沖縄県公安委の審議、形骸化 全国機動隊派遣の警察庁事前指示 警察内部で根回し


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
沖縄県公安委員会の派遣要請決定前日となる7月11日付で警察庁から各都府県警などへ宛てられた「特別派遣」の文書(左)と、県公安委の7月12日付文書

 米軍北部訓練場(沖縄県東村・国頭村)のヘリパッド建設に伴う県外機動隊の派遣を巡り、沖縄県公安委員会が派遣要請を決定する前に、警察庁が関係都府県警などへ事実上の“派遣指示”を出していた。警察法で警察庁への事前連絡が義務付けられているが、従来のサミットなどとは違い、県知事も「過剰警備」と指摘する米軍施設建設に伴う警備なだけに、派遣には慎重な判断が求められるはずだ。ヘリパッド建設を進める政府の強硬姿勢が背景にある機動隊派遣を巡り、政治的に中立なはずの県公安委の審議が形骸化していないか懸念される。

 要請は、県警警備第2課実施第2係の警部補が要請前日の7月11日付で起案した。起案文の件名は「警察職員の援助要求について」とし「みだしの件について、別添のとおり援助要求してよろしいか伺います」と判断を請う内容となっている。一方、同じ11日には既に警察庁から関係都府県警への事実上の派遣指示が出ている。

 起案は翌日の7月12日付で県公安委員長と2人の県公安委員が印鑑やサインをして決裁。県公安委の要請決定と、各都府県公安委への派遣要請文の発出は同じ12日付。決定と同時に各県に依頼を出した格好だ。

 警察法は派遣要請に際し、県公安委が「あらかじめ必要な事項を警察庁に連絡しなければならない」と定めている。県公安委は取材に、事前調整について「県警と警察庁で調整していると承知している」との見解を示した。県公安委員不在の中、実働の警察サイドだけで根回しを進めていたことになる。

 県警は従来の派遣要請と同じ対応と強調するが、サミットや天皇来県などのイベントと、今回の米軍施設建設に伴う派遣要請では県知事の姿勢が全く異なる。

 東村高江などヘリパッド建設の現場周辺では、県外機動隊が投入されて県道が封鎖されるなどの異例の事態が連日起こっている。

 これに対し翁長雄志知事も「機動隊を500人とも800人ともいわれる形で動員すれば過剰警備であることは間違いない」と指摘。県公安委の要請に伴う派遣であることにも「大変忸怩(じくじ)たるものがある」と述べた。

 県公安委員は現場の混乱を直接視察し、承認した派遣要請を見直す時期に来ているのではないか。(滝本匠)