夜、仕事帰りにラウンジをのぞくと、知った顔を見つけちょっとだけ話し込んでしまったり……、時間がぽっかり空いた休日、ラウンジに行けば誰か話し相手が見つかる──そんな大人のたまり場のような空間を集合住宅の中につくったのが、「ソーシャルアパートメント」。その共用空間には、自然に人が集まる仕掛けがあふれている。東京・文京区の「ワールドネイバーズ護国寺」を運営するグローバルエージェンツの高梨さんに空間づくりのヒントを聞いた。
まずは、一般住宅でいうLDKに相当するラウンジへ。入り口のドアは、中の様子がのぞけるガラス張りだが、通路を折れた奥まった場所であるため、リビングの中からはエレベーターホールが丸見えにならない。「気分がのらないときは、遠慮なくリビングを素通りできるよう、あえてリビングからはエレベーターホールが見え過ぎないようにしています」
一般の住宅でも、衝立(ついたて)など、来客の目に触れずにプライベート空間にアクセスできる工夫があると、招かれた人もその家に住む人も遠慮なくくつろげるだろう。
リビングに入ると真っ先に目に飛び込んでくるのは、半楕円の大きなテーブルだ。「テーブルはカーブしているほうが、通路からの動線がスムーズで人の輪に入ってきやすいということを意識しています」。ダイニングテーブルとチェアを木製や布張りにしているのは、素材のもつ温かみで気持ちをほぐしてほしいという狙いがあるそう。
テーブルと通路を挟んだ逆サイドはL字の大型ソファを置いたリビングスペースだ。「大きなソファは足を伸ばして座れるので、リラックスでき、自然と警戒心も解かれます。L字のソファならば、対面ではなく横向きで会話できるので、特別親しくない人同士でもちょうど良い距離感が取れるでしょう」
話が盛り上がって、特定の人ともっと深い話がしたいときは、別のスペースに移動すればOK。建物内には、このリビングラウンジのほかに、バーラウンジやワーキングラウンジなどがあり、どの部屋にも2人、あるいは4人程度が向かい合って話し込めるスペースをコーナー付近に必ず1カ所以上は設けている。
「大勢が集まるパブリックな空間では、誰もが構えずに入ってこられるオープンさを大切にしつつ、スモーキングスペースや少人数の内輪話ができるセミパブリックなスペースも確保することが大切と考えます」。ゲストが状況に応じて自分の居場所を選択できるように、多様なスペースを設けておくことも、居心地のいい空間づくりの秘訣といえそうだ。
今回紹介したプロ目線の空間づくりのコツは、一般の住宅でも取り入れられるポイントがいくつもある。また、自分がよく行く友人の家や、お気に入りのカフェなどにも「長居したくなる」「何度も行きたくなる」居心地のいい仕掛けがあるはずなので参考にしてみよう。
構成・文/木村寿賀子
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