<社説>敬老の日 人生経験生かす場広げよう


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 きょう19日は「敬老の日」だ。

 大正、昭和に生を受け、激動の時代をたくましく生き抜き、家庭の安寧と社会の発展に貢献してきたお年寄りにまず感謝したい。
 県内の100歳以上のお年寄りは初めて千人を超えて1011人になった。全国24位だが、沖縄戦で働き盛りの人が犠牲になっていなければ、順位はもっと上だろう。
 長寿を喜ぶとともに、高齢者が生き生きと暮らせる社会を築く方法を深く考えたい。
 地域を良くするための清掃活動やレクリエーションなどで、はつらつとしたお年寄りと触れ合うと、豊かな人生経験から繰り出される含蓄あふれる言葉から学ぶことが多くある。
 高齢者に生きがいを感じてもらう特色ある活動が県内でもある。
 離島などから本島に進学した生徒が、独り暮らしのお年寄りの家で生活する取り組みだ。那覇市の繁多川公民館が進めている。
 お年寄りにとっては生徒に家の片付けや買い物などを頼むことができ、暮らしを支えてもらえる。
 生徒はしっかりした食事を用意してもらい、勉強に集中でき、生活費の負担が減る。お年寄りの人生経験を聞けば、絆が深まり、生徒は社会性が培える。夫を亡くした女性は生活に張りが出て、食事作りに精を出している。地域社会の財産であるお年寄りが人生経験を生かす場を広げたい。
 高齢者は社会保障の観点から語られがちだが、約8割の人たちが介護要らずで元気に生活している。「生涯現役社会」の実現に向けた知恵も出す必要がある。
 政府は2012年に高年齢者雇用安定法を改正し、企業で65歳までの希望者の雇用確保を義務化した。65~69歳の約4割が職に就いているが、希望しても就業できない人が約200万人いる。
 厚生労働省の有識者検討委は(1)65歳以上を雇う企業への支援(2)高齢期を迎える前からの能力開発(3)シルバー人材育成センターが担える仕事の要件緩和-などを盛り込んだ報告書をまとめている。
 企業側との調整を踏まえ、県内でも高齢者の働く意思と能力が生かせる環境づくりを進めたい。
 老いに価値を見いだし、豊かに生きてもらうには、高齢者に尊敬の念を持って接しつつ、担ってもらう役割を明確にすることが大切だ。社会全体で取り組みたい。