<社説>糸数選手五輪4位 意義ある入賞たたえたい


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 リオデジャネイロ五輪重量挙げの男子62キロ級で、糸数陽一選手(警視庁)がトータル302キロの日本新記録で4位に入賞した。糸数選手の健闘をたたえ、県民と共に入賞を喜びたい。

 メダルには一歩及ばなかった。だが五輪個人種目での4位は、沖縄のスポーツ史に深く刻まれる好成績であり、県民の誇りでもある。
 それだけではない。多くの青少年の大きな励みにもなる。夢と希望を与える意義ある入賞を高く評価したい。
 糸数選手は6月、母校の南城市立久高小中学校で児童生徒に「遠くにある目標に一気にたどり着くことはできない。それでも一歩一歩、地に足を着けて進めばたどり着ける」と努力することの大切さを説いた。
 地道な努力を続け、有言実行を体現してきた糸数選手だけに、その言葉には重みがある。
 豊見城高校で重量挙げを本格的に始め、2年連続で選抜、総体、国体の3冠に輝いた。日大では大学記録を樹立し、2012年ロンドン五輪の有力候補に挙がった。だが日本代表入りはならず、リオ五輪を目指し人一倍練習した。
 そして糸数選手はリオ五輪の大舞台で「全試技の成功」と「日本記録を塗り替える」との二つの目標を達成した。糸数選手の競技に取り組む姿勢はスポーツに励む青少年だけでなく、多くの子どもたちに目標を立て、その実現に向かうことの大切さを教えてくれる。
 重量挙げは力と技術、差し上げるスピード、さらには精神力が物を言う競技である。6本の全試技成功は心技体とも充実していたことの証しである。五輪の緊張感にも打ち勝ったということだ。
 糸数選手は競技後、「沖縄の方たちの応援のおかげでここまで来られた」と感謝した。多くの関係者の支えや指導があって今の自分がある。そのことを常に思う姿勢がうれしい。
 「オリンピックという4年に1度のチャンスの中、もう少しでメダルに手が届く位置にあったので、すごく悔しい」と残念がった。その悔しさは必ずや糸数選手の新たな飛躍の原動力になる。
 東京五輪は29歳の絶頂期で迎える。「みんなが見ている前でいい結果を残し、母親にもメダルをかけてあげたい」。母親思いの糸数選手の五輪2大会連続出場とメダル獲得を県民挙げて応援したい。