<社説>米大統領選 沖縄から「基地反対」発信を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米大統領選挙の民主、共和両党の候補者が決まった。両候補者のいずれが選挙を制するかは、世界、日本の政治経済に大きな影響を及ぼす。在沖米軍基地政策への影響など、選挙の行方を注視したい。

 共和党ドナルド・トランプ氏、民主党ヒラリー・クリントン氏の対決となる。両候補者の支持率は拮抗(きっこう)し、勝敗の行方は予断を許さない情勢だ。
 クリントン氏は、2期続くオバマ民主党政権の後継を目指す。オバマ政権下で日本政府は、日米同盟強化の路線を歩んでいる。
 安倍政権は環太平洋連携協定(TPP)への参加など米国との経済の連携を強めている。また安全保障政策でも日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、米側の意向に沿った武器輸出三原則の見直し、安全保障法制定など日米の軍事一体化を進めている。
 日本政府は大統領選がいずれに決するにせよ、日米同盟の安定的な継続を望んでいる。しかしTPPに対し両候補者は、反対ないし修正の主張だ。民主党政権から、経済の保護主義が強い共和党トランプ政権に転じた場合、日米の貿易、通商など、さまざまな経済政策が見直される可能性がある。
 沖縄は、米国の軍事世界戦略で、アジア太平洋を重視するリバランス政策の重要拠点に位置付けられている。
 普天間飛行場の県内移設や東村高江へのヘリパッド建設は、クリントン候補の夫ビル・クリントン大統領時代に方向付けられた。
 米軍のアジア重視政策に呼応し、日本政府は沖縄への自衛隊配備強化や日米共同訓練、米軍基地の共同使用を進めている。日米の軍事同盟強化の中に、辺野古新基地建設や東村高江のヘリパッド建設が位置付けられている。
 新大統領政権下で在沖米軍基地政策がどのように進められるか。「米軍の日本駐留費の負担増」を主張するトランプ氏が新大統領になった場合の軍事戦略への影響など、注意深く見極めたい。
 11月の大統領選前の8月に、米退役軍人会の全国組織が、辺野古新基地計画の撤回を決議する予定という。
 昨年9月には100人を超す米国ほか海外識者が辺野古基地反対の声明を出す支援もあった。受け身でなく、米大統領選挙を機に、辺野古新基地やヘリパッド建設の不当さを、沖縄から米国、世界の世論に訴えることが大事だ。