「金属に落ちる」はうそ 沖縄・糸満の落雷事故で識者指摘 「事前の避難、徹底を」


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 24日に沖縄県糸満市の美々ビーチいとまんで発生した落雷事故により、落雷の恐ろしさが改めて浮かび上がった。海や山のレジャーが増えるこれからの季節、いかに落雷被害を避けるか、日本大気電気学会会員の森本健志近畿大准教授に聞いた。

 「雷は金属に落ちる」と言われていたが、うそだ。雷は本来絶縁体の空気の中を何キロも進んでくる。どこに落ちるかは高さに左右される。また稲光と雷鳴の時間差から距離を測る方法があるが、地面と水平方向に10キロ進む雷も珍しくない。雷雲自体が10キロ規模の大きさということもあり、雷鳴が聞こえた時点で雷の射程圏内に入っていると考えた方が良い。屋外のスポーツ大会などで「まだ遠いから大丈夫」と考えるのは危険だ。前もって避難するのが一番大事だ。

 数人が近くにいる場合は、枝分かれして複数に落ちることもある。人に落ちると、たくさんの電流が一瞬で流れるため、温度が上がったり電気ショックを受けたりして、致命的なダメージを受ける。

森本健志准教授

 避難に適しているのは周囲を金属に囲まれた場所だ。鉄筋コンクリートの建物や自動車の中は、雷が落ちても電流が金属部分を通って逃げるので安全だ。しかし、木の下や公園などのあずまや、軒下などは近くの人体に雷が飛び移る「側撃雷(そくげきらい)」を受けかねず危険だ。車内で窓を開けて腕を出すなどして金属部分に体が触れていると感電する。屋内でも落雷時に水道管やアンテナ線などに触れていると感電する可能性がある。

 周囲に避難場所がない場合、緊急避難として高さ5メートル以上30メートル以下の物体があれば、てっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲で、物体から4メートル以上離れた場所でしゃがみ込む方法がある。4メートル以内だと側撃雷を受けかねないので距離はしっかり取ってほしい。ただ、やはりできる限り早く建物の中など屋内に逃げる方が安全だ。