画やテレビ番組の制作を見直す可能性を示している。
(翻訳、編集:山口佳美)