沖縄県産生乳の減産続く 乳牛高騰、肉牛への転換背景に


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
加工乳などを除き牛乳が品切れしているスーパー。案内文が掲示されている=7日夜、那覇市内

 沖縄県産生乳の生産が厳しさを増している。生乳の8割以上を取り扱う県酪農農業協同組合(県酪)によると、今年4月以降の生乳生産量は、月ごとに1945~1662トンとばらつきがあるが、いずれも前年比約5%減で推移している。県酪が生乳を売る県内主要乳業メーカー3社は断続的に牛乳の1日当たりの生産量を制限している。酪農家が購入する北海道産乳牛が値上がりし、生産コストの負担に耐えかね、酪農をやめて高値販売が続く黒毛和牛の繁殖に切り替える酪農家もいる。県産生乳の生産減は「限界を超えた」(大手乳業メーカー)と頭を悩ませる。

 県内メーカーの1社は「県産生乳のみでは今後の安定した供給に懸念がある」とし、今年に入って乳製品のパッケージから「県産生乳使用」の表記を外した。他の2社も検討を進めている。大手乳業メーカーの担当者は「これ以上価格が上昇すれば消費者の牛乳離れが進みかねず、酪農振興と逆の結果になりかねない」と懸念した。

 那覇市内のスーパーマーケットでは、8月後半から乳製品コーナーに品薄を知らせる案内文を張り出した。棚は成分調整された加工乳や乳飲料を除き「牛乳」は品切れとなっていた。スーパーのバイヤーは「例年は学校給食が休みになる夏休みは牛乳が余るが、今年は例年よりかなり少なかった。9月に入っても、夕方以降は品切れがちだ」と厳しい状況を語った。

 生乳生産が減る背景には酪農家が飼育する乳牛調達費用の高騰がある。県内酪農家が購入する北海道産乳牛(初妊牛)の価格は今年8月、2012年同月比で24万9千円高い73万円と大幅に上昇。生乳の生産コストが上昇する要因となっている。一方、県産の黒毛和牛の子牛価格は空前の高値が続いている。酪農家の中には生乳生産から撤退し、飼育手法が近い和牛子牛の繁殖に転換する動きがある。県酪によると昨年は酪農家が4戸減り、うち3戸は和牛生産への転換だった。

 生乳の生産減は従来、酪農家の高齢化や飼料価格の高止まりが要因と指摘されてきたが、新たな課題が出てきた形だ。県酪は「牛を増やす検討をしている農家もあり、一時的には回復すると見る。ただ、コスト高の構造が変わらなければ、(和牛繁殖への転換は)続きかねない」と危機感を募らせている。