機動隊擁護で対立 自民「市民挑発が原因」 与党・中立「発想に無理」


この記事を書いた人 金城 美智子
県政と車の両輪で沖縄の自治、発展のために役割が期待される沖縄県議会

 機動隊員の「土人」発言問題で、県議会が目指した全会一致での抗議意見書可決は決裂した。与党・中立会派とは別の案を出す野党の沖縄・自民は、市民からも機動隊員に暴言が浴びせられているとして、機動隊員の発言のみを取り上げることは「一方的」と主張した。だが自民案には、中立会派からも「権力の側にある機動隊員を擁護し、市民と両成敗とする発想は無理がある」と突き放す言葉が相次ぐ。

 意見書案の協議に向けて問題を審議した前日の県議会総務企画委員会。自民の又吉清義氏は、機動隊員の暴言は「市民の挑発」が原因ではないかと主張。「仮にこれ(土人発言)を言わせるためにやっているならば、犯罪行為ではないか」とも述べ、県警や県当局に「調査」を要求した。

 又吉氏は別の機動隊員が市民に「シナ人」と発言したことも、「戦前に生まれた人」は差別的な意識を持たずに使うこともあるとし、「過敏に反応し過ぎではないか」と主張した。

 委員会に出席した重久真毅警備部長は自民会派の質問を受け、現場では市民から機動隊員に対する暴言も100件以上確認されていると説明。機動隊員の「土人」発言には「擁護、弁護の余地はない」とした一方、市民にも「節度を持って政治活動をしてほしい」と述べ、発言問題に反省を示しつつも、市民側を“いさめる”ような場面も見られた。

 一方、同じく委員会で謝花喜一郎知事公室長は「いかなる事情があっても公務員が県民市民にそういった態度を取ってはならない。大事なのは背景というよりも、県民、市民にそういう発言をしたことは極めて不適切だということに尽きる」と答えた。

 協議決裂後、自民案に目を通した与党議員は「そもそも『土人』という言葉自体が、政府と沖縄の不均衡を象徴している。警察も市民も共に暴言を放ったという話が本質ではない」と批判した。

 一方、ある自民県議は今回の意見書案について「批判は覚悟の上だ」と明かす。別の県議は「今回の問題は『土人』と発言した一部分だけが伝えられている」と述べ、28日の臨時会で“市民の暴言”を訴える予定だ。ただ自民が提出する意見書案は、「土人」発言の批判よりも、市民側を批判する内容に多くを割く。菅義偉官房長官が「許すまじき行為」などと述べ、発言は不適切だったとの認識を示す中、土人発言を不適切とは評しつつも、発言を擁護するような内容に、世論の反発は避けられそうにない。(島袋良太、当山幸都)