<社説>外国人の子の教育 多言語で「育つ権利」確保を


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 教育を受けることを保障する「育つ権利」は国連総会で採択された「子どもの権利条約」の四つの権利の一つだ。自国民だけでなく、国内に住む外国の子どもたちの育つ権利を保障するのは国の義務だ。

 共同通信社が全国の自治体を対象にしたアンケートで、増加傾向にある外国人の子の指導に学校現場が追われる実態が明らかになった。回答した市区町村の46%が外国人の子の直面する課題として「日本語の学習」を挙げた。外国人の永住者が増える中、日本語を話せない子が各校に少人数ずつ通う「散在化」や、多言語の対応に苦慮する自治体も目立った。
 県内も例外ではない。回答した34自治体のうち13自治体が子の課題として「日本語や他教科の学習」を挙げ、「高校進学」「就職」がそれぞれ3自治体、「不就学」が1自治体だった。県は「日本語も英語も話せない近隣諸国からの外国人が多い」とし、日本語指導教員を増やすよう要求している。
 外国人の子の教育については今年3月に琉球新報社が行った自治体アンケートで、18市町村が日本語指導教員の配置や日本語教室の設置など何らかの取り組みをしていることが分かっている。
 しかし、対応は自治体や学校現場にほとんど任されている。小学校内にある日本語教室は、あいさつ以外の日本語ができない子に教師がマンツーマンで指導していた例があり、以前から教師の確保は大きな課題だった。多言語化し、子どもの数も増えれば、現場の対応はより困難になる。
 子どもが言葉の壁に突き当たれば、授業についていくことは難しい。高等教育への道を閉ざされ、将来に大きなハンディを背負うことになる。
 国の対応が鈍いのは、義務教育の対象を「国民」と定めているためだ。外国人の子どもは義務教育の対象外とし、希望する場合には受け入れるという「恩恵」的な扱いになっている。
 国は労働力不足を背景に、東京五輪に向けて建設業や介護などの分野で外国人受け入れを拡大する方針だ。
 それならば国が主体となって、子の「育つ権利」を保障しなければならない。多様な国籍の子どもたちが日本語や日本文化を学べるような環境づくりが求められる。