奨学金は家計に、学費工面へ出稼ぎ 沖縄県内9大学・短大調査 学生生活阻む貧困


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奨学金が生活費に回り、授業料を支払えていない学生。貸与総額は約450万円で「卒業後毎月2万円払って44歳で完済予定」と淡々と話す

 琉球新報が実施した沖縄県内9大学・短大へのアンケートからは、返還を義務付けられている貸与型の奨学金を借りてもなお授業料を支払えず、修学困難に追い込まれる学生の実態もうかがえた。休学を余儀なくされた学生からは「学費が高すぎてアルバイトや奨学金だけでは賄えない」と悲痛な声も上がる。一方、大学側からは「県内の学生にこそ給付型の奨学金が必要だ」と県や国による公的支援の拡充を求める声も上がっている。

 「昨年の両親の所得は、2人合わせても100万円に満たないのに通らなかった」。県内の私大3年の男子学生(22)は、入学時から学内奨学金に申請を出しているが、3年続けて不受理になった。「奨学金がもらえた他の学生は、どれだけ貧困なのかと思う」。男子学生は4年前に現役で県内外の私大に合格したものの入学金を支払えず、進学を断念。1年間アルバイトをして学費と予備校代を稼ぎ、翌年再受験して入学を果たした。
 入学時から利子付き貸与型の奨学金を毎月8万円借りて授業料に充ててきたが、今年の前期分の授業料はまだ支払えていない。預金通帳を預かっていた母親からは、身内の冠婚葬祭が重なり、奨学金を生活費に回さざるを得なかったと説明された。
 「2人親でも大変な家庭はある。お金の心配をせずに、大学に通えるような仕組みがあれば」
 最近、子どもの貧困問題を扱った報道番組で困窮体験を語った女子高生が、インターネットで誹謗(ひぼう)中傷されている問題を知った。「経済的に厳しい家庭の子は、全て我慢しなければならないのか。趣味や将来の夢があるから、今の生活も耐えられるはずなのに」
 別の男子学生(21)は経済的な理由で昨年大学を休学し、学費を工面するため県外に働きに出た。「きょうだいも多いし、自分で稼ぐのが当たり前。高校の校納金もバイトして払ってたし、大学進学は自分のわがままみたいなもの」。本土で接客業や線路の補修を行う軌道工をして1年間で100万円をため、4月に復学した。
 5人きょうだいの長男。母親は17歳で男子学生を出産した。中学時代は傷害事件を起こすなど荒れた生活を送ったが、母親が中絶手術から逃げ出して自分を産んだことを聞かされ「母親をもう泣かさない」と決めた。中3の1月から必死に勉強し高校へ入学。アルバイトで、3年間生活費の一部と校納金を支払った。
 大学進学は「母親ができなかったことを代わりにやろう」と思ったから。だが、高校とは桁違いの授業料を自分で稼ぐことは容易ではなかった。
 入学時から貸与型の奨学金を毎月8万円借りている。学費を払えず休学した友人は退学した。「母親が誇れるような仕事に就きたい。踏ん張って卒業したい」。男子学生は自分に言い聞かせるように話した。(新垣梨沙)