思わず胸が熱くなる!ビジネスパーソン必読の企業・経済小説10選

人の発想には限界があります。自分が経験してきた枠内から大きく離れることは難しいものです。限界を超えるために必要なものの一つとして、「先人たちの智慧」が挙げられるのではないでしょうか。人の経験を自分のものとして吸収し、糧としていくことで、確実に視野は広がります。

そこで今回は、読んで面白いだけでなく、ビジネスパーソンの血肉となり、日々の仕事の道しるべとなるような企業・経済小説を10冊ご紹介します。

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ヒューマンドラマに胸が熱くなる!

企業・経済小説がビジネスパーソンに人気なのは、つらいときや壁にぶつかったとき、選択に迷っているときに、主人公に自分を投影することで、勇気をもらったり、何らかの指針が見つかるからという点も理由の一つでしょう。ここでは、多くのビジネスパーソンが共感しやすいヒューマンドラマをご紹介します。

●ラストワンマイル

f:id:tany_tanimoto:20160801180017j:plain楡周平著、新潮社、2009年

小説ながら、読めばどの企業をモデルにしているのかがすぐにわかります。描かれるのは物流業界をめぐる激しい生き残り競争のリアリティ。主人公の横沢哲夫は「暁星運輸」の広域営業部課長として、長年ネット通販の「蚤の市」と良好な関係を続けてきました。しかし、あるとき「蚤の市」から突然、取引条件の変更を求められます。それは裏切り行為のようなひどい内容でした。「蚤の市」はテレビ局の買収に乗り出すほどイケイケの新興企業。もはや打つ手はないのかと絶望感に襲われる中、横沢は一つの事実に気づきます。それは、商品を顧客に直接届ける最終行程「ラストワンマイル」を握っているのは自分たちなのだ、ということでした。

●天佑なり

f:id:tany_tanimoto:20160801180026j:plain幸田真音著、角川書店、2013年

アベノミクスの原点といえば、この小説の主人公・高橋是清です。高橋の人生は、まさに波乱万丈。12歳で渡米してから奴隷として売られたり、教師や官僚、相場師など職業を転々とし、詐欺に遭うなどしながら、政治家に転身。大蔵大臣、首相まで上り詰めた末、2.26事件で暗殺されます。昭和恐慌の鎮静化、世界恐慌のデフレからの世界最速での脱却など、蔵相としての手腕は現在でも評価されています。際立った財政センスと、歴史に翻弄されながらも逆境に対して果敢に挑戦する高橋の生きざまに勇気づけられる一冊です。

●官僚たちの夏

f:id:tany_tanimoto:20160801180034j:plain城山三郎著、新潮社、1975年

経済小説の開拓者として知られる城山三郎の作品の中でも、名作と評される一冊です。主人公の風越信吾は「ミスター通産省」と呼ばれた元通産省(現・経済産業省)事務次官の佐橋滋をモデルにした人物。出世欲を前面に押し出し、人事カードを頻繁にいじりながら事務次官へと上り詰めていくその姿は、若い世代の人には驚きをもって受け止められるかもしれません。一方、向上心が刺激されるという人もいるでしょう。

また、作中で国内企業の産業力強化をめぐる議論が展開されますが、その光景は現在のTPPをめぐる議論にそっくりです。まさに、「先人の智慧」が今に活きる一冊です。

●営業零課接待班

f:id:tany_tanimoto:20160801180041j:plain安藤祐介著、講談社、2010年

主人公・真島等が異動を言い渡された先は、窓際も窓際の営業零課、通称「接待班」でした。営業零課には営業自体が苦手な真島をはじめとして、崖っぷちの社員が集められています。彼らは一念発起し、なんと年間売上50億円という無謀な目標を立てます。日々修羅場の連続の中で、果たして真島たちは目標を達成できるのか…。

仕事はすべてが楽しいことばかりではありません。時として不得意な業務に従事したり、苦手な人と付き合う必要があります。この小説は、そうした逆境を楽しく乗り越えるための術を提供してくれます。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

金融の世界がわかる!

金融業界が小説やドラマの舞台になることが多いのは、お金をめぐって渦巻く人間の欲望が赤裸々に描かれているからでしょう。読み出したら止まらない、のどの渇きを覚えるほど夢中になれる金融小説を2冊ご紹介します。

●金融腐蝕列島

f:id:tany_tanimoto:20160801180053j:plain高杉良著、角川書店、1997年

企業・経済小説の第一人者・高杉良の作品。これは、金融業界とその影に潜む裏社会の間で奔走する一人の中堅銀行マンの物語です。主人公の竹中治夫は、心優しい性格ゆえに貧乏くじを引かされ、総会屋対策や不良債権処理のポストに任命されます。心ならずも不正融資に手を貸してしまったり、裏社会から家族まで狙われるというつらい状況の中、竹中にもたらされる運命は…。

本書出版当時は、バブル経済の終焉とともに「失われた10年」に突入する時代でした。大量の不良債権を抱える大手銀行の内実と、それに付け込む裏社会というリアリティのある構図は衝撃的で、映画やテレビドラマにもなっています。

●トップ・レフト

f:id:tany_tanimoto:20160801180103j:plain黒木亮著、角川書店、2000年

都市銀行、証券会社、総合商社出身の黒木のデビュー作。
ロンドンの金融街シティを舞台に、邦銀ロンドン支店に勤める主人公・今西哲夫と、米系投資銀行に勤める龍花丈を中心に話が展開されます。あるとき、日系自動車会社のイラン工場建設に伴う巨大融資案件の話が浮上。案件の主幹事(トップ・レフト)の座をめぐって今西と龍花が激しい争いを続ける中、ロシアの債務危機など事件が次々発生します。果たしてトップ・レフトの座を手にするのはどちらか?

金融の最前線に身を置いていた黒木ならではスリリングな展開で、国際金融の現場の緊張感や厳しさがよく伝わる一冊です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

起業したい人におすすめ!

今や起業すること自体はそれほど難しくはありませんが、その会社が5年後に生き残っている確率は30%台といわれます。それほど会社を存続させることは難しく、大手企業の名経営者と呼ばれた人たちも、大きな危機を何度も乗り越えながら会社を成長させてきました。以下の4冊は、そんな企業経営に関する感動のストーリーです。

●小説 盛田昭夫学校

f:id:tany_tanimoto:20160801180115j:plain江波戸哲夫著、講談社、2009年

テープレコーダー、トランジスタラジオの開発などで、町工場を世界のソニーへと成長させた盛田昭夫の生涯を綴った物語です。経営者としての盛田の道のりは常に波乱万丈、文字通り寝食を忘れて仕事に打ち込む盛田の行く手をベータマックスの失敗や勝ち目のない商標裁判など、技術・販売の両面でさまざまな障害が立ちはだかります。その一つ一つを天才的な閃きと行動力で乗り越えていく盛田。ソニーに人生を捧げた彼が亡くなったとき、葬儀の出棺の際に、霊柩車にしがみついて慟哭し死を悼む社員たちの姿が印象的です。会社とは何か、経営者とはどうあるべきかを教えてくれる一冊です。

●燃ゆるとき

f:id:tany_tanimoto:20160801180126j:plain高杉良著、角川書店、2005年

主人公は「赤いきつね」や「緑のたぬき」などの『マルちゃん』ブランドで知られる東洋水産創業者・森和夫です。戦後、築地市場の片隅で4人で起業し、そこから従業員1500人を超える東証1部上場企業へと成長させたサクセス・ストーリーが描かれています。

マグロの輸出で成功した後、魚肉ソーセージの製造に乗り出す森。大手総合商社の横暴な横やり、インスタントラーメンで有名な大手食品会社とのアメリカでの特許戦争、思わぬことで露呈した経営赤字などと戦いながら、一歩一歩ロマンを現実のものとしていく姿が感動的で、映画にもなっています。

●V字回復の経営

f:id:tany_tanimoto:20160801180134j:plain三枝匡著、日本経済新聞社、2006年

「V字回復」という言葉を有名にした小説です。主人公は、経営コンサルタントとして赤字企業の再建を手掛けてきた作者の三枝。彼が過去に行った企業5社の経営再建のストーリーを小説化したものです。

「2年で黒字化できなければ、退任します」と宣言することで、社員に甘えを許さず、社内全体を巻き込みながら一気に立て直しを進めようとする三枝。しかし、社内の政治力学、抵抗勢力の反発は想像以上に激しく、そのせめぎ合いの様子は強烈なリアリティをもって読者の心をとらえます。もう1つの特徴は、現実に行われる経営再建の手法がわかりやすく示されていること。ビジネスパーソンなら「うちの会社の問題点と同じだ」「こういう社員、うちの会社にもいる」と゛あるある“を感じながら読み進められることでしょう。

●海賊とよばれた男

f:id:tany_tanimoto:20160801180145j:plain百田尚樹著、講談社、2012年

累計発行部数370万部以上という大ベストセラー。主人公は「出光興産」創業者の出光佐三をモデルにした国岡鐡造。この小説では、鐡造の生涯と出光興産をモデルにした「国岡商店」が、日本の戦後復興に寄り添いながら大企業へと成長していく様子が描かれています。

終戦直後の焼け野原で、これから先どうすればいいのかと途方に暮れる店員たちを前に、「愚痴をやめよ」「この国は必ずや再び立ち上がる日が来る」と毅然と訴える鐡造。それを聞いて奮い立つ店員たち。経営危機に陥り、幹部から人員整理を進言されても、鐡造は「一人の馘首(かくしゅ)もならん」「社員は皆、私の家族と同然である」と解雇を断固拒否します。何度も苦境に立たされながら、日本の復興に立ち上がる鐡造たちの姿は感動とともに、時に涙を誘い、映画化もされました。

エンターテインメントとしても第1級!

企業・経済小説には、今回ご紹介した10作品以外にもテレビドラマや映画になった『ハゲタカ』『沈まぬ太陽』『華麗なる一族』『下町ロケット』『オレたちバブル入行組』などが有名です。いずれも完全な虚構ではなく、作者の実体験や緻密な取材をベースに書かれているからこそ強烈なリアリティをもって胸を打ちますが、それだけでなく、エンターテインメントとしても第1級であることが多くの読者から支持されている理由でしょう。

通勤時間や休日を利用して、ぜひご一読をおすすめします。

(敬称略)

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