▲1983年9月にデビューしたワンダーシビック。車に求められる機能を最大限追求しながらメカニズムは小型化するというM・M思想に基づき開発された画期的なモデルですが、Boseさんはこの時代ならではの空気感に注目しています ▲1983年9月にデビューしたワンダーシビック。車に求められる機能を最大限追求しながらメカニズムは小型化するというM・M思想に基づき開発された画期的なモデルですが、Boseさんはこの時代ならではの空気感に注目しています

「ネオクラ、ちょうどいいよね」と10~20代が注目中

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Boseが中古車情報誌『カーセンサー』にてお届けする人気連載「Bosensor」。カーセンサー本誌で収録しきれないDEEPでUNDERGROUNDな話をお届けっ!!

編集部ゆきだるま(以下、ゆきだるま):Boseさん、今日お邪魔するお店はネオクラシックと呼ばれる80年代後半~90年代前半の車を扱っている専門店です。

Bose:そう。実は子供と動物園に向かっていたら途中でシビックがたくさんある中古車屋さんを見つけてね。思わずUターンしちゃったんだよ。それが今回行くお店。

ゆきだるま:80年代後半っていうと、私まだ生まれてないです。

Bose:そうなの!? だったら余計におもしろいお店だと思うよ。「こんな車もあったんだ」って驚くはず。

▲当時を知らない世代も「なんかいいよね」とお店にやってくると大貫社長。彼らの特徴はネオクラを最新のものと捉えていること ▲当時を知らない世代も「なんかいいよね」とお店にやってくると大貫社長。彼らの特徴はネオクラを最新のものと捉えていること


大貫社長:Boseさん、いらっしゃいませ。今日はじっくりと見ていってください。

Bose:今日はよろしくお願いします。これは僕の個人的な趣味ですが、新しすぎる車に乗るのは自分に似合わない気がしてどこか恥ずかしいんです。僕が着ている洋服の雰囲気は昔からあまり変わらないけれど、車だけはどんどん変わっていっちゃうというか……。

大貫社長:ファッションも今、80年代がリバイバルしていますからね。

Bose:そうなんだよね。僕が昔着ていたものがまた普通に売っていたり。これ、昔必死に探したなあ。そしてまだ持ってるしっていうのが結構あるの。

大貫社長:最近は車も80年代後半~90年代前半あたりがブームになっているのを実感しています。もちろん当時を知っていてもう一度乗りたいというお客さんが多いのですが、この時代を全く知らない若いお客さんが増えているんですよ。

Bose:わかるな、その感覚。僕は今フォルクスワーゲン ゴルフ2に乗っているんだけど、最近『POPEYE』の取材を受けたんですよ。ポパイのような雑誌だと懐かしいとかではなくて「いいっすね、ネオクラ。ちょうどいいですね」ってなるの。感度の高い子たちがファッショナブルな目線で見ていくと、この時代の車がよくなるんだよね。洋服や小物など、自分の持ち物とハマるんだよね。シビックも同じ。

大貫社長:今、若い子たちにはワンダーシビックやグランドシビックが人気です。もちろん主流はハッチバックですが、DJやダンサーの子たちはあえてセダンを選んでローライダーっぽく乗っていたりしますね。あとはアメリカの走り屋っぽく、スポコンっぽくしたり。

Bose:みんな自分の好きな雰囲気を楽しんでいるんだな。車って移動手段の“道具”としての役割はもちろん大切だけれど、それ以外に“空気感”が大切だからね。洋服は防寒などの機能はもちろん、そのデザインが自分に似合うかを気にするよね。家具だって機能面だけじゃなく自分のライフスタイルにマッチするかが大事。だからこそ古い和家具やミッドセンチュリーなやつを扱うお店があるわけだしね。車も自分の感性に合うものを扱うお店が見つかると嬉しいんだよ。

大貫社長:今はたまたま展示場がホンダ車だらけになっていますが、うちはネオクラシックな車の専門店なのでトヨタや日産も扱います。別の保管場所には日産 サニーカリフォルニアやスズキ マイティボーイもありますよ。

Bose:そうなんだ。でもせっかくこれだけたくさんのホンダ車があるんだし、今回はホンダ車大プッシュでいこうよ。僕も初代シティターボに乗っていたし、この時代のホンダが大好きだからね。カーセンサー本誌で紹介する車、選ばせてもらっていいですか?

大貫社長:もちろんです。自由に見ちゃってください!

▲ワンダーシビックのボディラインやインテリアをマジマジと眺めるBoseさん。「自分たちのスタイルと車がハマるって大事だと思うよ」 ▲ワンダーシビックのボディラインやインテリアをマジマジと眺めるBoseさん。「自分たちのスタイルと車がハマるって大事だと思うよ」

80~90年代のシビックがズラリ!

ホンダ シビック

▲このワンダーシビックの車両価格は178万円。後方に向かうにつれスラントしていくルーフやブラックアウトされたリアゲートがカッコよかったですよね ▲このワンダーシビックの車両価格は178万円。後方に向かうにつれスラントしていくルーフやブラックアウトされたリアゲートがカッコよかったですよね


Bose:ワンダーシビックは直線的なフロントデザインとリアのストンとした感じが未来っぽくてお洒落だったよね。

大貫社長:これはエンジンとミッションをオーバーホールしてあるので調子いいですよ。ちなみにホイールは当時の純正オプションでリアのウイングは今じゃまず手に入らないものです。あとはテインの車高調、ワンオフのマフラー、前後のタワーバーですかね。

Bose:インテリアも懐かしいなあ。シティもだけど、この頃のホンダはインパネデザインがいいよね。スクエアで使いやすい。そしてダッシュボードはモノが置きやすいんだよ。

▲ワンダーシビックの横長のインパネはシンプルだけど開放感があります。フラットなダッシュボードが便利! ▲ワンダーシビックの横長のインパネはシンプルだけど開放感があります。フラットなダッシュボードが便利!


ホンダ シビック(左)、ホンダ CR-X(右)

▲1987年9月に同時発表されたグランドシビックとサイバーCR-X(発売はCR-Xが9月16日でシビックが9月23日)。ワンダーと比べると曲面が多くなりました ▲1987年9月に同時発表されたグランドシビックとサイバーCR-X(発売はCR-Xが9月16日でシビックが9月23日)。ワンダーと比べると曲面が多くなりました


大貫社長:このグランドシビックもワンダーに負けず劣らずの人気です。

Bose:やっぱりこっちのカルチャーが好きな人は80年代がハマるんだな。でもさすがに30年近く前のものだと塗装は傷んできちゃうね。

大貫社長:そこは仕方ないですね。でも僕らは仕入れるときに塗装状態はあまり気にしません。なぜなら塗装は簡単に直りますからね。これはまだうちに来たばかりなのでプライスを付けていないんです。これから仕上げのプランを考えていきます。

Bose:そしてCR-Xも懐かしいなあ。サイバーってやつでしょう。これも本当に見なくなった。

大貫社長:そうですね。もうホンダのディーラーでも整備などが難しくなってきているみたいです。

Bose:ちょうどホンダがF1で黄金期だった頃のモデルだよね。この当時のホンダファンは本当に熱い人が多かった。

大貫社長:しかもこれは1.6SiRですからね。まさに熱いホンダが好きな人が夢中になったモデルですよ。


ホンダ シビックセダン

▲グランドシビックのセダン。25年前の車で走行1.9万kmですから単純計算で年間800km弱しか走っていません。近場の通勤、あるいはたまの買い物に使っていたのでしょう ▲グランドシビックのセダン。25年前の車で走行1.9万kmですから単純計算で年間800km弱しか走っていません。近場の通勤、あるいはたまの買い物に使っていたのでしょう


大貫社長:このシビックは久々に出会った“奇跡の1台”です。1991年式で走行1.9万kmのワンオーナー車ですから。しかも5MTですよ。

Bose:これって普通のおじさんが新車から通勤などでチョコチョコ乗っていただけってことでしょう。

大貫社長:そうですね。変な言い方ですが、今でも室内は当時の“ホンダ”の匂いがします(笑)。

Bose:そうなの? うわっ、なんかわかる(笑)。昔の車ってこういう匂いがしたよ。さっきも話題になったけれどローライダーをやる人にとってはシビックのSiもいいけれどこういう状態がいいものをベースにするのが最高なわけじゃない。おじさんがチョコチョコ乗っていたものが時を経てお宝になるんだから、中古車っておもしろいよね。


ホンダ シビックフェリオ

▲1991年9月にデビューしたこのモデルからセダンにフェリオというサブネームが付きました。1993年から全日本ツーリングカー選手権に参戦しています ▲1991年9月にデビューしたこのモデルからセダンにフェリオというサブネームが付きました。1993年から全日本ツーリングカー選手権に参戦しています


Bose:おっ、このフェリオは車高がちょっと下がっているね。でもホイールは純正だ。とことんローライダーにしちゃうのもいいけれど、こういうさりげない感じで乗るのってカッコいいと思うな。

大貫社長:この車には前オーナーの並々ならぬこだわりがあるんです。どこだかわかりますか?

Bose:なんだろう。パッと見た感じだと普通だけれど……。

大貫社長:アンテナの位置を見てください。左側にあるでしょう。前オーナーは見た目を北米仕様にすることにこだわっていたんです。だからフロントライトのカバーは日本仕様だと樹脂製ですが、この車はガラスに交換されています。

Bose:これ、普通の人が見ても絶対にわからないよ(笑)。でも北米仕様だぜって。しかも実際に北米の人が見ても「はっ??」となる感じがいいじゃない。自分がとことんこだわった状態が向こうで普通のおばさんが乗っている仕様なんだから。そこがいいね!

▲運転席側にあったアンテナを助手席側(左ハンドルだと運転席側)に交換するなど手の込んだ個体です ▲運転席側にあったアンテナを助手席側(左ハンドルだと運転席側)に交換するなど手の込んだ個体です

ワンダーシビックの未来っぽさがたまらない!

ゆきだるま:私がまだ生まれる前の車ばかりですが、どれもカッコいいですね~。

Bose:でしょう? この時代ってそれぞれの車に強い個性があったんだよね。

大貫社長:そして走らせても楽しいですよ。今の車は電子制御が多い分安全性は高まりましたが、どうしても走ったときに“自分で動かしている”という感じが希薄になってしまいます。

Bose:そうなんだよね。僕がゴルフ2にたどり着いたのもまさにそこが理由だったし。

ゆきだるま:Boseさん、カーセンサー本誌で取り上げるのはどれにしますか? 私は最初に紹介したのがいいなって思うんですが。

Bose:わかってるねー。僕もワンダーシビックが一番だと思うよ。ここで紹介した中でも一番“未来”な感じがしたモデルだし、デザインもいいからね。というわけで、カーセンサー本誌ではワンダーシビックを取材しよう。お楽しみに!

カーセンサー本誌は7月20日から順次発売!(地域によって発売日が異なります)

text/高橋 満(BRIDGEMAN)
photo/篠原晃一