<社説>新潟知事選野党勝利 原発再稼働拒む民意は重い


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 民意を差し置いて、原発再稼働に突き進む安倍政権に対する不信を表す鮮明な意思表示と言えよう。

 原発の安全性に不安を抱く新潟県民の審判を真摯(しんし)に受け止め、安倍政権と東京電力は原発再稼働を優先する政策を見直すべきだ。
 新潟県知事選で、共産と社民、自由の野党3党が推薦した医師の米山隆一氏が初当選を果たした。
 最大の争点だった東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に厳しい姿勢を鮮明にした米山氏が、自民、公明両党が推薦する前長岡市長の森民夫氏との事実上の一騎打ちを制した。
 再稼働に厳しい姿勢を貫き、4選を目指していた泉田裕彦知事が告示1カ月前に突然、出馬を断念した。全国市長会長も務めた森氏以外に有力候補はなく、与党楽勝ムードが漂っていた。安倍政権や東電は泉田氏不出馬により、再稼働への期待感を高めていた。
 そんな中、民進党の衆院新潟5区の公認候補に決まっていた米山氏は離党し、告示6日前に立候補を表明した。米山氏は「東電福島第1原発事故、課題が検証されない限り、再稼働の議論は始められない」と公約を掲げた。
 原発再稼働の是非が重要な争点に浮上すると、泉田路線継承を訴えた米山氏が支持を広げ、選挙戦は一転して熱を帯びた。
 自主投票だった民進党は終盤に蓮舫代表が応援入りするなど、実質的な野党共闘が整う形となった。焦った自民党は二階俊博幹事長らが業界団体などを引き締めたが、米山氏の勢いにのみ込まれた。
 柏崎刈羽原発は7基もの原子炉を抱える世界最大規模の原発で、30キロ圏内に約46万人が住む。2002年にトラブル隠しが発覚し、07年の中越地震では火災や微量の放射能漏れ事故が起きている。
 泉田氏は福島第1原発事故の「炉心溶融」公表遅れに対しても追及の手を緩めず、東電に隠蔽(いんぺい)を認めさせる要因となった。
 共同通信社が実施した出口調査で、再稼働に「反対」と答えた人は「どちらかと言えば」を含めた計64%に上り、「賛成」の計20%を上回った。
 有権者は県民の安全確保を最優先する知事を求めたのである。
 7月には鹿児島県でも脱原発を掲げた三反園訓氏が知事に就いた。安倍政権は再稼働を見直すべきだ。自主投票に甘んじた民進党は原発政策に関する態度を明確にしないと、信頼を得られまい。