「核兵器禁止」日本は賛同せず 被爆国なのにどうして?【NPT再検討会議】

NPT再検討会議では、107の国々が核兵器禁止文書に賛同した。しかし日本は賛同せず、被爆国として核の恐ろしさを訴えながらも核を否定できないという「二面性」を見せた。

生物兵器、化学兵器、地雷、クラスター爆弾、これら非人道兵器は、国際的に使用が禁止されている条約がある。しかし、核兵器を禁止する条約は、未だ存在しない――4月下旬からニューヨークの国連本部で開催された核拡散防止条約(NPT)再検討会議では、核兵器の非人道性が中心議題の一つとなり、107の国々がオーストリアの提唱した核兵器禁止文書に賛同した。しかし、アメリカの「核の傘」の下にある日本は、アメリカに配慮して賛同せず、被爆国として核の恐ろしさを訴えながらも核を否定できないという「二面性」を見せた。

この文書は核兵器の廃絶・禁止に向けた法整備の必要性にも触れている。2月18日朝刊の中国新聞によると、外務省の関係者はこれまで、文書に賛同しない理由について「核の非人道性の議論が、核軍縮のプロセスを分断するものになってはならない」と説明したという。

外務省幹部の言う“核軍縮のプロセス”とは、「段階的なアプローチが唯一の現実的な選択肢」とするアメリカやイギリスなど核保有5大国のやり方を指す。これに対して、急速に核軍縮を目指す国も存在する。その一つがエジプトを中心とするアラブ諸国だ。

エジプトは1974年に「中東非核地帯構想」を提唱して以来国是としており、2010年には、「(中東の)いかなる国も、大量破壊兵器を保有することで安全が保障されることはない。安全保障は、公正で包括的な平和合意によってのみ確保される」と、自国の立場を明らかにした。

中東非核地帯構想にアラブ諸国は賛同するが、NPTに参加せず、核兵器を事実上保有するイスラエルは、「まず、イランなどに対して適用したあとで、イスラエルに適用すべき」というような趣旨の、アラブ諸国とは異なる立場を取る

核の存在によって、中東地域でイスラエルが覇権を握ることを警戒するエジプトなどアラブ諸国は、2010年に開かれたNPT再検討会議で、中東の非核化を協議する国際会議を2012年に開催することを勧告する内容を条約に盛り込むことを条件に、NPTの無期限延長を受け入れた。しかし、会議が開かれれば、イスラエルの核保有が問題視されるため、結局国際会議が開かれていない。

今回のNPT再検討会議でも、エジプトらは2016年に中東非核化国際会議を開催することをNPTに盛り込もうと提案。しかし、アメリカがイスラエルを擁護して反発し、国際会議を開催する時期について検討期間がないことや、中東各国が平等の立場で、開催合意に至るプロセスが明確化されていない点などをあげ、国際会議の開催を強引に進めるとしてエジプトを名指しで非難。会議は決裂した。

約4週間にわたって行われた再検討会議の実りのない結末に、広島1区選出の岸田文雄外務相は「大変残念」と発言。しかし、核兵器を保有する中国や北朝鮮が身近にあることもあり、外務省は核の傘について、「社会においては、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在している中で、日本の安全に万全を期すためには、核を含む米国の抑止力の提供が引き続き重要」としており、アメリカの核抑止力が必要だと説明している

今回の日本政府の対応について国際NGOネットワークの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、「核兵器の恐怖を経験しているにもかかわらず、日本は核軍縮に向けた現実的なビジョンを説明することに失敗した」と指摘した

60th Anniversary Of The Atomic Bomb Of Nagasaki

原爆投下後の長崎

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